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89.俺、シレンヌの成長が楽しみ

 ついでだからと、訓練部屋の空きを待って、皆で、しっかり暴れる。

 さっきまで見ているだけだった俺とヤーニー、リチャードとフランツは特に大暴れだ。他の3人が驚いているが、気にしない。

「なんか、あれだな。あの人たち、まだ強くなるつもりなのかな?」と3人がコソコソ話しているとウーちゃんが教えてくれた。

 もちろん!俺達伸び盛りだよ。フランツもリチャードもだけどね。魔法の使い方が研究されていくし、益々強くなるよ~。


 いい汗流したと、一階の食堂で冷たいものを飲んでいると、

『マスター、少々、よろしいでしょうか?』とシャトーから声がかかる。

「なんじゃ?」

『それが、マースケルのギルドを早速ちょっとばかり侵食しておりましたら、地下で別のダンジョンが拡張しているのを感じまして。どうしたらよろしいでしょうか?』

「互いに話は出来るのかのぅ?」少し間があく、話しかけているのだろうか・・

『話は出来ますが、あまり友好的ではないようです』

 ということで、また、マースケルに逆戻りした。


『マスター!私の上に、他のダンジョンが!』と感情的に訴えているのは、試練のダンジョンコアさんだ。

「シャトーはダンジョンというよりは、建物じゃで、分野が違う、気にするでない」とウーちゃん。

『シャトー!!シャトーとは、ダンジョン名ではなくて、コアに付けられた名前なのですか?なんと・・私は頂いておりませんのに・・』あ~あ、泣いちゃう勢いだよ。

「お主も名前がいるのじゃな、そうじゃのぉ。ウェル、名前じゃ!」と振られる。

「ウーちゃんが付けたほうが喜ばれるよ。頑張って」

「うむぅ。トリッキーなダンジョンが作りたいと言っておったで、トリッキーというのはどうじゃ?試練のダンジョンだけにシレンヌとかも覚えやすいかのぉ」とウーちゃん。凄い名前だ。

『マスター、素晴らしいです!どちらも良い名前で選べません!』うん、気が合ってよかったね。

「では、シレンヌでいくかのぅ」サクッと名前が決定した。


「して、シレンヌは他のダンジョンが、そんなに気になるかのぉ」

『私は、まだ入口しかないのです。それなのにシャトーはドアを設置してもらって、勝手に広がって、納得できません』

「俺達の作ったログハウスの中の入口だけだったね。早速出口を作る?どこがいいかな?シレンヌには希望がある?」と聞いてみる。

『希望を聞いていただけるなんて!私、試練のダンジョンと呼ばれているようですし、かなり挑戦的な階層を造っているところなんです。ですので、階層ボスを倒した時にだけ出口が現れるような仕組みを作っても良ければ嬉しいです』

「ダンジョンがドアを単品で作って、それを外部の者が移設すると、出口が増やせるって分かったばかりなんだよ。その仕組みを使うといいよ。例えば、ボスを倒した時だけ使えるドアをボスの間に作っておいて、それと対になるドアをログハウスの中に設置するんだ。なんなら、今、ドアを作れる?」

『試練のダンジョンの中になら作れます』

「じゃあ、入口付近に置いてみて。取りに行くね」と言って地下一階に瞬間移動した。簡単な作りのドアが既に出来ている。それを神ポケにいれて、ログハウスに移動して入口の横に設置する。これで完成。あとはボスの間に対のドアが出来るのを待つだけだ。

危険だから必ず一方通行にしてね。初心者が間違って、ログハウスからボスの間に行っちゃったら大惨事だ。

「俺達がやっつけ仕事で作ったログハウスだから、ドアから侵食して、好きに作り変えていいからね。シャトーがギルドでやっている感じで。分からないことがあったらシャトーに相談してもいいし、ご近所さんだし、仲良くするんだよ」

『ありがとうございます。ウェル様。優しくしていただいて・・』といって泣き出した。シレンヌ、凶悪な水攻めの宝箱イベントを出現させるダンジョンコアとは思えない繊細さだ。


 翌日、改めてログハウスに行ってみると、昨日まで、地下に向かう階段と、簡素なドアだけだったのが、いやはや、驚いた。遺跡の中から出土したドアのようにデコラティブになっていて、室内も所どころ石張りになって雰囲気をだしていた。

『どうやってもここからでは開かないドア、このドアが開く時、現れし者は!階層ボスを倒した猛者!と、いうテイストにしてみました』と嬉しそうなシレンヌ。

「格好いいよ~!話題沸騰だよ~!!外側のログハウスも雰囲気に合わせて変えちゃっていいよ」と伝えたけど、俺達が木を伐りだして作ったものだから、最大限残して、でもテイストをマッチさせたいと熟考しているそうだ。シャトーよりも、シレンヌの方がこだわる性格だな。このこだわりが癖のあるダンジョンに繋がっているんだろう。地下が増えるのを楽しみにしていよう。


 *******


「あら、今日もウーちゃん様はお休み?」と聞かれる。

「お休みって、出席しているわけじゃないけどね」もはや、クラスメイト扱いだ。

 最近は、また合コンかと呆れるよりも、帰ってきたら慰めなきゃなって、思いながら送り出している自分に気づく。ウーちゃん、不憫なり。


 今日は苦手な音楽の授業だ。楽器ごとのグループで腕を磨き、文化祭でクラスの合奏を発表することが、ゴールになる。

 この国はまともな者ほど、帝国時代に追いやられていて、革命のため隠れ住んでいたり、捕縛、処刑と冬の時代が続いた。そんな訳で今、音楽を楽しめるようになったとて、ワーニー世代は、音楽、楽器の素養がない。せめて子ども世代にはと力を入れる家庭も多い。が、ブラス家は、革命時代の脳筋が集って運営されているので、全く縁がなく育ってしまった。初等学校を飛び級したので余計に、クラスメイトとの差は歴然だ。


 ヤーニーは王宮の家庭教師に楽器の担当もいたようだ。めちゃくちゃ上手にバイオリンが弾ける。子ども用のヤツだけど、様になってて格好いい。

「何種類も教えられそうになったから、一つを極めるから、一つでってお願いしたんだ。あれ以上、ウェルとの時間を潰されるなんて許せなくって」とヤーニーが激白していたな。

 俺は楽器は向いていないようだ。今から根気よく練習するほど、自分で音を出す事に魅力も感じなかった。聞くのは凄く好きなんだけどなぁ。

 という訳で、俺は後期からはあちこちの楽器をフラフラせずに、歌唱グループに入れてもらおうかな。落ちこぼれの俺は足を引っ張らないように本番までにはなんとかしなければ。あと4か月か。


 ちなみに、苦労をしている俺は家に帰った時に、

「シャルには早めに音楽の家庭教師をつけてあげて」とアドバイスをしたら、

「シャルはもうピアノを習っているから大丈夫よ」と言われた。

 ウチにピアノってあったんだ。衝撃的!

「鍾乳洞だ、ダンジョンだ、って夢中になってたウェルとは違うのよ」って笑われた。ブラス家の皆、脳筋っていってゴメンナサイ。

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