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86.俺、売れ行きを心配する

 当日の早朝、俺達は全員で教会に行き、おみくじを祭壇に供えてお祈りをした。

「このおみくじを手にした人が、少しでも幸せを感じられますように」

 若干名、続けて、売り上げが上がりますようにと祈っていたが、ご愛敬。そもそも当人?当神?は横でプカプカ浮いているしな。

 神官たちは、おみくじにとても興味津々で、都合をつけて自分たちも顔を出すよと言ってくれた。嬉しいな~。クラスメイトの家族には来てくれ!そして、どうせ来るなら朝一に来てくれと図々しいお願いをしている。

 ヤーニーの言う、『マップ持ってウロウロ効果』を狙う為だ。


 身内家人だけでも、相当な数になるので、張り切っておみくじを大量に作った。もし余れば、念が籠っているから教会に持っていき、年末年始のお焚き上げで燃やしてもらったらいいだろう。


「兄様~!」と、大はしゃぎで一番乗りしたのは我が家のシャルだった。まだ半数くらいしか店が開いていない、まさに朝一だ。後ろには勿論ガイルと母様。専属執事のテオドールにカルマ、リタにシェフもゾロゾロと来た。王族に次ぐ大物貴族の登場に若干ざわついているが、問題ない。今日は話題になってなんぼの日だ。


「この結界の中に手を入れて、飛んでいる紙を一つだけ掴むのね!」とウキウキしながらシャルが引く。

「兄様!私、今年の運勢はとっても良いですって!野菜をしっかり食べるのがポイントって書いてあるわ!恋愛は、時期を待てですって」

 ガイルが、恋愛と聞いてギョッとして、おみくじをのぞき込んでいる。大丈夫、そんなに過激なことは書いてないはずだよ。母様は、

「あら、私は、普通だわ。運気上昇のラッキーアイテムは赤い小物ですって、まあ、裏に小物屋さんが丸で囲んであるわ。後でのぞいてくるわね!」と言っている。こちらの趣旨を十分に理解してくれる有難い客だ。


 新婚のリタの恋愛運が、来年に期待と書いてあって、皆で突っ込んでワイワイしていると、隣のスイーツ店は既に行列が出来てきている。その客に、

「おみくじ引いてから、読みながら並びませんか~」と勧誘する。

 並んでいる人も、暇つぶしにやってみようと引いてくれる。狙いはバッチリだ。友達同士で見せ合って大笑いしてくれていたりするのを見て、皆で小さくハイタッチ!そして想定外の売れ行きで、おみくじが足りなくなりそうだ。性質上、選ぶ楽しさが必要なので、スカスカで営業する訳にはいかない。


 急遽、神殿の隅を借りて追加のおみくじを作り、お祈りをして、補充するという嬉しい悲鳴を上げることになった。それでも足りないほど、おみくじも、ガイドマップも好評だった。キャッチフレーズが分かり易くてお店が回りやすいと絶賛された。商工会の人が、来年は、自分達運営にマップを作らせてくれと、メッティ先生の所へ頭を下げに来ていた。

「あ、ああの、私が許可するとかの問題ではないので、あの、ご自由にどうぞ」とワタワタしていた。この人、本当に社交マナーの先生なんだろうか。


 学校に帰って、売り上げと予算の残りを提出して今日は解散だ。どうやらこの二つは合算されるらしい。知らなかった。

 今日は一日、建国祭で王宮に缶詰だったヤーニーが、

「どうだった?売れたの?」と聞きながら寮の部屋へ帰って来た。

「大繁盛だったよ。でも単価が安いからどこまで他のクラスと渡り合えるかは分からないなぁ」と報告した。

 2組のグレッグは、

「私たちのクラスはキャンディーが少し残ったので上位は狙えそうにないです」と言っているし、3組のデイブは、

「俺たちは全然ダメかも、子どもをターゲットに的当てにしたんだけど、一人一人に時間がかかって全然さばけなかった」と肩を落としている。


 3年1組の場所取りの引きの悪さを見て、今回こそはと、打倒1組に燃えた他のクラスも、恐ろしいほどのコスパと回転率の良い商売を目の当たりにしてガックリしたらしい。でも、まだ明日の発表まで分からないからね。


 そして翌日、発表された売り上げナンバーワンは、ダントツで我らが3年1組だった。なんと、5千人と言われた来場者のほとんどが買ってくれたような計算になった。あまりの儲けに学校側が驚いて、来年度の出店予算をストックして、残りは教会に寄付するらしい。

 そして、さらに、マップだけじゃなく、おみくじも、教会がノウハウを使わせてくれと頼んで来たようで、クラス会議が開かれた。

 ベース案は俺だから、俺の好きにすればいいと皆に言われた。そもそもは、俺も前世の丸パクリだからな。どうぞどうぞと説明係にウーちゃんを付けて教会にお渡しした。

「ウーちゃん一人で行かせて悪ノリしないかなぁ」とヤーニーが心配している。心配するとこ、そこかよ。そもそも創造神なんだから、良いことも悪いことも好きに出来る立場ではある。今は、俺達に好意的なことを感謝しなくちゃいけないんだろう。あのキャラなので、複雑ではあるが。


 とにもかくにも、大騒ぎのイベントは終了した。と一息ついた夜に、ウーちゃんが爆弾発言をするのだった。


「この間の、神像の額石を作った時にのぉ。ちいとばかし血を別にいただいて小さな結晶を作っておったのじゃがのぉ。それを持っておると、実体が少しの間だけ取れるようになったのじゃ」

 なんとウーちゃん、若干姑息な手を使って、幻影ではなく実体を持てるようになったという。

「ほほう。勝手に俺の血を使ってなんだって?」

「いやのぅ。勝手にしたのは悪かったがのぉ。神像の額石にあまり濃い力はかえって悪い影響を与えるかと思うて、薄めておいたのよ。そして残りが勿体なかろうて、小さな結晶にしておいたのじゃ」

 急にいい話を作ってもダメ。ちょっと別に貰ったよって、最初にゲロったでしょうが。


 ウーちゃんの言いたい事は、そろそろ自分の造った別の世界を監督に行かねばならぬということだった。

「それで?そのコンパには黒髪の美人さんも来るって?」

「うむ。前からいいと思っておった・・・お主、卑怯な手をつかいおって」

 ウーちゃんの考えが単純すぎて泣ける。これが創造神様か。この世界が心配になるわ!

「神像の額石がどう、ピアスがどうこうじゃなく、ウーちゃんの真のお願い事は、実体化して合コンに行きたいって事でいい?」

「ま、おおまかに言えばそうなるのぉ」こまかく言ってもそうだろ!?

「好きにするといいよ。血を返されたって困るんだし。気を付けていってらっしゃい。これで、お願い事終了だね。俺の為に願い事を使うって言うから変だと思ってたんだよ。逆にスッキリしたし」

「・・・」気まずそうなウーちゃん、ちょっとは反省して欲しい。

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