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82.俺、ザクってやられました

 ウーちゃんは大神官の再三の誘いには一切応じていない。しかも、理由に、俺達の引率役だからと言っているらしい。俺達は非常に居心地が悪い視線にさらされている。ここは大教会のお膝元のエントロウなのだ。熱心な信者も多いし、教会関係者の数も桁違いなんだ。


「今日も、ウーちゃん様の説得を頼まれましたよ。もうすぐ虹の祭りというのがあるそうで、ぜひともご参加くださいとのことですよ」とリチャード。

「私も、祈りの時間に是非ともお越しいただいて、我らの感謝をささげたいと熱烈に語られています。顔を見るたびに言われるのが居心地悪くて」とフランツ。

「兄様、この際、一つの行事だけ姿を見せると約束なさったら?そうすれば、あちらで行事を吟味して絞りこむでしょう?」とエマが良い事を言った!それだ!

「飾ってある神像みたいな姿で出てくるって約束するのもいいかも。期待値が上がって、ちょっとしたことでは満足できなくなるから、ぬいぐるみのウーちゃんは放っておいてもらえるかも」とヤーニー。発想が斜め上だが天才だな。

 ウーちゃんもニヤリと笑っている。一か八かの作戦だが乗ってみることにしたようだ。

「ウェル。お主がそれを伝えてきてくれんかのぉ」

「え?俺が?」

「そうじゃ、ワシが自分でいくと価値が下がりそうじゃて」


 というわけで早速、ハルトマン神官長と一緒に大教会へ。

 狂喜乱舞するお偉いさん達に、

「ですから、今後はそれ以外でのお誘いは、本人にも、周りの者にもご遠慮くださいね!」と念を押した。


「どの行事にするかで一悶着起こりそうな気配だったよ。神官長を残してきたから、あとは穏便に済むことを神に祈ろう」と言って、ウーちゃんの前で合掌をしておいた。

「お主ぐらい、適当な神頼みでワシにはちょうどいいんじゃがのう。うまく行かんものじゃのぉ。お主を将来、大神官に推薦してやるかのぉ」と怖い事をいう。

「絶対やめて!」

「冗談でもやめて!」と俺とヤーニーの声がかぶった。

「まあ、確かに、あの真面目そうな集団には冗談が通じなさそうな危うさがありますから、控えたほうがよろしいでしょう」とリチャードからも援護があった。本当にやめてね。


 でも、将来かぁ。俺は、ワーニーやガイルの幸せの応援がしたくって、早く大きくなりたいなと思って過ごしてきた。今、実際大きくなってきて学校にも通いだして、やっていることは楽しいことばかりで、皆からは必殺技は丸投げだとまで言われる始末。

 どうしたものかと、今考えたことをそのまま相談すると、

「お主は、そんなことを考えておるのか?よう貢献しておろうに。血の結晶も、ピアスも、ワシとの血の契約も、全ては、魔法やダンジョンに繋がってこの国を豊かにしておろうて」

「そうだよ。ウェルのおかげでヤマト王国は周辺国から羨望の的だよ」

「ウェル様は、ビックリ箱のまま成長してくださいと申し上げました」とリチャードは言っているが、それ、俺、目指していないからね。


「将来といえば、ウェルが居なくなったら髪が手に入らなくなるけど?ピアスの魔法は今の時代の人だけしか使えないってことであっている?」とエマが質問した。

「そうなんだよ。アンジェラやオルトニーが研究所で頑張ってくれているんだけど、今のところ行き詰っているんだ」

「大神官たちも秘密保持契約したんだし、これからウェルの髪やピアスのことは言ってくるようになるだろうね。今はウーちゃんに夢中でそれどころじゃないみたいだけど」とヤーニー。

「そうじゃのぉ。お主の存在は異世界転生の不思議ゆえに、ワシでも未知なところがあるでのぉ」

「兄様が、合コン目当てで、人族の転移を繰り返したのが原因だってビル兄様が言ってましたけど?」とエマがぶっちゃけている。

 リチャードとフランツの冷たい目に、耐えられなかったのか、ウーちゃんは、

「あ、そういえば、ウェルに願い事を一つ聞いてもらう約束が残っておったのぅ」と話題を逸らしている。


「なに難しいことはない。毎朝のやつより、ちいとばかし多めに血をもらうだけじゃ」また血か。ちいとばかし多めって絶対痛いやつだよね。

「お主は何だかんだ言うても、人が好いで、あの娘の為にピアスを与えるのであろう?ならば我も我もと押し寄せる者が出ようて。

その時、大教会に丸投げをするためにも、ワシの神像の額石をお主の血の結晶と入れ替えておこうかと思うてのぅ。転移体の血でなくても利用できるのはヤーニーの爆発騒ぎで証明されておるしのぉ」

「なるほど、ピアスに群がる有象無象を押し付ける代わりに、ありがたい額石をくれてやるという訳ですね」とリチャード。こっちが悪役みたいな解説するのやめて。


「ウェルの髪足りる?」とヤーニーが心配してくれる。

「やっぱり国内優先だよね。余ったものを分けるくらいの感じでいいんじゃないかな?それを、誰にいつ渡すかとかの采配を丸投げだ!」と、吹っ切れた俺は強気だ。得意技でも必殺技でも言いやがれ!


 それにしても、あの、ウーちゃんのお願い事が、自分の為というより、俺の為の気がする。これは何かのフラグか?どこかに、「それだけじゃないと思ったよ!」って突っ込む余地がある気がする。


 *******


 俺は、人生何度目かの痛くない採血についてのプレゼンをしている。

 ヤーニーは前回俺の流血を見て固まってしまったので、今回は外で待っているといいよと言ったのだが、一緒にいる!と頑なだ。不安でずっと俺の服を握っているのに、健気だ。

 今回は万能結界で注射針を作ってみたので、どうにかなるかな。前世ほど先端恐怖症は酷くないので、一思いにどうぞ。目は瞑らせてね。

 と、やっていると、ワーニーがやって来た。

「何やっているんだ?」と聞かれたので、事情を説明。

「ああ、なるほど、それはいい考えだな。ウチの国ばかり、やっかまれるのも面倒だったしな。だが、ウーちゃん、その針と言うヤツのやり方は難しいぞ。俺は失神したヤマトにぶっさしたが上手くいかなくって、結局ナイフで切ったからな」

「んなっ!?」まさかの、衝撃の事実。あの日うどん屋の制服に血が沢山ついていたのはそのせいか!ワーニーを指さしてワナワナしていると、

【ザクッ】とやられた。俺のケガは味方にやられるやつばかりだな!

 前回のように瞬時に直してくれると思いきや、

「ワシの巨大神像の額石じゃで、もう少し量が必要かのぉ」とか暢気に言っている。フラフラ~。【バタン】ブラックアウトした。


 その後、目を覚ましたら、ワーニーとウーちゃんが煤けていた。

 ヤーニーが大激怒して、二人を結界に閉じ込めて、その中に特大火球を放り込んだらしい。グッジョブだ!

「血はちゃんと別の結界で保護して無事だからね」とヤーニーが褒めてオーラ全開で言ってくる。

「ありがとう!」ヤーニーにお礼を言いながらも、二人を睨み付ける。しばらくは許さないぞ!

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