79.俺、願い事は口に出すといいと学ぶ
今日は朝からガイルの職場へ顔を出している。というのも、宝石を見て欲しかったから。
この前、ワーニーが試練のダンジョンの地下一階の奥の間を一掃した時に回収したやつだ。一体だけ大きいのがいるなと思ったんだが、多分そいつのドロップ品だ。宝石がちょっと他より綺麗な気がするんだな。寮の部屋で皆で見分したが、良い物だと意見が一致した。が、いかんせん子どもの意見なので確認だ。
「そうですね。確かに他のものよりも数段上等なものです。どこで手に入れましたか?」
「大きなアンデッドのドロップ品だと思うんだよ。でもワーニーが大きいのも小さいのも纏めて倒しちゃったから確実には言えないんだけどね。階層のボス的な扱いっぽいから宝石のランクが高くても違和感はないんだけど、」
「何か気になりますか?」
「ボス的な扱いのものって今まで居なかったのに急に出てきたらからね。ダンジョンの成長が『拡張』なら問題ないけど、『凶悪』になっていくのなら問題だと思ってさ」
「そうですね。冒険者がいつものつもりで入ったら危険ということになりますね」
「もう一度ヤーニーと見てくるよ。ワーニーにも報告しておいて」と言って、試練のダンジョンに向かった。
ゲオルグも連れて、ヤーニー、リチャード、フランツ、ウーちゃんといういつものメンバーで奥の間まで瞬間移動した。
一際大きなゴーストがいる。やはりボス的な位置づけの感じだ。
「ダンジョンコアさ~ん。ここはこれからどんどん強くなっていく予定ですか~?」とヤーニーが突然叫んだ。ビックリした~。
「まあ、確かにのぉ。直接聞くのが早かろうて。シャトーも喋っておるしのぉ」とウーちゃんも納得している。
「で、どうなのじゃ~」と天井に向かって聞いている。
『マスター。失礼いたしました。会話をしてもいいとは思いませんでした。私は、普通では倒せないトリッキーなダンジョンを目指しておりまして、どんどん手を加えておりました』
「なるほどのぉ。じゃが、急に難易度が上がっては対策できずに無駄死にするものもあらわれようて。下層に行くほど強くするというのではいかんかのぉ」
『仰せのままに、マスター。下層の造成に注力いたします』
「そうか、楽しみにしておるでのぉ。励むがよかろう」
『有難き幸せ』と言ったかと思ったら、歓喜のキラキラが降ってきた。そしてアンデッドたちは浄化されていった。
「アンデッドからすれば、とんだとばっちりですね」とリチャードが苦笑している。でも、ドロップの宝石は頂いちゃうけどね。まいど~。
「せっかく来たから下の階も行く?シェフの予定とかぶらないかな?」とゲオルグに尋ねる。
俺達がダンジョンに入ると殲滅状態になっちゃうから、翌日とかに他の人が入ると、獲物ゼロってことになりかねないんだよね。すぐに復活してくれればいいんだけどな、と思っていると。ヤーニーが、
「翌日には復活したらいいのにね。鳥肉すっごく美味しかったから!」と目がお肉のマークになりそうな勢いで言う。
『地下二階はそのように致します~』とテンションが上がったままのダンジョンコアさんの声が響いた。願い事は声に出して言ってみるもんなんだな。
「やった~!」とヤーニーが飛び跳ねている。ここの鳥肉が大好物になったようだ。王宮へのドロップ肉納入は鳥多めで手配しよう。
大量のドロップ肉を土産にして、更に、地下二階は翌日には復活するようになったと伝えたらシェフは大喜びだった。
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学校が夏休みに突入した。いよいよ、王都の冒険者ギルドが開業だ。プレオープンに協力してもらった人から口コミで広まった訓練部屋に予約が殺到した。冒険者には30分千ダル。休日の午前中は冒険者タグを持たない一般の人の時間として、15分500ダルだ。休日の午前中はさながらテーマパークの様相を呈しいるが、これも社会貢献みたいなものだろう。俺もシャルに頼まれていたので、一枠予約しようとしたが、来週の枠しか空いていなかった。
予想外だったのは、噂を聞きつけた衛兵や騎士や兵士たちも、訓練部屋を使いたいと冒険者登録に申し込んできたことだ。休日の午前中に一般人に混ざってこないだけマシだと思うが、これによってランク分けの模擬戦担当のトムじいのスケジュールが一気に真っ赤になった。これはまずいとワーニーに相談した。数千の兵が次から次に来られてもね。
結局、兵士たちには、夜の10時から12時の2時間を、自分たちで予約を管理して、好きに使ってもらうことになった。
トムじいがホッとしていた。そして、
「いやはや、どうなるかと思いましたが、よいようになりましたな。シャトーに頼んでランク分けの部屋を作ってもらおうかと真剣に悩んだところですじゃ」と言う。ランク分けの部屋ね!それは便利そうだね。
シャトーに次に部屋を作る時はそれにならないかと頼むと、
『かしこまりました。ランクを調べるので数名の試験官を集められますか?』と言われたので、すぐにゲオルグに連絡をとった。
ゲオルグ、イメルダ、トムじい、ハグじい。この4人くらいでいいのかな。
「シャトー!連れてきたよ~」
『ありがとうございます。それでは4階におあがりください』
いつの間にか4階が出来ていたようだ。毎日毎日朝から晩まで誰かしらが魔力をぶっ放している状況だから成長が早いのかもしれないな。
一つだけある扉を開けて中に入る。中には円形に椅子が置かれている。試験官の4人だけでなく、俺やヤーニー達の分もある。
『それでは今から対戦を見ていただきます。自分だったら何ランクをつけるか、出来れば理由も加えて教えてください』というと、人型の土くれと、魔獣が現れた。中心で戦いだす。
素早くよけながら、間合いを取って、隙ができる着地を狙って倒す。これを見て、
「ワシなら、Dランクをつけますな。このレベルの敵を瞬殺出来ないのかという評価のためです」とハグじい。
「そうですなぁ。私も隙を狙っている時点で、問答無用で倒せないんじゃなと判断してDです」とトムじい。
他の二人もうなずいている。
『それでは次に行きましょう』
前衛、後衛、回復役などのパターンも見せられて、それぞれに評価をしてランクを付ける。おおむね全員の意見は一致しているからどこのギルドでランク分け試験をしても同じ結果がだせていると分かる。
『では、最後に実際にランクを付けてみたいと思いますが、どなたか心当たりの方はいらっしゃいませんか?』と聞かれる。全員Sランクの俺達はどうやら役に立たないと判断されたようだ。やってみたかったのに・・・




