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78.俺、初の救助要請を受けました

 通信鏡でその一報が入ったのは、男子会メンバーでシャトーに行って、訓練部屋を楽しんでいた時だった。

「ウェル様、ゲオルグです。試練のダンジョンでAランク冒険者2名、神官2名が帰ってこないという連絡が入りました。捜索に向かいたいのですが、瞬間移動と支援をお願いしてもよろしいでしょうか?」というもの。

 すぐに男子会を抜けてゲオルグの元へ。ゲオルグを連れてダンジョン入り口のログハウスに到着した時には、ワーニーとウーちゃんは既に到着して待っていてくれた。


「取り敢えず入ろう」と言って中に入ると、アンデッドのいない静かなダンジョンだった。序盤は順調に倒して進んでいたという事だろう。2日ほど経過しないと一度倒した敵は復活してこないからだ。


 どんどん進んでいくと、いくつかの分岐の先にはアンデッドがいたが、事前調査で分かっていた通り、行き止まりの道だ。何もない。

 そして、最奥の、円形に開けた場所に着くと、通常のアンデッドの他に一際大きい個体が混ざった集団がいた。

「ここで全滅したか?」とワーニーは言うが、ヤーニーは

「でも、遺品が一つも落ちていないよ」と言いながらあたりを観察している。確かに4人もの人間がいたはずなら、何かしら痕跡があってしかるべきだ。巨大な落とし穴にはまっていなければだけど。

「ウェル様、左奥の床に穴があるように見えます。もしかしたら階段では?」とリチャードが指さす。確かに落とし穴であれば、落ちた後自動修復されそうなので、階段の可能性はあるだろう。

【ゴゴォオ!】とアンデッドを一瞬で燃やし尽くしたワーニーは、

「行ってみるぞ」と進んでいく。風呂敷結界で一気に宝石を集めて、俺も続く。


 下の階に続く階段だった。地下二階が出来ていたようだ。ゲオルグは、

「階段には近づかないと約束させてダンジョン立ち入り許可を出しているはずですので、ここの集団に追い詰められて止む無く下りて行ったんでしょう」と推測している。

「いずれにしても、あの集団が倒せぬなら、下に行くのは無茶であるやもしれぬのぉ」とウーちゃん。

 

 地下二階は、宝箱イベントの時のような草原だった。地下一階と違って瞬間移動も出来ない。このあたりの仕様は鍾乳洞ダンジョンと似ている。

 突っ込んでくるのは大きな鳥。鶏と、多分七面鳥だ。かなりのスピードで飛んでいる。鶏や七面鳥が高速で燕のように飛ぶって違和感しかないが、実際飛んでいる。サッとよけると後ろの石に突っ込んでいったが、嘴で粉砕された。破壊力凄い。数も多い。

 そして何より、風の魔道を使うようで火球や水球などを打っても軌道を逸らされてしまう。

 フランツのようなゴリゴリ物理系と相性のいい階層かもしれない。

 地下一階と二階と戦い方のふり幅がすごいぞ。神官2人が物理攻撃の役に立たなかったとしたら、ここに下りたかもしれない4人組は苦戦を強いられたろうな。

 自分だったらどこに隠れるだろうか?


 周りを見渡しても安全そうなところは見当たらない。ふと、思いついて、今下りてきた階段の後ろの割れ目をのぞき込む。僅かな隙間に、いた!


 地下二階に下りて後ろを振り返ると、草原の真ん中に、崩れた遺跡のように階段が10段ほどあるだけに見える。実際に上り始めると上階に繋がっているのだ。

 進めば凶悪な鳥の群れ、引き返せば手に負えない数のアンデッド集団。となれば、留まるしかないもんな。

 階段と隙間を利用して、結界をギリギリまで小さくすることによって固くしている。3人は血まみれで倒れていて、1人は意識が朦朧としているようだ。


「行方不明者4人、発見しましたー!」と戦っているメンバーに声をかけて、結界を大きく張る。

「よく頑張ったね、もう大丈夫だよ!」と声をかけたが、朦朧としたまま、

「天使・・・」と言われた。よく見て!俺、普通の男の子。大丈夫だよ、君たちまだ生きてるよ!

 全員を治癒魔法で回復させたが、精神的な疲労と貧血のようで、立ち上がるまでにはしばらくかかりそうだ。

 スープを作って振る舞っていると、ウーちゃんが、大量の肉と卵をゲットしてやってきた。

「ウェル、これを見るがよい!シェフが喜びそうじゃで、ワシは王都邸に先に帰っておるぞ」と階段の上に消えていった。後ろ姿が喜びに輝いている。マイペースすぎやしませんか?

 もう、いっぱいいっぱいだったであろう4人は、そんな非日常的な光景を目にしても反応を示さなかった。重症だな。


 ゲオルグに見守りを任せて、俺も参戦。だが、カモが水球を嘴から発射して、ウサギがすかさず雷撃してくるコンビネーションの感電技に驚く。かなりの知能だ。そして双方逃げ足が速い。厄介な相手だ。

 つくづく鍾乳洞ダンジョン地下一階は易しい場所だったんだなと感じる。一般人が入るならそちらをお勧めしたいくらいだが、王宮と我が家の秘密の脱出ルートなので公開できないしなぁ。悩ましい。


 ざっと結界浮遊で飛び回ってみたが、まだ下への階段はなさそうだし撤退しよう。事後処理が終わったら連絡してくれれば迎えにくるよと言い残して、ゲオルグをマースケル支所に送った。撤退の見極めなど、冒険者ならではのお説教とかも色々あるだろうしね。


 男子会のメンバーを迎えに行くと、三人でハードモードに挑戦していた。

「強くなったね!」と声をかけると、

「でしょう!ランクアップ試験を受けたいから、王都ギルドを明日にでもオープンさせて欲しいくらいです。星を貯めないと!」とデイブが張り切っている。

「冒険者の方は無事でしたか?」とグレッグが聞いてくるので、無事を伝えて、地下二階の手強い鳥たちの様子も報告した。

 ここでもう少し訓練したら、皆で行こうね!


 夕飯は鳥づくし。もちろん唐揚げもリクエストしたよ。シェフに言っておけばたいていのものは美味しく再現して作ってくれるけど、やっぱり素材が良いと味が違うもんだよなぁ。うんま~い。ブラス印の魔獣肉の種類が増えるな。また儲かっちゃうよ!


 その後、試練のダンジョンは宝石が出るのは魅力だが、Aランクでもキツイと話題になった。ちなみに救出された人からは結構な額の救助費用を徴収したらしい。危険を顧みず宝石を取るだけ取って、救助を待つような人が出てくると困るからだそうだ。俺とヤーニーには救助参加の功績で星を一つずつもらえた。ラッキー。


 シェフは鳥肉をゲットしに行くぞ!と張り切っている。

 だが、宝石を得る為に命を懸けている冒険者もいることを踏まえて、地下一階はスルーして、地下二階でのみ戦闘するならと限定的な許可になった。

 シェフは自分の所の領地のダンジョンなのに、ままならないね。宝石にあんまり興味はなさそうだから問題ないだろうけど、いちいち俺に瞬間移動を頼まなければいけないのは気が引けるかもしれないな。

「俺は全然かまわないよ。階段に一番近いところに瞬間移動してあげるからね!」と言ったが、

「それでも気になる!ワープマット、もう一組欲しい~!」と叫ぶシェフだった。

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