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72.俺、飛び級します

 俺は学校からの分厚いお知らせの中にあった飛び級試験参加票という1枚に注目した。

 なんと得点9割以上を獲得した合格者は、飛び級試験に挑戦できるシステムが今年から採用されたんだって。

 俺達に初歩の初歩から教えるのは忍びなかったのかな。ヤーニーに確認したら、ヤーニーも貰ったとのこと。

 それに男子会のメンバーは全員貰っていた。めっちゃ簡単な試験だったしね。


 初等2年(8歳)から4年(10歳)、高等1年(11歳)から6年(16歳)の試験まであって、全部で9種類に挑戦できる。俺達は取り敢えず、下から順番に受けてみる。


 新しい基準として最近出来た魔法実技試験は5人共に高等学校卒業レベルだった。試験監督の先生の唖然とした表情は笑っちゃいけないけど笑っちゃった。

 ペーパーテストは領地経営などはさっぱりだったので、高等学校3年の試験まで合格した。ヤーニーは恐らくもっと上まで出来るんだろうけど、俺達に合わせてここまでにしたようだ。


 エマは今年はのんびり初等1年生をやって、飛び級は来年考えてみると言った。受験と共に進級試験も新たに設けられていて、そこで9割以上を取れば権利が与えられるようだ。レリア嬢やプリーラ嬢とオープンスクールで仲良くなったので二人次第で考えるんだろうな。


 そこからは大忙しだ、高等は全寮制だからだ。

 大慌てで寮に入る準備をした。ヤーニーは王子様だからそのあたりのことも考えられて大部屋の6人部屋に俺達5人だけが入れるようになった。

「毎日パジャマパーティーだね!」とヤーニーとデイブは大盛り上がりだ。

 というわけで、初等1年生の予定が、高等3年生になりました!


 クラス分けは俺とヤーニーは一緒の1組。グレッグとキリアルが2組。デイブは3組だった。一人だけ別組になって心配していたが、オープンスクールでお世話になったレナード先輩が2年飛び級して同じクラスだったようで安心だ。

 7歳と、13歳、前世でいうと小1と中1。体格差は凄い。同じクラスというのが違和感すぎるほどの違いがある、が、能力はテストされているというのだからクラスメイトも文句のつけようがないんだろう。かなり遠巻きに見られている。

「積極的に話しかけに行くべきか、しばらく放置か迷うね」とヤーニーに話しかけると、

「ずっと放置でいいよ。ウェルには僕がいるから大丈夫!」と胸を張られた。

 いや、そういうことじゃないんだよなぁ。


「みなさ~ん。席についてくださ~い。3年1組の担任になりました!メッティ・ゴスビーです。社交マナーの担当です。よろしくね」と元気いっぱいに挨拶したのは小柄な若い女性の先生だ。マナーの先生だとは思わなかったな・・・落ち着きがなさそうだから。と、心の中だけで思った。でも隣で防音不可視結界を俺達だけに見えるようにしたウーちゃんが、通信鏡で同じことを囁いた。

 イヤーカフからダイレクトに聞こえる声に反応しそうだ。やめて!笑っちゃうから。


「今年から始まった飛び級制度でこの学年からは3人が上の学年に上がっていき、6人が下の学年から入ってきました。今後もこの調子でいくとクラスメイトの年齢がどんどん混ざってきますね。このメンバーで1年間一緒に学べるのはすごい奇跡ですよ。楽しみましょう!」とすっごくポジティブな挨拶をしたメッティ先生に好感がもてた。

「そしてなんとこのクラスは王子殿下とそのいとこで宰相閣下のご子息が、飛び級してきています。呼び方はヤーニー君、ウェル君でいいのかな?」

「「構いません」」と二人で声をそろえた。

「ありがとう、じゃあそう呼ぶね。この二人は規格外の魔道士なので、参考にならないかもしれないけれど、何か参考になりそうなことを見つけたら教えてね。先生も知りたいから!」とクラスに語り掛けている。なんていう紹介だ。

 そして自己紹介はヤーニーからだった。


「初めまして、ヤーニー・ヤマトです。ウェルの事を悲しませると許しません。以上です」それって自己紹介かな?以上です、が、異常ですに聞こえるよ。空耳かな?やばいヤツ認定されたかったのかな?そして、この後自己紹介する俺ってかわいそうじゃない?

「初めまして、ウェルリーダル・ブラスです。ウェルって呼んでください。ヤーニー様は生まれた時からの知り合いみたいなもので、ちょっと俺に過保護ですが、悪い人柄ではありません」

 ああ、俺、何を言っているんだ。どうしようスピーチの出口が見当たらない。

『俺を怒らしたらヤーニーが学校ごと吹っ飛ばすぞと真実を伝えておいたらどうかのぉ』なんて言ってウーちゃんが空中で笑い転げている。

 そして、いつの間にかエマの所へ行っていたはずのビル兄様が、不可視結界の中へ移動してきていて『そうだぞ~。最初はガツンとが鉄則だぞ~』とはやし立ててくる。


「学校生活自体が初めてのことです。いろいろ教えて貰えると嬉しいです」と言ってなんとか終わらせた。冷や汗かいた。ウーちゃんは明日から出禁だ!ビル兄様はとっととお帰り願おう!


 その後は、みんなの自己紹介や係の振り分けなど、新学期に必要な事がサクサク進められていく。俺とヤーニーは魔法係、魔法の授業のアシスタント担当だ。楽ちんな係を割り振って貰えたようで申し訳ない。

 午後はフリーなので、メッティ先生からもらった学校の地図を片手に皆で学内散策をした。

「オープンスクールで初等学校を見て回ったのが無駄になりましたねぇ」とキリアル。確かに、あんなに歩き回ったのにな。

 俺は、惨憺たる自己紹介を皆に訴えた。

「大変でしたね。ヤーニー様ももう少し愛想よくしても良かったのでは?」とグレッグ。さすが、分かっている。


 この間から、皆で、学校用の『様づけ』の練習だといって内内でも様づけしているのがちょっと違和感だ。始めはデイブが親から、

「あなたは絶対に学校で皆さまを呼び捨てしてしまうから、早いうちから様づけに慣れておくように」と釘をさされたのだ。俺もそれもそうだとヤーニー様、グレッグ様、キリアル様、デイブ様って呼んだんだが、笑っちゃうんだよなぁ。なんか照れ臭くって。

「外で失敗してもいいよ。だから、内では普通がいい!」とヤーニーはご立腹だが、ヤーニーは良くても周りは「王子殿下を呼び捨てだなんて!」ってことになるじゃないか。ここは貴族の学校なんだし。

「俺だって、ワーニーの事を外では陛下って呼んでるよ。そこは失敗したくないなぁ。だから、練習したいって皆の気持ちは大事にしようよ」とヤーニーをなだめる。


 そんなこんなでストレスをため込んだヤーニーは、最初の魔法の授業でグランドに特大火球を打ち込んで大穴をあけたのだった。天変地異!

 ワーニーが王宮からすっ飛んできて、頭を下げて、修復して帰っていった。

 これで皆からより一層遠巻きにされるかと思いきや、

「先生がおっしゃっていた、規格外すぎて参考にならないってこういうことだったんですね!」とキラキラした目で見られることになった。

 瓢箪から駒?棚から牡丹餅?ケガの功名?いずれにしてもラッキーボーイだな。後数時間後には王宮での地獄のお説教が待っているだろうけど。

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