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70.俺、後は受験日を待つだけだと思ってました

 星5は3つある、なかなか良いくじ運だ。

『中庭のデザインをした人の名前は?』

『音楽室のピアノの左足についている傷をつけた人は誰?』

『食堂の人気ナンバーワンメニューは?』

 なるほど、見ただけでは分からないヤツだ。聞き込みが必要なんだな。

 早速エリアを分けて分担して行ってみよう!


「知らない方に声をかけて質問するなんて・・・」とプリーラ嬢は少し躊躇しているので、皆で励まして、更に先輩に付き添ってもらった。

 一時間後に集合したが、皆きちんと情報を持ってきた。問題は人気メニューが割れたということ。ブラス印の牛ステーキ対ブラス印イノシシの香草炒め対決だ。

「食堂の方に聞いてみましたが、人気投票などは行っていないと言われましたわ」とレリア嬢。しっかり者っぽいな。

「新聞部の方がそのような企画をしていたと話してくださった方がいましたわ」とプリーラ嬢。ちゃんと聞き込み出来てる、よかった。

「掲示板を見に行ってみましょう!」とエマ。学内地図を片手に掲示板までいくと、新聞の隅に今月のナンバーワンと題して、ブラス印の牛ステーキの勝利!と書いてあった。毎度あり~。どっちが勝っても、毎度あり~だけどね。

 その後も学校中を歩き回って答えを探した。最近あんまり歩いてないからなぁ。疲れた。


 ランキングを知って口の中が牛の気分だったので、高ポイントを獲得した俺たちの班は、ブラス印の牛のステーキランチをゲットしてホクホクだった。女の子たちも常識的な振る舞いでホッとした。これなら入学してからも女の子に怯えなくてもよさそうだ。

 次回は保護者込みのオープンスクールだって、今回ほどは楽しくなさそうだな。


 受験まであと4か月、とっても簡単な試験と、親にガツンと言う面接の二本立てだが、その説明も兼ねたオープンスクールが来週だ。ガイルと母様はエマの保護者も兼ねている。

 俺はお受験なんてものに縁のない子どもだったからなんだかソワソワしてしまう。有名人が子どもの手を引いてお受験に向かっているニュースくらいしか目にしていない、あれだ、紺のスーツとか着てるヤツだよ。自分で提案しておいて緊張するって笑えないな。


 母様は「学校って初めてよ~。楽しみだわぁ」とテンション高めだ。軟禁生活を強いられた母様には学校に行くということは新鮮のようだ。エマは「ランチとか選べるのよ!」と一緒に盛り上がっている。


 オープンスクール当日、講堂には貴族の親子が一堂に会してちょっとしたパーティーのようだ。当然ワーニー、サテラ様、ヤーニーが最も立場が上だが、俺がアドバイスした通り、学校では教師が一番上というのを見た目でもはっきりとさせて、貴族に理解させる方針を取っていた。校長先生頑張ったね!

 そして、先生による年間スケージュールの発表や、4年生による部活動の紹介や生徒会の仕組みなどを、親子で聞いて今後の心構えをする。

 そして最後に校長より、面接の合否は集団生活になじめる素養があるか、親がその意義を理解し支援を十分に出来るかを確認するためのものだと発表された。いいねえ。格好いい!


 後方の座席から「偉そうに!」という不満げな男の声が聞こえたが、どうか、その家の子とは同じクラスにはなりませんように。なんなら面接で落として欲しい。横目で見ると教師がメモを片手にウロウロしている。あれが事前の振るい落としチェックならいいのに。ガイルと目が合う。頷いている。これは声が特定できてるな。チクッとチクっちゃいますかな。フッフッフ。


 なにはともあれ、みんなで食堂でランチをする。前回は牛だったので今回はイノシシステーキにした。ジューシーで美味しいよ。母様とサテラ様とエマは、

「これってなんのお肉かしら、ピクニックみたいで楽しいわね」

「卵もふわふわ。パンも美味しい。食べやすいし、入学したら全種類を日替わりで食べちゃいそうよ」とサンドイッチではしゃいでいる。

 後は予備日というのがあったが、何らかの事情で今回参加できなかった人用に設けたものだから俺たちは受験当日まで学校に来なくてもいいようだ。


 *******


 俺の部屋で今度は何処に行こうかとヤーニーと相談していると、淡く光るボールがふよふよと浮かんでいるのに気付いた。なんだ?

「おぉ、突然何用かのぉ」「まあ、ビル兄様!」と言ったかと思ったら

「久しぶり~」とチャラさ全開の若いイケメンが現れた。金髪に紫の瞳、俺とお揃いだ。俺の年の離れた兄といっても通じそうだ。

「こんにちは~。いつも兄妹がお世話になってます~」

「こんにちは。ウーちゃんの弟神様ですね。こちらこそお世話になっております」と頭を下げた。

「いいのいいの、かたっ苦しくしないで~。エマが入学試験を受けるっていうから興味があって見に来ただけだから~」とフランクに話してくれる。

「ビル兄様、入学試験はまだ数カ月先ですわ」とエマが抱き着いて甘えながら訂正した。

「そうなの~。でも折角だから色々見学していこうかな~。空気中の魔素とか使えるようになったんでしょ?人族が」

「前世のウェルの血と、今世の髪が作用しているみたいなのよ」とエマが得意げに説明している。微笑ましいな。

「そして、この子がヤーニー、ルイ兄様の子孫よ。かわいいでしょ!」

「確かに波動が兄様っぽいな~。よろしくね。しばらくご厄介になるよ」と言う弟神様。よろしくお願いしますと頭を下げるヤーニーはちょっと勢いに呑まれている。

「エマと同じ部屋の方がいいのでしょうか?それとも別にご用意しましょうか?弟神様?」と聞くと、

「一緒でいいよ~。ビル兄様って呼んでね。男の子に兄様呼びされるのってあこがれだったんだ。新鮮だと思う~」と嬉しそうに言う。


 ではでは、早速、

「ビル兄様、ここでしばらく暮らすなら、家のものに顔見世をお願いしたいのですが、よろしいですか?」

「もちろん!」

 我が家全員集合、ワーニーも主だった人を連れて集合!と通信鏡で緊急招集する。

「かくかくしかじか、ということでしばらく一緒に生活をします。ビル様、ビル兄様とお呼びすることになりますが、神様ですので、くれぐれも失礼のないように」と説明すると、皆からまたなのか的なジトっとした目で見られた。

 今回も俺は全く一ミリも悪くないよ。そんな目で見ないでね。どの道、神様を追い返すことなんて出来ないんだからさ。


「こやつは、いま、三千歳ほどかのぉ。かわいい弟じゃが、少々やんちゃでのぉ、迷惑をかけるがよろしく頼む」とウーちゃんからもフォローが入った。

 三千歳のやんちゃな神様かぁ。頭が痛くなってきた。

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