69.俺、レクリエーションに参加します
今回の階段は下りたと思ったら上りになった。こういう時はお約束の幅いっぱいの石の玉が転がってくるヤツがでそうだな、と思ったら転がって来た。かなりスピードが出ている。念の為、結界を3枚掛けたが2枚割れた。最後の1枚にもかなりの衝撃がくる。ワーニーが咄嗟に内側に更に2枚張ってくれたけど、ビビるわぁ。今度は5枚にしよう。
粉砕する前に念のために石を確認。どこかが鍵になっていたり、ギミックの解除に必要にならないか慎重に確かめる。不要と判断すれば即粉砕。その後も落とし穴系をメインにした罠が多数。どの穴も下には槍が見えている。エッグい。
一般人が入れるようになっても「階段には近づくな」を徹底させないといけないな。普通に何度も死ねる凶悪さだ。
上りきったら、丘の上のようなところへ出た。ここもダンジョンの中なんだろうが普通に地上に出たように見える。マースケル領とは違ってだだっぴろい草原だ。
近くに一本の大きな木があって、その下に宝箱がある。
「全員結界の中へ。開けるぞ」と言ってワーニーが躊躇なく開ける。いやいやもう少し周りを眺める時間とか取ろうよ。夜のはずなのに昼だなとか、いろいろあるだろう?と思ったが、既に開けられてしまった。
そして、宝箱と結界ごと大きな落とし穴に落ちていく。慌てて浮かしたが、宝箱を追いかけて下降させる。
【グワッシャーン】と宝箱が叩きつけられた音がした。
「ワーニー、宝箱の中身って何だったの?」と聞くと、まばゆく光っていて良く見えなかったという。
宝箱にも結界を張って浮かせば良かったのか?
取り敢えず着地して、宝箱の残骸を調べることにした。地面に降り立った瞬間に、
【私は宝箱の番人、あなた方が富にふさわしいものであることを願います】という声が降って来た。そして、落ちてきた穴に蓋をされたと思ったら水が入ってくる。
ヤバい、撤退だ。結界浮遊に入って、頭上の蓋を爆発させる。衝撃で水中に結界ごと突っ込むが、再浮上。繰り返すこと4回。なんとか草原の地上に戻ってきた。全員無事だが、結界内でシェイクされて、体も心もヨレヨレだ。水攻めはやめて。
そして、草原に無造作に置かれた本を発見した。さっきまでは無かったと思うので、これが宝箱の中身なのか?
タイトルは『全知の本』とある。ワーニーが手に取ってめくってみるが全ページ真っ白だ。炙り出し?それとも自分で書けと?
「ウーちゃんこれって?」と聞くが、いつも通り「知らぬ!」とのこと。
「全知の本って書いてある。何かを教えてくれるんじゃないかな?」と言うと、皆も同じ考えのようだ。問題は何を教えてくれるのかという事。
「試しに何か書いてみるか?」
「そうだね。何か聞きたい重大な事ってある?些細なことを聞いたらページがもったいないよ」
「メシーカ国にまだ我が国に害をなす計画があるか聞いてみては?」と団長。流石に国の防衛を任されるだけあってヘビーな話題だ。
ワーニーが神ポケからペンを出して早速書いている。息をのんで見守っていると、その文章の下に、
『現在、内乱中、それどころではない』という文章が浮かび上がってきた。ビンゴだ!問いに答えてくれている。多分。
これは、国家的な何かに使うべきものだな。ということでワーニーに預けた。俺達には全く関係のない宝物でちょっと残念だが、こればかりは国で活用してもらうほうがいいだろう。明日のおやつは?なんて聞いてもしかたないもんな。
港にいったり、温泉の進捗をみたり、ギルドに顔を出したり、と楽しく遊んだ俺とヤーニーは最後に、マースケル領に移築した村を訪ねた。名前は以前とは変えて、マルダン村にしたそうだ。安易というなかれ、覚えやすくていい名前だ。マースケルのダンジョンがある村だもんね。
ギルド予定の酒場にはリタとシェフがいる。今日でここにいるのも終了、あとはゲオルグと村長に任せて自分たちは王都へ帰って通常業務、つまりブラス家のシェフとナニーに復帰するんだ。来週からは週に一回だけ、俺が二人を朝送って夜迎えに来るルーティンだ。万が一、忘れてても通信鏡で連絡がくるので安心だ。つくづく遠距離通信と瞬間移動の恩恵が有難い。
因みにダンジョンの名前はシェフ考案で『試練のダンジョン』となった。中々いいんじゃないかな。あらゆるジャンルの新米さんにとって、試練が多そうだしね。
楽しい旅行を終えて王都に帰って来たら、二回目のオープンスクールだ。
今回は数人の班に分かれて、サポーターの4年生と一緒に何らかのミッションをクリアするというレクリエーションの回だ。班分けは当日行ってみないと分からない。ヤーニーは絶対に俺と一緒が良いと言っているがこればかりは分からない。校長先生あたりが察してくれているとゴネなくてスムーズだと思うが、でもどうだろう?ややこしくしないためにも忖度を期待する俺だった。
講堂に張り出してある班分けをみると俺はヤーニーとエマと一緒だった。忖度!ありがとう!
そして、その他は以前お披露目会で食事に乱入してきたマーキュス侯爵令嬢とパンナ伯爵令嬢だった。あの時、ちょっと微妙な雰囲気になったのできっと今は改心して素敵なレディーになっている・・・といいな。
サポーターは4年生の男の子。生徒会長らしい。このメンバーだもんな、先生も一番信頼のおける人選をしたんだろう。サポーターを務めないその他の4年生は運営にまわるんだって。なかなか面白い試みだ。前世の運動会を思い出すなぁ、6年生になった時は順位の旗をもって走り回っていたなぁ。としみじみ。
「やあ、みんな今日は一日よろしくね!」と爽やかな笑顔のサポーターは、マーキュス侯爵令嬢のお兄さんだった。マーキュスが二人で分かりにくいだろうと、名前で呼ぼうと班内ミーティングで決まった。兄はレナード先輩、妹はレリア嬢、伯爵令嬢はプリーラ嬢って感じかな?
レナード先輩の説明によると、これから、学校クイズを10問、抽選で引いて、学校の中を答えを探して歩くんだそう。その難易度に応じて星のポイントがもらえて、食堂でのランチがそのポイントの中から選べるシステムだ。高難易度に挑戦してタイムオーバーでゼロポイントだと水だけ飲んどけってやつ。
俺たちは勿論高難易度に挑戦だ、星5を探しながら、その他も同時に探していくことに。
まずは全部の問題を開封して中を確認する。
星1は『正門の右側の鳥の数は?』とかだった。簡単だ~。