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元転移者の俺が今度は転生してきました 改めましてよろしく  作者: グーグー


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62.俺、たまにネガティブになります

 結局、ゲオルグを連れてもう一度瞬間移動で防具屋へ。

 女将さんが近所の人と空き地で話し込んでいた。そりゃ、突然だもの皆、見に来るよね。驚かしちゃったな。でも事前に知らせても、結果は同じで驚くんだから、急でも一緒か。と自分のなかで納得した。


「女将さ~ん。保護者的な人を連れてきたよ~」と言って、ゲオルグを紹介する。

「ブラス領、領主館の管理責任者をしております、ゲオルグと申します。こちらは、王子殿下と、ブラス領主ご子息のウェルリーダル様でございます。先程、若様がお世話をかけたとか。なにか不都合はございませんでしょうか?」

「いやもう。不都合なんて、とんでもないです。王子様と若様って、はぁ。そりゃ、一般人には想像もつかないことになるわけですねぇ」

「王子様と若様!そんりゃ、すごいさ。建物もなくなるし、移動は消えるしって話を聞いておったまげたが、そりゃ、そうさな。そんな方々ならなぁ」と皆、肩書で、ファンタジーな世界の中でも、規格外のファンタジーを呑み込んでくれたようだ。

 ゲオルグがかしこまるとジョージみたいな喋り方になるなぁなんて暢気に考えながらも、一件落着。


 翌日、ゲオルグの指導で、基礎の穴を土魔法で掘り、酒場を置く。完成だ。隣のログハウスも、しっくり来ている。それを見たリタは、

「手っ取り早い方法ですね。これなら、建物はもうあるからって住人をスカウトできますよ!他の建物も運んでもらえますか?」と乗り気だ。

「その前に村の大きさを決めて柵を作らないといけません」とゲオルグに言われたので、その作業はお任せして、俺とヤーニーは昨日に引き続き丸太の確保に勤しんだ。スパーンと切っていくの楽しいんだもん。


 ブフォと乾かして、皮をジャッとやって、先端をシャキーンてして、ズドンと空中から落とす。等間隔に打ち込むと後は横に板を張るだけ。板づくりも超楽しい。かまいたちがうなるよ。シャッーピーン!ってするだけで爽快感がある。後は釘を打ち込む作業だけど、大量の釘だと、予め発注が必要なんだって。残念、すぐには出来ないのか。女将さんのところに移動していい金物屋さんを紹介してもらおう。リタとシェフを連れていく。

「こんにちは~。昨日ぶりです~」

「あ~。王子様、若様!今日はどんなご用で!?」と驚いていた。

「こちらは、マースケル女伯爵と、夫のルーカス卿です。森を抜けたところが領土になるんですけど、まずは柵をと思って、金物屋さんを紹介してもらいたいんです」

「なんと、伯爵様ご夫妻、こんな所に来ていただいて、どうしたものでしょうか?」と慌てている。

「王子様が来た時より、パニックだね」とこっそりヤーニーに言うと、横からリチャードが、

「王子様は雲の上過ぎて実感が湧かなかったんでしょうかね」と言った。

 そう、今日はリチャードも一緒だ。昨日置いて行かれただけなのに理不尽に怒られたリチャードは、次からは私が忙しそうにしていても必ず声をかけてくださいと真剣に言われたんだ。すまない。


 紹介されたのは、金物屋さんの中でも、ねじくぎ小物をメインに扱っている、通称釘屋さん。「たのも~」とヤーニーと二人で楽しげに入っていくと、親父さんも「たのまれよう~」と返してくれた。ノリのいいひと好きだ。

 大量の発注を快く受けてくれて、3日後までには揃えてくれるって。納品はどこにって聞かれたので、3日後にとりに来るよって伝えた。


 さてさて、次のお買い物。ギルドの備品を揃えるよ。資金は叙爵の時の一時金があるので、ど~んと来いですとリタは目を輝かしている。備品でも買い物は買い物だ。好きなんだな、買い物。

 王都の既婚者使用人用の建物を改装している最中なんだけど、それについての費用は全てブラス家持ちなので、リクエストしてもいいって言われても遠慮があったらしい。こちらは自費なので好きに出来ると、テンション高めだ。

 リタ、忘れないで、新婚夫婦の家じゃなくて、冒険者ギルドのカーテンだよ。あんまりフリフリは止めた方が・・・シェフ!頑張れ、押し切られるな!


 楽しく買い物をして、ギルドに荷物を置いて、領主館に帰って来たところで、ワーニーから連絡が、

「サテラが産気づいた。すぐに王宮へ」とのことで、大慌てで帰った。

 ヤーニーと俺はサテラ様の部屋の隣、つまりワーニーの部屋へ通された。

「どうなの?順調?」

「ああ、今の所問題はないようだ。陣痛の間隔が徐々に短くなっていて、もうじきだろうと、呼んだのだ」

「安産だといいね」と二人に声をかけた。妻や母が苦しんでいると思うと、早く元気に産まれてくれと思うだろう。

 ウーちゃんが、母様を連れてきた。母様は、姉様のお手伝いに行ってくるわと隣室に入っていく。通常この世界では男性は出産の時に立ち会わないんだ。

「なにかあったら入っていくので大声で呼んでくれ」と緊急時の対応をワーニーは頼んでいる。


 シャルは安産だったらしく、俺的には、あっという間に産まれた感じだったので、長い時間待たされると焦ってしまう。もう2時間は待っている。最近魔法でなんでも手っ取り早くすますことに慣れすぎているな。屋台の串肉もそうだけど、少し生活を見直さなければいけないのかもしれない。そんなことを考えてヤーニーにも話していたら、ワーニーに、

「お前は馬鹿なことを考えているな。人間、便利を手放しても、不便の中でより便利を探求するだけだろうさ。味覚に関しては腹が減っていれば大抵のものは旨いもんだ。今度腹ペコで屋台に行ってこい」とバッサリ言われた。

 そんなもんか。考えすぎだったか。


 そんなやり取りをしているうちに元気に産まれてきてくれた。ヤーニーの弟だ。明るいブラウンの髪。顔は、生まれたてだからまだ分からないな。取り敢えずしわくちゃ、でも楽しみだ。この子もヤーニーみたいに規格外なんだろうか?黒髪じゃないからダメとかある?

 シャルの、『神ポケ自分も欲しい事件』じゃないけど、兄弟で格差があるとややこしくなるんだろうか?あぁ、今の自分はなかなかネガティブだな。めでたい席にふさわしくない。今日はもう家に帰ろう。


 ウーちゃんに家に連れて帰ってもらった。後から帰宅した母様が部屋まで尋ねてきてくれた。

「どうしちゃったのウェル?調子が悪い?」

「ううん。おめでたい席なのに、考えが、兄弟間で能力の格差があったらどうなるんだろうとか、ネガティブなことばかりになって・・・」

「そう、そうね。でもそれは親が考えればいいことよ。兄弟間格差は当然あるのよ、どんな兄弟でもね。そしてそれは、子どもの間は親がなんとかする問題だわ。能力のある子がそれを隠す必要はないし、能力のない子がそれを卑屈に思って人生を台無しにするのも違うもの。我が家はシャルがこれからどんどん自分には出来ないことが多いと痛感していくでしょう。でもね、それすらもシャルなの。シャルを導いていく親の手腕が問われちゃうわね」と言って微笑む母様は、なんていうか、すごい大人だった。ギュって抱きしめて額にキスをくれる。

 合計の年齢は俺の方が上なんだけど、人の親になるって凄い事なんだな。ヘンテコな転生者の息子の俺までも、背負ってくれているんだな、と実感した。

「そうだね。俺の母様は凄い格好いいな」

「ありがとう、ウェル。でも、我が家は実質三人でシャルを育てているようなものだから心強いわ」とウインクされた。

 この人には一生勝てないんだな。きっと。


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