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58.俺、アナウンス物まね得意です

 リタは叙爵されたら、別に屋敷を構えるのかな?シェフも辞めちゃうのかな。と寂しく思ったが、幸せな結婚に水を差してはいけない、と我慢。

 母様もジョージも、それを知っていたはずなのに既婚者用の建物の下見なんてしてた。どうしてだろう。

 気になったら我慢ができなくて、朝一で母様に突撃した。

「あら、心配してたのね。でもきっと大丈夫よ。リタはここが気に入っているもの。あの子は気に入ったものを手放さない。昔からそうなの。だから面白い解決策を考えてくるんだろうなって楽しみにしているけど、離れていく心配はしてないのよ」と微笑んでいる。母様を信じてみよう。


 リタとシェフはワーニーに会いに行った。気になる。超気になる。

 そして午後、俺が応接室に呼び出されると、ワーニー、サテラ様、ガイル、母様、ジョージ、それにシェフとリタが居た。今後の話だな。


「リタはマースケル女伯爵になった。所領はブラス家の横の荒れ地でいいそうだ。隣なので、暇な時にブラスでゴロゴロしている奴らがどうにかするだろうということだ。管理はジョージが一緒に面倒をみてくれるといいのだが?」とワーニーが説明しつつジョージを見る。ジョージが頭を下げる。決まりのようだ。

「最も重要なことは、本人の申し出により、一代貴族となることだ。そして、爵位返上の際、領地はブラス家に統合され、子どもがいた場合はそこを私有地とし、ブラス領民の一人となる」


「子どもの事も想定しているのに、一代貴族にするの?」

「私が、庶民中の庶民ですからねぇ。リタも社交なんてする気は無いようなんで。そんな両親を持ってる子どもが、貴族の坊ちゃんがたと初等学校なんて通える訳ないと思いましてね。土地はちゃっかり頂いて管理もして貰えるなんて贅沢な待遇ですから文句はなんにも無いんですよ」とシェフ。

 なるほど、よく考えたら、これで貴族の、庶民と結婚するなんて攻撃にもあわないし、いいのかもしれないな。

「特例で、両親の爵位をそのまま付けて頂いて、いい供養になりました。後は好きにさせてもらうつもりです。ここで働くのが好きなんですよ。私は!」とリタは晴れ晴れとした笑顔だ。

「二人とも、これからもよろしくね!良かった。二人がいなくなっちゃうかと思って寂しかったんだよ~」

「言った通りでしょ?」と母様は得意顔だ。お見それしました。


「ねえねえ、せっかくだから貰った領地を見に行ったりしない?俺、領地に行きたいな。行ったことないんだよ!ガイルは忙しいし。ジョージは優秀すぎて、領主抜きでも不都合なさすぎだよ」と言ったら、ジョージが大爆笑した。

「なんのツボで爆笑?」

「いいぇ、不都合ないかどうかは分かりませんが、個性的な領地ですから。ウェル様と掛け合わせるとどうなるのかな?と想像したらおかしくなってしまって。申し訳ございません」

「ますます楽しみになってくるよ。来年から学校も始まるし、行きたいな~」とおねだり。


「オープンスクールは参加しなきゃだめよ」

「そうでした。案内が来ていましたよ」ジョージに、俺とエマの案内状を渡される。

「えぇ~。じゃあ、その日程を避けていこうよ!ね!ね?ワーニー連れて行ってよ」

「俺は行ったことないから無理だな。ちょうどいいからヤーニーかウーちゃんを連れて行って、迎えに来い」

「やった!決まりだね。厨房の人に聞いて面白そうって思ったんだよねぇ。領地の人達って、ジョージに怒られるギリギリを攻めてて、その姿勢が尊敬に値するって絶賛してたよ」

「ほほう、なるほど、私もご一緒しましょうかねぇ」

 あ、藪蛇だった。ジョージは大丈夫です。ガイルが忙しいから、こっちにいて母様とシャルをよろしくね。


 オープンスクールは楽しかった。

 4年生のお兄さんお姉さんが、学校は楽しいよ、お勉強するとこんなことも出来るよ!ってプレゼンテーションを一生懸命やっていた。微笑ましく見ていたら、そんな俺を、4年生たちは微笑ましく見ていた。

 そう!ここでは俺は子ども扱いなんだ。なんて新鮮なんだ!

 男子会のメンバーで顔を寄せ合って、そう小声で伝えたら大笑いされた。


 王子様含む高位貴族5人のグループが楽しそうにしているなんて、超注目の的だ。エマが寄ってきて楽しそうね、どうしたの?とか聞いているが、刺すような視線で死んでしまわないだろうか?

 ウーちゃんは俺たちだけには半透明に見えるよう調整した不可視結界で、高みの見物をしながら笑っている。

 今回は、面白いクイズが載っているプリントをもらって終了だ。楽勝楽勝。

 それではまた来月。


 さぁ、準備をして出発だ!ヤーニーはこの旅行に同行するにあたって、家庭教師から山のようなレポート課題を出されたそうだが、同行許可が出たので楽しそうだ。

 その他のメンバーはリチャード、フランツ、シェフ、リタ、ウーちゃん、エマで、計8人の旅だ。

 馬車で一週間。遠いな。しかし!結界浮遊でなんと2時間、計算上だけどね。

 異世界の馬車旅も体験してみたいとかは、一切ない。サスペンションが効いてない乗り物を乗り物と認めたくない、ってくらい酷い。王都の舗装路でギリだ。街道を駆けていた誘拐の時なんて驚いたんだ、これがリアルかって!


 という訳でサクッと結界浮遊を作った。形は俺の好きな新幹線700系、シートはグリーン車風でフカフカ結界を使用。変なこだわりで後方には荷物置き場も作ってみた。ちょっと離れた所から、走らせる。見送りに出てきた皆を唖然とさせながらも、

「黄色い点字ブロックの内側までお下がりください」とアナウンス物まね。

 そして、玄関前に到着、扉は自動開閉。プシューッ!完璧だ。

 ヤーニーは目をキラキラさせて、一番前の席を確保している。

 シャルが乗りたい乗りたいと大騒ぎしたので、時間がある人はみんな乗ってもらった、座席はいっぱいあるからね。調子にのって横4席を10列作ったんだよね~。新幹線感をだしたくってさ。

「しゅっぱ~つ、進行!」

 まずは上昇。そして、一路、領都ブライトンへ!とりあえず子どもの落書きみたいな地図しかないから大雑把に南西に進んでいく。港街だから、海までいっちゃったら流石に分かるはず。

「スピード上げるよ~!!」と言ってから気づいた。これはもはや飛行機なのでは?と。そうなると、新幹線の時速300キロどころか900キロくらいまでいけるのでは?ぐんぐんスピードアップ。

 そして、無言。あまりのことに言葉を失った乗客。どうしましょうかね。結界だけに、横風の影響もなくこれ以上ない快適なフライトなんだが。


「アテンションプリーズ。皆さま~左下をご覧下さい。只今、レルべ山上空を安全に飛行中でございます。リラックスしてお楽しみください」

「え!もうレルべ山なんですか!?」とジョージが驚愕している。

「障害物ないから直線距離で飛ぶしねぇ。そりゃ早いよ」

「どのくらいで到着予定なんですか?」とリチャードが聞いてくるので、40分くらいと答えておいた。新幹線のつもりのときは2時間くらいと思ってたんだけど、飛行機になっちゃったから、ねぇ。


 徐々にリラックスしてくれた乗客は、あの山は、とか、あの川は、とかいいながら景色を楽しんでくれた。よかった。

 そして、領都に近づくとスピードを落として、リチャードの指示で細かい方向転換。もちろん無事に到着。ジョージ達は、領主館で一服して、ヤーニーの瞬間移動で王都に帰ることになった。


「げぇ~~~~~!なんでジョージさんが!!!」という館の男たちの叫びは聞かなかったことにしよう。

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