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57.俺、幸せを祈りました

 翌日、シェフは俺の部屋へ訪ねてきて、プロポーズが成功したことを教えてくれた。リチャードにスマンと頭を下げていたが、リチャードは苦笑いだ。

 明日の誕生日会で、みんなが集まった時に報告するといいよと言ったら、

「主役のウェル様を差し置いてそんなことは出来ません。終わってから教会に行って、それからガイル様に報告をと考えています」と泣けることを言ってくれる。

 その主役がボイコットする気満々ですけどね。


 厨房では、密かに俺の好物から、リタの好物にメニュー変更が進められていた。シェフ以外の人と、じっくり話をしたことがなかったんだけど、みんないい人達だった。ノリがいいしね!

 そして彼らに驚きの事実を教えてもらった。我がブラス家は使用人が皆、相当の腕の持ち主ゆえに、護衛とか、騎士という職がないということを。

 そういえば、男子会の皆は護衛を連れてきて、控室で待たせるか、帰りにもう一度迎えに来てもらうかしている。ヤーニーですら、ダンジョンに入る時は護衛騎士フランツを連れてきている。だが、俺は専属執事のリチャードだ。母様は専属執事のカルマ、ガイルも専属執事のテオドール。肩書は確かに護衛ではない。


 門番的な人は庭師の誰かが交代でやっている。ワーニーの結界があるから武力はいらないんだろうと思っていたら、まさかの庭師が激強。

 そして料理人も激強なんだとか。どうやら、古株の人達は、革命の頃からの強者で、ガイルの守りについていて、そのまま屋敷を構えた時についてきたそうだ。平和の世になったらのんびり働くぞをモットーにそれぞれやりたいポジションについたらしい。やたらと料理人が多く、全員レベル4なのはそのせいなんだとか。知らなかった。どうりで料理人がダンジョンで肉を取ってくるわけだ。

 ブラス家の領地にもそんな人たちが移住していて、ジョージに睨まれないギリギリをせめて楽しんでいるらしい。流石に治安維持の為、見回り番と称して制服を着て領内を見回ってもいるが、当番ではない時は、訓練をしたり、狩りをしたりと、フリーダムな余生を送っているんだとか。行ってみたいな。

 そして、そこで素質のある子どもが引き抜かれて育てられるので、若手もリチャードを筆頭にかなりのものなんだって。マイナとベスターみたいに一般人の転職採用は初の試みらしい。頑張ってくれるといいな。


 さて、誕生日当日、朝から皆におめでとうと祝われた。ありがとう!

 でも、一番のプレゼントはサプライズパーティーを成功させることだよ、みんなキリキリ働いてね!

 サテラ様が、俺に渡すプレゼントを取りに来てくれと、リタを呼び出してくれている。行く前に、大急ぎで取り寄せた新しいワンピースを渡して、王宮出仕用のユニフォームを新しくしたから、これで行ってくれと頼んだが、怪しまれていないといいけど。

 シェフは、「長兄が酔っぱらいの喧嘩に巻き込まれて一緒に逮捕されてしまった。なんとかしてくれ」という家族からの仕込みの知らせを受けて、大慌てで俺に頭を下げに来た。ごめんね。大丈夫だから、気を付けて行って来て。慌てっぷりが心配だった為、急遽トムじいを一緒に行かせた。


 そこからは一気にあわただしくなった。中庭の会場をウエディング仕様にチェンジだ!ウーちゃんは張り切っている。神官じゃなくて、神様からの祝福がもらえるなんてよく考えたら凄いことだな。

 それじゃあ、いってみよう!打ち合わせの通りに行きますように。


 2時間後、シェフとリタは大号泣していた。

 屋敷に戻った二人は会場に連れてこられ、目が点になったまま、中央に誘導された。

 母様に素敵なブローチを付けられながら、臨月のサテラ様からブーケを渡されるリタ。

「リタ、私達姉妹は、情けないことに世間知らずで、年下の貴女に助けられ、励まされ、今日まで来ました。貴女はいつも前向きで、たくましく、笑顔でいてくれました。私達は貴女が、心から幸せになることを、信じています。そして、いつまでも幸せであることを祈っています。結婚おめでとう」とサテラ様が言った。

 途中で状況を理解したリタは、その言葉で号泣した。サテラ様に抱き着いてうぅ~、わぁ~、ああぁ~と声をあげて泣き続け、離れそうにない。母様も横から抱き着いてお団子状態だ。

 そして、よそ行きのベストを着せられたシェフは、そんな三人をみて号泣していた。ブーケとお揃いの花を胸ポケットに挿されながら初めて、さっき釈放された長兄が目の前にいることに気がついた。

 あ、あ、と指さして、やっと今朝からの大芝居を理解したようだ。そして俺を見る。

 ニコッと笑ってサムズアップ!

「ウェル様は最初から付き合ってるって知ってたんですね!?」と言われたので、

「知らなかったよ、もしかしたらと思ってただけ。リチャードの件で相談を受けた時にカマかけたらサクッとゲロしたらからスムーズにいったよ!」そしてまた笑顔と親指!


 少し落ち着いたら、ウーちゃんの出番です。貴族の結婚式を真似ればいいのか分からなかったから、教会に行ってレクチャーしてもらって来てと頼んでいたら、なんと神官長を連れて戻ってきていた。何が始まるのやら。


「この世界はワシが造ったなかでも古い部類じゃ。造った当初ならいざ知らず、今こうして、神として人と接し、直に祝福を授けるとは思わなんだ。忘れてはならぬ、祝福とは、保障ではない。互いに心が添う時にだけ、温かく作用する温石のようなものじゃて。それを知ってなお、共にあり、祝福を望むか?」

「「はい、望みます」」

「それならば二人に祝福を」【キラキラキラ~】と光の粒が降って来た。なんとも神秘的でとっても綺麗だ。


 拍手!!そして、パーティーだ!みんなから、おめでとうの嵐でもみくちゃにされながらも楽しそうだ。良かった。

 神官長はウーちゃんの祝福がどうしても見たくてついてきたらしい。

 ものすごく感動して帰っていった。今日から神官長の祝福にはキラキラがもれなく付いてくるかもしれないな。


 俺は料理人たちと、お互い今日の労をねぎらいながら、食事を楽しんだ。

 ケーキはなんとか、シェフの目から遠ざけて作り切ったようで、達成感がすごい。

 シェフとリタがひと段落ついたようで、こちらに来た。お疲れ様、座って、食べて、好物ばかりのはずだよ!と言うと、

「確かに、そうですね。リタの好物ばかりだ。本当にありがとうございました。みんなも準備ありがとう。俺の好物はどこだろうな?」と笑った。

 ひとしきり食べて飲んで、夕方には感動しきりのシェフの家族を送りだした。


「主役は当然、後片付けは免除で、今日は客間を用意したよ。明日からのことは明日相談しよう」と言うと、

「ウェル様。ありがとうございました。サテラ様も来てくださって、ウェル様が準備に走り回っていたと聞かせてくださいました」

「リタ、幸せになってね。リタは俺のお姉ちゃんみたいなものだよ。いつも一緒だった。俺はずっと「ウェル様、今日もいいウンチがでまちたね~」って言いながらオムツを換えてくれてたリタと、早く話がしたいなって思いながら大きくなったんだよ。そんなリタには特大に幸せになって欲しいよ」

 何故か急に静かになり、穏やかな夕焼けの空に俺のウンチネタが響いてしまった。

 リタはまたまた泣き出した。ウェル様~といってムギュっと抱きしめられた。

 泣き虫なお姉ちゃんです。ヨシヨシ。


 サテラ様を迎えに来たワーニーは、リタに

「結婚おめでとう。例の件、旦那と話し合っておくように」と言い残して帰っていった。

 あ、そうだ、叙爵の件、忘れてた。

 リタ、長~い一日は、もう少し続きそうだよ。頑張って!

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