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56.俺、暗躍する

 案の定、とっても有用な【異常検知】が、なぜあんなメルヘンな呪文を唱えないと使えないのかと問い合わせが殺到した。らしい。アンジェラとオルトニーが弱り切って助けを求めてきた。

 いや、そうなるだろうなぁとは思っていたんだよ。でもエマが楽しそうだったし、ねぇ。

 いいおっさん達が「私よ私、ルルルル」的な呪文って、引くよな。

 こういう時は男子会だ!いつもヒントをくれるお助けキャラ要素満載の頼もしいメンバーだ。


 今日の休憩時間にでも相談しようと思っていたんだけど、嬉しいことがあってすっかり忘れてしまった。

 というのも、キリアルの魔眼の俯瞰がついに免許皆伝。ウーちゃんのお墨付きを得たからだ。全種類コンプリート。量も流れも質も見分けられる。ワーニーより範囲は狭いらしいけど、十分だろう。みんなでお祝いだ。

「かくれんぼ無敵ですね」なんてデイブが言って、

「そうですね。少なくともこのメンバーは私とはやってくれないでしょうね」と返して、皆で笑った。平和だ。


 外交交渉が本格的に始まり、忙しすぎて、見かけていなかったガイルが、久しぶりに夕飯の席についた。そして食後のティータイムに切り出した。

「エマ様、異常検知の呪文、大変助かっております。ありがとうございました。つきましては呪文を簡略化するか、無言でもよくするか、お知恵をおかしいただけませんでしょうか?」


「エマはそんな縛りを設けたつもりはなかろうて。なんなら、自分がそれを呪文という形に落とし込んだ自覚もなかろうのぅ」とウーちゃんが解説した。

 無自覚無意識の女神様パワーだ。

「私なにか失敗しちゃったかしら?」と不安そうなエマ。

 当たり障りのない解決策を模索しようとしていた俺だが、ダイレクトに切り込んだガイルが正解かもしれない。このまま押そう。


「大丈夫だよ。エマ。エマの言った言葉が呪文として定着しちゃったんだけど、かわいい女の子は大喜びなんだ。でもそれ以外の人はちょっと照れ臭いから、短くして欲しいなってことなんだ」

「そうなの?」

「そうだよ。例えば、ガイルだったらどんな呪文にする?」と必殺丸投げ。

「わ、私ですか、そうですね。異常を検知せよ、とかですかね?」

 次々にみんなに聞いていく。沢山でたアイデアから、エマにも皆の好みや方向性を考えてもらいたい。

「どう?こんな感じで、それぞれ言いやすい呪文って違うんだ。それに長い呪文を短くするのは難しい。それじゃ、短い呪文を決めておいて、後は好きにアレンジしていいって、幅を持たせるのも素敵じゃない?出来るかどうか挑戦してみない?」

「やってみるわ!必要なのは、普通を覚えて異常は教えてってことね。これだけでも長いかしら?」

「平常記録、異常検知はどうかな?大人の男の人も言いやすいと思うよ」

「やってみましょう!『平常記録、異常検知、呪文はアレンジしても大丈夫よ~』どうかしら?」

「実験してみよう、『今日の俺は超普通!平常記録に持ってこいだ。異常検知よろしくね!』」

「ふふふっ、ウェルの呪文は楽しいわね。うまくいっているといいわ。でもまた眠り草で実験するの?」とエマ。

「シェフにいいもの作ってもらっているんだよ。これ!山椒のラムネ。舌がビリって痺れるけど、イヤーカフが振動したら成功ってこと。眠り草でも実験済みだから代用できるよ」

「本当にウェルはビックリ箱ね!」

 そして、【ブルルルルルルル】俺は成功。エマとやったね!とハイタッチ!

 次々に、みんな、かなりアレンジした、トリッキーな呪文を試して成功させている。


「お主は子どものあしらいが上手いのぉ。ヤーニーもコロコロ転がしておるし、エマも楽しく過ごせておる。前世は、世話係かなにかかのぉ?」

「ただの、うどん屋です」

「ほほぅ。天性のたらしかのぉ、転生だけに。くっくっくっ」いやいや、ウーちゃん面白くないから。それにしてもダジャレって神様も使うのか。


 そして、ラムネの発注が大量になったので、ブラス家以外のものは王宮の厨房で受け持って貰うことになった。レシピを受け取りにシェフを尋ねると。

「ウェル様、ちょっとだけ時間いいですかね?」と深刻な顔のシェフ。なにがあったか尋ねると、

「リチャードは、リタに興味があるんですかねぇ?最近ちょくちょく一緒に話しているのを見るんですよ。いやね、お似合いなんですよ。この屋敷で一番の色男で、性格もよくって、実力もあって、若くって、頭も良くて、あぁ~、嫌なくらい欠点がないな!」

「なるほど、なるほど。それで、リタはなんて言ってるの?自分を信じてくれっていってるんじゃないの?」

「そりゃ、リタは俺だけだって言ってくれますがね、どう考えたって、あちらさんの方が条件がいいんですよ」

「条件はリタが好きな人だと思うけどな。そうか、そうか。シェフ。レシピ頂戴、ありがとう、じゃね!」俺は厨房を飛び出した。リチャードはリタへの聞き込みを開始していたらしい。棚から牡丹餅だ。


「母様、決定的な言質が取れました!リタとシェフ確定です!リチャードが良い仕事をしてくれました」

「まぁ、まぁ。素敵ね。詳しく話して!」母様が楽しそうだ。それだけでも嬉しい。

 そして、ジョージとリチャードとカルマも呼んで、これからのことを計画した。

 とはいっても、プロポーズのお膳立てをするとかってお節介はしない。

 既婚者用の建物を修繕するか、新築するか検討したり、妊娠した時に備えて、代わりのナニーについて候補を絞ったりするだけだ。

 あと、うだうだ言っているシェフの尻をけっとばして、喝を入れて。あ、お膳立てする気満々だった。

 楽しぃ~。最近嫌なことに頭を悩ましてばかりだったから、心底楽しい。


 そして、満を持してシェフの所へいった。そして、勿体つけて話し出す。

「シェフ、あのね。リチャードがね、」

「ちょっと待ってくださいよ。いくらリチャードでも、やっぱりリタは渡せませんよ」情けない顔だが、言い切った。

「でもまだ、プロポーズしてないんだよね」

「そうですが、もう少ししたら言うつもりで、指輪も用意してはいるんですよ」

「そうなんだ、でも、まだなんだよね」

「あ、あ、いや、今日にでもと・・・」

「今日なんだね。じゃ、明日まで待つよ。じゃあね」と言って去る。


 なんでこんなに急いでいるかと言えば、明後日が俺の誕生日だから。去年のお披露目会とは違って内内の、使用人も参加してくれるアットホームな誕生日会なんだ。それを、ウエディングパーティーにしちゃおうと思って大忙しだ。普通庶民は、教会に書類を提出して、祝福を受けて終了なんだって、味気ない。パーティーを提案しても遠慮されるのは目に見えているので、強引にだ!

 シェフの実家は連絡がついた、参加決定だ。リタの身内はいないけど、サテラ様が来てくださるって。

 厨房ではシェフの部下たちが頑張ってくれているが、こういった食事付きのパーティーをシェフを除いて計画するのは本当に骨が折れる。でも楽し~い。


 皆に、話をするたび、ウェル様の誕生日パーティーはよろしいのですか?って聞かれるけど、自分が祝われるより、二人が祝われて幸せそうにしているのを見るほうがいいんだなぁ。ま、二人がサプライズ大嫌いって人種だったらゴメンナサイだけどな。その時はウエディングパーティー開催が俺の誕生日祝いということで我慢してもらおうか。


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