51.俺、あっさり片付く懸案に喜ぶ
ダンジョン地下一階、想像通りのナイスリアクションを披露してくれた二人に感謝。王宮への扉を案内して、地下二階へ、ドンドン進むよ。
途中の道はリチャードとトムじいが、魔獣をバッタバッタと倒していき、俺たちはドロップ肉を拾う係。めちゃんこ強くって、姉弟はダンジョンよりも、強さの方に、より驚いている感じ。
「この人たちみたいになれって期待されているとしたら俺、ここでやっていく自信がない・・・」と呟いている。
「あの二人はレベル5だからね。ちょっと異次元だよ」と説明しておいた。
「「レベル5・・・」」双子みたいに声が揃った。
「超レアなレベル5。俺の周りには結構いるけど、あれ?そうでもないか?
リチャード、トムじい、サテラ様、キリアル父子、5人だけか。神様二人と、その子孫二人がいつも一緒だから、強い人に沢山に囲まれている気になっていたけど、実際はそんなにいないもんだな。レベル4ならゴロゴロいるけど」と独り言のように呟いていると。マイナが、
「レベル4はゴロゴロいるんですか!?」と驚いている。
「厨房は全員4だってこの前聞いたよ。上級使用人はマーガレットが3で後は4だね、そこの二人は5だし」
「低くて3なんですね・・・」
「いや、一番低いのは、あ!!!なんてこった!すっかり忘れてた!!」
「どうかされましたか!?」とリチャードが側に来る。
「我が家で一番低いのはシャルロッテ、妹なんだよ。レベル2なんだ。体内魔力を使うのが魔術だろう?そのレベルが低いと、体外魔力を使う魔法を使いたいって思うだろう。その為に体内の魔力を封印するんだ。そうすると魔法が使えるからね。そして更に、封印と解放を自由自在にすると、魔法と魔術を両方使えるってわけ。それを研究しようって思ってたのに、ダンジョンに夢中で忘れてた。今すぐやろう!」思い立ったが吉日、唖然とする姉弟を放置して、
「トムじぃ~。帰るよ~」と叫んだ。
「ワープマットで帰ろう。こんな風に、マットの真ん中まで進んで~~」
「~~くると、ほら!中庭に到着だよ。便利でしょ!」
「も、もう、今日は、熱が、出そうです・・」とキャパオーバーのベスターが力尽きていた。
「ははは!そうか、今日の残りの時間は無心で草むしりじゃな」とトムじいが言うと、二人はホッとした顔をして、
「ありがとうございます!」と言った。なんか、ゴメンなさい。
リチャードと研究所に到着。
封印と解放が出来るのはワーニーと、ここにいる、レベル3だけど天才のアンジェラだけなんだ。ワーニーは神の子孫で規格外だから参考にならないし、アンジェラだけが頼りだ。
リチャードはレベル5だが、そんな彼もイメージ出来なくて使えないっていうんだから、根本から探っていかなきゃいけないな。
「よし!」と気合をいれて、「たのも~~~~!!!」
「どうかされましたか?」
「アンジェラ、封印と解放のイメージを細かく教えて欲しくて、急ぎの仕事があったら大雑把にでもいいよ」
「うふふ、教えないという選択肢はないんですね」バレたか、テヘペロ。
休憩しようとしていたから、お茶を飲みながらでもと言って、俺たちの分も淹れてくれた。
アンジェラはダンジョンコアに貰った指輪をはめた左手を示して、
「これはご存じの通り魔力を貯蔵できるんですが、はめる前は、体内魔力を指輪に吸い込ませて貯め、吐き出させて使うというイメージだったんです」
「コツコツ貯めて、でっかく使おうってメッセージカードに書いてあったよね」
「そうなんです。でも実際は、この指輪の容量の分だけ、自分の魔力が増えた感じなんです。伝わりますかね?」
「うん、なんとなく」
「いままでは、封印とはと聞かれると、全身の体内魔力を固めて動かなくするイメージと答えてきましたし、実際私はそのイメージで使っています。でも、この指輪の事を考えると、違うような気がしてくるんです」
「あれ?もしかして、アンジェラの中では、もう解決してる感じ?」
「いえ、まだ試したことはないんです。でも、指輪が、表現はあれですけど、イボみたいな感じで血が通っている体の一部なんです、切ると血が出る感じです。ということは指輪には血が、じゃなくて、私の体内魔力が巡っているのではないかと思うんです」
「なるほどね、今までは体内魔力は筋肉のようなものだと思っていたけど、実際は血液なんじゃないかってことだよね」
「あ!そうです、その表現がぴったりです」
「筋肉を固めて殺そうとして苦労しているけど、実際は血液なので頸動脈を押えればサクッとやれるってことですね?」と、リチャード。急にどうした。物騒な例えだな。合ってると思うけど。
「一カ所だけ止めるイメージならレベル1でも出来るかな?」
「ただいま帰りました~」とオルトニーが帰って来た。実験体ゲット。
「オルトニー、そこに立ってて、いくよ」
まずはほんの少し、毛細血管ぐらいのイメージで塞き止める。
「どう?魔力封印出来てる?」
「えぇえぇ~~~、出来てます。ウェル様いつの間に!?」
「今の間にだよ、じゃあ、解放!」できてる?うん。成功だ。
「えぇぇ~!」オルトニー、【しぃ~。】
「じゃ、次は、リチャード。自分自身に掛けてみて」
「魔術で封印、魔法で解放ですね。緊張しますね。中途半端に失敗したらアンジェラさん元に戻してください。お願いしますね」と保険をかけている。
「封印っ!できました!成功です。魔術が使えません!あぁぁ。怖い!ウェル様、髪、髪、ください。魔法を使います!早く!」
アンジェラやワーニーに封印をかけられたことはあるだろうに、自分で掛けると怖いんだな。髪をブチっとして渡す。
「俺の髪、手を離すと自動で回収されるからしっかり持っててね」
「はい!あぁ~~~~!!!凄いです。半身結界で浮いても全く魔力を消費しないです!魔力残量を考えなくていいんですね!うわぁぁ~」
すごいテンションで、下半身シャボン玉のタイツ状態で飛びまわっている。シュールだ。明かりの魔法も使って、もう一つ結界も作って、同時発動もこなしている。流石だ。
「レベル5のリチャードがレベル3の魔法も使えるって、無敵なんじゃない?」と聞くと、
「でも、魔術が同時には使えません。この状態でレベル5の魔力矢とか使えるといいんですが、そこまで出来るとワーニー様になってしまいますね」
「そうだね。神の子孫だから別格だな。じゃ、そろそろ戻ってみて、次は魔法で解放だよ」
無事元に戻れた。これで懸案が片付いたかな。アンジェラのおかげだ。
あ、魔力ありの人まで俺の髪の入ったピアスが必要になるんだ!これはヤバいかもしれない。今でもまだ順番待ちで魔力なしの人の手に全ては届いていないのに。
すぐには公表出来ないかもしれないな。
でもまず、ガイルに報告に行こう!ジェットコースター結界で移動だ!
リチャードの魔法でね!
アンジェラ!アワアワしているオルトニーに説明よろしく~!