50.俺、暇になった
学級崩壊の件は大変感謝されて一件落着となった。ウーちゃんありきの作戦だったけどよかった、よかった。お偉いさんが実情を目の当たりにすると対応の機動力が違うよなぁ。
学校に、教室を覗く為の隠し部屋とかが新設されたりして。怖い怖い。進学したら人の悪口とか言わないように気を付けようかな。
今日は、我が家の応接室に、あの日の校長室のメンバーが揃っている。
もう準備学校いらなくない?と言ったら、次はその下の学年の学力低下問題です。よろしくお願いしますといわれた。ガックリ。
「よいではないか、内務大臣というのは国内の取り纏め役なのであろう?恩を売っておけば、お主の『初代ギルドマスターの像』の野望が叶うやもしれんぞぉ」と、ウーちゃんに耳元でニヤニヤしながら囁かれた。
ウーちゃんったら!下心上等のアドバイスありがとう。神様にしとくの勿体無いよ!
「でも結局、学力って言うより、教師の指示が通る子どもかどうかが問題なわけですよね」と俺。
「そうですね。今回の事件でほとんどの貴族は子どもの教育を見直していると思いますから、後は集団生活が教師の指示のもと送れるかどうかでしょう」と内務大臣も言う。
「だったら、最高学年は、4年生だったよな。そこで体験学習として、一緒に授業を受けるのはどうだろう?年上のお兄さんお姉さんたちが、真面目に授業を受けているのを見て、体験してもらうんだ。オープンスクールっていうんだけどね」
「授業は座って真面目に受けるものだって学習させるんですね」と校長。
「そうです」
「そのオープンスクールというのはいつでも誰でも参加できますの?」
「基本は年に数回、受験生が参加するものだったと思う。学校の説明も兼ねている日は、親子で参加することもあったと思うよ」
「ほほう。親子で。親にも釘をさすチャンスですなぁ」副大臣が黒い笑いを浮かべている。
後は、あれよあれよと決まっていった。決定権を持っている大臣って本当にスゴイと今回の件でしみじみ。
準備学校は、オープンスクールに取って代わられ、受験したい人は参加が必須になった。これで授業態度、ある程度は先輩を見習ってくれることを期待。
受験内容は、筆記は、ほぼ問題公開に近い冊子を作ることに。まだ修学前だからね、そこは甘々でいいと思う。
後は、親子面接。俺がイチオシした。これはぜひやったらいいと思う。そして、かなり厳しくすることを冊子で伝えたらいいと思うんだ。
この世界は身分があるから、高位貴族は、すっごく偉そう。ボスキャラも伯爵令嬢だった。教師より身分が上だと、「はぁ?誰にもの言ってんの?」的なやつも多かった。これは良くないと思う。
学校の中では教師は上。自分どころか、自分ちの親よりも上と叩き込んでおいた方がいい。面接で、緊張感のあるなか、親が恐縮して話しているのを見せるのは効果的だと思う!たぶん。
これを伝えると、教頭は涙ぐんでいた。苦労が偲ばれます。
なんか俺、おっさんの涙に遭遇する確率が高めな気がする。ま、冗談はさておき、やりすぎると悪徳教師が出てきたりするので、そこは校長の管理責任で頑張って欲しい。
「それでは、オープンスクールの案内楽しみに待ってます!」と、大人の皆さんを送り出して、お仕事もどき終了だ。
「終わった~!準備学校は無くなったから時間が出来るぞ。こんなに頑張った俺にご褒美があってもいいんじゃないかな。神様!」というと、
「鳴弦弓の時に、願い事叶えますって約束したのはお主の方じゃで、どちらかいえばワシがご褒美をもらうほうじゃのぉ」と返された。
忘れてた。そういえば、そんな安請け合いをしたな。お手柔らかにお願いします。
翌日、何か楽しい事ないかな~、と庭を散歩していると、見たことのない男女とトムじいが一緒に歩いていた。庭に知らない人がいること自体初めての事で驚いた。
「トムじい~」と声をかけると。
「おぉウェル様!秘密保持契約したてほやほやの新人をご紹介しましょう。マイナとベスターの20歳と19歳の姉弟ですじゃ。二人とも魔法使いで、基本的なものはマックスのレベル3が使えるようになっている努力家ですじゃ。まずは私のところで修行して、それからマーガレット、シェフ、ジョージと渡り歩いてもらって適性のある所に配置となるでしょうな。二人とも挨拶を」
「マイナです。お初にお目にかかります。精一杯務めさせていただきます」
「べ、べ、ベスターです。お、お、お初におめめめにかかります」
「初めまして、ウェルリーダルです。よろしくね!」
微笑ましいほどテンパっている弟だ。姉ちゃんが蹴っ飛ばしそうな勢いで見ているよ頑張れ。
「とうとう我が家にも、待ちに待った魔法使いなんだね!使用人よりも、研究所の手伝いとダンジョンの肉当番の方からのラブコールが凄そうだけど。頑張ってね」
「はい、いろいろ聞いております。頑張ります」
「トムじい。修行って何するの?俺も参加したい!」とおねだり。
庭師だけに、御庭番的な?スパイ活動か?俺にも内緒のブラス家の影の組織とかあったりして?妄想を膨らませていたら、
「今日、明日は顔合わせと、敷地内の地図を頭に叩き込んでもらって終わりそうですじゃ。広いですからなぁ。ダンジョンも把握してもらわねばならんし」
「それじゃ、俺が案内してあげる。それでとっとと修行しよう!」
俺は、4人乗りのジェットコースターもどきを結界で作った。
「さあ、乗って!トムじいとマイナは後ろ、ベスターは隣に乗って、不安だったらバーを持って、立ち上がらないでね危ないから、マイナはスカート気を付けて透明だから」
それでは発車します。まずは高く飛んで、俯瞰で位置関係の説明だ。トムじいよろしく!
「これは説明しやすいですな~!あの緑色の屋根が研究所で~」
「ちょっっっと、待ってください!これは?何ですか?」
「結界浮遊だよ。レベル3でも3人乗りまでは作れるから練習してみてね!」
「自分たちでも使えるんですか?この魔法を?」
「そうだよ。今、まさに乗っているから、イメージし放題だね」とニッコリ。
フランツの半身結界での空中戦とか、見せたいなあ。いいリアクションしてくれそう!
新人で~す。みんなよろしくね~。といいながら飛び回る。
上級使用人執務室まできたら、リチャードが出てきて、笑われた。面白そうなことしてますねってさ。ダンジョンにも行くから、リチャードも乗って!と6人乗りに拡張。
母様の所へ行ったら、シャルとエマは、お針子さんが来ていて、試着中だった。後回し。そこにいたウーちゃんは、ちゃっかりバーの所へ乗って、いざ出発と号令をかけている。
ダンジョン驚くぞ~。「地下へまいりま~す!」