47.俺、ボス戦ヤル気でした
結局ウーちゃんは赤色の鈴を選んだ。まじないの効果は『無限の可能性』だって。神様、自分の造った世界に何を求めてるの!?
ワーニーは早速ダリアの会を招集して王宮関係のメンバーは新しい秘密契約になった。『うっかり』に対しては、口が開かなくなり、『悪意』に対しては、今まで通り激痛だ。
すぐにブラス家にも来て更新してくれた。
フランツとリチャードはとても喜んで、二人して青春の一ページ的な抱擁をしている。俺とヤーニーの護衛だと、危険のあるときに激痛に襲われてたんじゃ、命の危機だもんな。家とダンジョンの中だけなら皆知っているから良かったけど、外出したらそういう訳にはいかないから、本当に良かった。
今日は、このまま、この流れからの~、ボス戦だ!
神ポケにあらゆるものを詰め込んで、何があっても対応できるようにした。
「それでは行ってきます」流石にボス戦と聞くと、母様は心配して、忘れ物はないか何度も確認してきた。大丈夫!部屋になにも残ってない勢いで詰めまくっているよ。
念の為、地下二階でワープマットを回収した。今日はお肉屋さんは休業してね。
そして、地下四階に到着。目を疑った。なんと、ダンジョンが成長していた。つい先日まで確かにあったはずの豪華な扉はどこかに消えて、教室くらいのスペースにただの扉が、舞台セットのような、というか、どこ〇もドアのような自立するヤツがポツンと立っていた。ナニコレ、やっつけ仕事ですか?
「考えていても仕方ない。瞬間移動は出来なくなっている。ワープマットを確認してくれ」
「ワープマットは使える。通信鏡も使えるよ」と答えた。
「扉ということは開けろということでしょうか。こちら側だけ模様があるので、こちら側が表?ということでしょうか?」アンジェラが観察している。
「よし、では開けてみるぞ、個々でも結界を」天才なのに慎重なワーニー。そういう所は尊敬するな。
扉の中は砂漠だった。どっちに行けっていうの!?っていう大砂漠。皆、顎が外れそうな勢いで驚いた。
オルトニーとエマを残して、恐る恐る中に入る。砂漠だ。暑い。
服を脱いで薄着になり、確認作業をした。瞬間移動は不可、あとは使える。
扉を閉める。砂漠にポツンと扉が立っている。開ける。ダンジョンの中にオルトニーとエマがいる。
「扉が消えてしまうことはないようですね。合流します」と言って二人とも入って来た。
「それにしても、これはまた、凄いな。流石の俺も、パラソルは持ってきてないな」母様、偉そうに絶対大丈夫とか言ってスミマセン。
砂漠の歩き方、って星を見て歩くと迷わないって聞いたことがあるけど、そもそも夜になるのか?そもそも星が地球とは違うよな。あ~。無謀な気がする。
暑い、日差しが痛い。日よけが必要だ。ブランケットを頭上に浮かす。安定しないので結界でサンドイッチにして浮かす。
不思議なんだけど、俺の場合、結界は自由自在に操れるんだけど、それ以外は下手くそなんだ。ヤーニーは楽勝でブランケットを単体で浮かせているのでうらやましい。ないものねだりは止めておこう。
「肉をドロップするような魔獣がでますかねぇ」と一面の砂を見てシェフはボヤいている。
「確かに。砂漠ってサソリと蛇のイメージしかないなぁ。サソリって知ってる?そもそも砂漠ってこの世界にあるの?」
「砂漠もサソリもありますよ。尾に毒があると輸入食品店で聞いたことがあります」
「一緒なんだなぁ」
「私も、行ったことはないので想像するだけでしたが、これなんですねぇ」としみじみ。
「退避-------!!!」とフランツが叫んだ。
砂が盛り上がる。「うっそ」と思わず言っちゃうくらい巨大な蛇が姿を見せた。
鎌倉の大仏のサイズで見下ろされている。超怖い。
暑いかもだけど、全身タイツ、じゃなく、全身結界をまとって機動力と防御力を確保。
シェフはやっと来たとばかりに、槍を持って飛び込んでいった。巨大だからその槍だけではダメな気がする・・・
「頭を落とす!」と、半身結界のフランツが大剣を持って蛇の背後から空中へ。落下のスピードも加えて一気に振るう。
「倒したのにドロップしないね」とヤーニーが残念そうだ。
「だね。上の階のように十回に一回くらいしかドロップしないのかな?」
ここは、かなりの実力がないと食肉確保に来てはダメな階層かもしれない。
その後は、サソリにトカゲにアリ、どれも巨大サイズでやってきた。
ワーニーは魔眼の俯瞰を試していたが、姿を現すまでは補足できないようで、「使えんな」と悪態をついていた。
一通りドロップしたので、箱型結界を作りワープマットを中に敷いて、中庭に移動だ。ここでダンジョン飯としゃれこむには暑すぎた。
「「すずし~~~~~い!」」生きかえりました!
俺たちが大騒ぎしていると母様達がやってきた。
「お疲れ様です。ボス戦は?誰も怪我などしませんでしたか?」と聞いてくる。そうだった。ボス戦に行くはずだったんだ。説明して、蛇肉を見せる。
シェフは肉を抱えて厨房へ走っていった。
せっかくだから皆で、中庭でダンジョン飯風ランチだ。クリーンの浄化をしているとは言えダンジョン装備のままだからね。
シャルロッテは大喜びで、俺の作った結界の箱馬に座っている。
蛇肉もトカゲ肉も旨かった。俺は蛇のほうが好きかな。
アリは茶色いスーパーボールのようなものをドロップしたので何かわからず置いておいたのだが、食後に皆で割ってみると中から蜜が出てきた。さわやかな甘さで美味しい!はちみつじゃなくて、ありみつ?初めて食べた。
そういえば、蛇もトカゲも初めてだから、初めて尽くしのランチだったな。
お腹いっぱいでダンジョンに戻る。暑い。
少ない情報でマッピングをしているアンジェラによると、太陽もどきは位置が変わっていないそうだ。ということは夜は来ないのか。ず~っと暑いんだな。ふぅ。
しばらく進むと、見えない壁にぶつかった。??結界??
フランツが切りつける。切れるでも、すぐに修復される。どうやらダンジョンの行き止まりのようだ。階段がある可能性が高いか?周囲をくまなく探すことにした。
透明壁を触って確認しながら、左右に分かれて探した。かなり歩くが何もない。300mほど進むと行き止まりだ。反対側にいるワーニーと連絡をとる。あちらも行き止まりのようだ。目印に結界のポールを立てておいて、合流した。
「まさかとは思うけど、まだダンジョンが成長中で、階段が出来上がってないとかあると思う?」
「・・・」皆、だんまりだ。そしてウーちゃんを見る。
「ワシは知らんぞ」
だよね~。お茶目なダンジョンコアさんだからなんでもありな気がしてきた。