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38.俺、妹のようなものができました

 その日、夢の中に、まばゆい発光体が現れた。

「ルイ兄様がいつもお世話になってます。兄様も随分と力が戻ったようです。私も居場所がたどれました。ありがとうございます」

 光が揺れた。言葉の感じから、お辞儀でもしたのだろうか?

「ご丁寧にどうも。光っててよく見えませんが、神様の妹様ですか?」

「あっ!」と言うと、光が収まって、プラチナブロンドに翠眼の美少女が現れた。今の俺、ウェルと同じくらいの年恰好に見える。5~6歳くらいかな?

「兄様の、この世界ではトゥーラスと呼ばれている兄様の末の妹です。家族はエマと呼びます。よろしくお願いします」


 *******


 不思議な夢だった。そして叫び声、

「ウェル様~~~~~~~~~!!!!!」

 驚いて飛び起きると、そこにはリチャードが、指差ししたまま固まっている。

 指した方向は俺のベッド。そしてそこには美少女が寝ていた。


 エマちゃんだっけ?夢から出てきちゃった!?


「ウェル様、そのこ、こ、子?はどこから???」

 驚いては負けを最近のモットーとしているリチャードも度肝を抜かれている。

「さあ?」俺も知らん。そしてうるさくしているのに、他人のベッドでぐっすり寝ている、この子は大物だ。


 ウーちゃんが飛んできた。ガイル、ジョージも、リチャードの声を聞いたか飛び込んできた。

「本当に来ておる。なんとしたものかのぉ」あれ?ちょっと困ってる?

 ウーちゃんの説明によると、エマ様は生まれて40年くらいの幼い神様で、これから色々勉強して自分の世界を造るんだそうだ。その勉強の一環でウーちゃんの所へ来ようとしたけど、居場所が分からなくて困っていたそうだ。

 神域が繋がってようやく辿ってきたが、ウーちゃん自身、肉体が復活してない状況。人間に迷惑になるからと事情を話して、他の兄の所へ行けと言ったのだが・・・来ちゃったと。


「でもなんで俺の所へ?」

「ワシには断られたが、お主なら断らんと思おてのことじゃろうて」

「なんでだ?」

「血の契約をして毎日血を捧げておる熱心な信者とでも解釈したのじゃろう」

 なるほど、実際は勝手にチクッとしているだけなんだけどな。それ言っちゃうと兄の威厳とか傷つきますかね?


「ま、それは、置いといてもいいか。人間は神様の職場見学ならぬ、世界見学で何をしたらいいの?」

「普通なら、ワシが人間になりすまして家でも構えて、そこに住まわせるんじゃが、今はのぅ」

「ぬいぐるみだからね」

「お主、性格がキツくなってきておらぬか?」

「う~~~ん。お?おはよう?」エマ様が起きた。

「おはようございます」

「今日からお世話になります。エマです」と一同に向けてペコリと挨拶した。

 ちっこい女神様のお世話をすることになりそうだ。


 ウーちゃんに取り敢えずワーニーを呼んできてもらう。

 そして改めて、我が家の主要メンバーと共に情報共有だ。

 ワーニーは『無』の顔をしている。次から次へと案件が押し寄せてくるから現実逃避しているのかもしれない。

「はじめまして、あなたがルイ兄様の子孫なんですね。私の甥っ子みたいなものですね!よろしくお願いします」

「甥っ子・・・」あ、ワーニーの魂が抜けそうだ。しっかりしろ。


 結局ブラス家の親戚の女の子という設定で、我が家で預かることになった。さすがに王宮では、じゃ、誰のどういった親戚ですかって聞かれるだろうからさ。

「エマ様は子ども扱いで大丈夫なのですか?」と聞くと、ウーちゃんが言った、

「ここに、5歳児やっている大人がいるがな」反撃か?受けて立つぞ!

「まあ、神は100歳ぐらいまでは赤ちゃんあつかいじゃて」

「赤ちゃんではありません!」とエマ様は怒っている。


 使用人たちはエマ様の朝食の席を増やし、俺の部屋の隣にエマ様の部屋を準備し始めた。

「お洋服の着替えはいかがしますか?」と家政婦長のマーガレットが聞いてくる。ガイルはエマ様に、

「こちらで準備もできますが、神域から取り寄せるとかあるのでしょうか?」と聞いている。

「人間のお洋服が着てみたいわ!どうすればいいの?」と楽しそうに聞いてくる。

 母様、後はよろしくお願いします。丸投げだな。可愛いもの好きの母付執事のカルマが喜んでいるし、任せて大丈夫だろう。


 朝食を大喜びで食べたエマ様。食後は俺と、もろもろの打ち合わせ。

 ウーちゃんと呼ぶこととか、俺たちの事は秘密保持契約をした人しか知らないことなど説明。

「分かったわ!ルイ兄様は、ウーちゃんね。可愛い呼び名ね!私もエマって呼んでね。ウェルって呼んでもいい?秘密ってワクワクするわね!」とテンション高めのマシンガントーク。ちょっと疲れる。終わったら即、母様の部屋へ連れて行ってバトンタッチ。ウーちゃんと二人で、はぁ、とため息。


「エマって神様の名前呼んでいいの?あとさ、いつまでいるのかな?」と聞くと、

「エマもルイも通称じゃで、問題ない。いつまでかは・・・わからぬ。強制的に帰そうにも、今のワシは力が足りぬ。エマといい勝負じゃで」

「そうかぁ。ま、妹がもう一人できたと思うことにしよう」前向きに考えてみた。

 そして、ヤーニーがやって来た。だよねー。

 ワーニーが王宮に帰って説明したら、すっ飛んでくると思ってたよ。

「ウェル!同じ年くらいの女の子が女神様で、ウェルと一緒に暮らすってどうして!僕だって一緒がいいのに!」ヤーニー魂の叫び。だな。

 まだ午前中なのに、俺はすでにクタクタだよ。

 ヤーニーに癒されたいのに、そのヤーニーは激オコだ。シャルか?でもシャルもガールズトークとかでハイテンションだったら疲れるだけだしな。

 ウーちゃんでも抱きしめるか。片手を伸ばして、浮いているウーちゃんをむぎゅっとつかんでスリスリしてみる。

「落ち着いたかのぉ」とウーちゃん。しばらく黙っておいてくれれば落ち着いたかもしれないのに。はぁ。


「ヤーニー、エマはちょっとだけ一緒にいるんだよ。ヤーニーとはこれからもずっと、学校だって一緒だよ。楽しみだね」

 必殺、気を紛らわせる戦法。

 ニッコリ笑顔が戻って来た。よかった。ちょろい。いや、天使の笑顔。


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