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36.俺、ヘビーな話題は向いてません

「本来の標的は、シーナの息子であるお前だ。無理だったそうだが」

「そもそも、フロウルはリタが大の苦手だからな。リタが働いていると知ってウチは諦めたのかもしれないな」

「なんでリタ?」いきなり我が家のナニーが出てきた。

「リタは皇帝に両親を粛清された孤児で、離宮に使用人として入っていたんだ。元伯爵令嬢だから、幼いとはいえ身のこなしもよく、フロウルの癇に障ったんだろう。サテラとシーナは仲良くしていたようで、今もお前の家で楽しく働いているわけだ」

「伯爵令嬢だったの!?知らなかった?」

「両親の名誉回復もかねて爵位をと言ったんだが、結婚でもする時に考えると言われてな。内緒だぞ、変な男に目を付けられかねんからな」

 お口にチャック。誠実な男性にしかリタは渡しません!


「それで、サーシャ夫人が目を付けられた訳だ。サロンの他の被害者は、『パーティーでブラス家の話題が出たら、シーナを誹謗中傷しろ』という嫌がらせ程度の洗脳だった」

「折角ウェルのピアスのおかげで魔法が使えるようになって、すぐにやったことが、悪意を持って、他人の精神に干渉することだなんて」

「最低だな」

「洗脳を含め、精神に干渉する魔道は全面禁止にする。使用した場合は顔に文様が浮き出るような魔法を至急構築する。それが完成するまでは、公の建物に探知ゲートを設置する。掛けてもすぐに気づかれるとなれば、掛ける人間も出にくいだろう」


「でもさ、昨日今日魔法が使えるようになりましたって人が、急に精神に作用するような難しそうな魔法が使えるものなの?」

「お前、鋭いな。この事件はヘンテコな洗脳事件では終わっていない。彼女はこの15年ずっと呪術の研究をしていたようだ。数カ月前から呪殺を目的とした恐ろしいものに変わってきて、さすがにこれはと、諫めた使用人は男爵の名で追放されている。その男爵はその前に刺殺され、隠蔽されていた」とワーニー。


 一気にヘビーに振り切ったな。親殺しか。

 サテラ様や母様には言い難いよな。一つ屋根の下に暮らし、共に軟禁生活を乗りこえた親戚が、被害者でもあり、加害者でもある。加えて動機が自分たちへの逆恨みとは。


「呪術って可能なの?魔道とは違うもの?」

「火の玉を出して投げることができるように、悪意も出して飛ばせるのではないかと研究しているものがいるのは確かだ。そしてそういった禍々しいものを総じて『災いの呪術』といっている」

「その呪術が魔法と結びついて洗脳といった形になったのかな?」

「それは分からない。だが、『洗脳が完成したら、シーナの手でウェルリーダルを殺させることができる』と獄中で叫んでいる。シーナにはとてもじゃないが、伝えられない。そんなイメージで魔法を使っているなんて」

 ガイルの声は怒りに満ちている。

 ワーニーはそっとガイルの肩に手を置き、

「フロウルの理想のイメージはそうだったのだろう。だが実際は、ヤーニーの家庭教師の洗脳だ。『家庭教師からヤーニー』に、『ヤーニーがお前を傷つけるように』という指示を出したそうだ。複雑すぎて失敗してヘンテコなマナーを教えることになったのか、レベル3の魔法では、そもそも大それた洗脳はできないのかは分からない。いずれにしても対策は可能だ。魔法も、純粋に呪術というものがあったとしても、精神に作用する仕組みなら今回の対策で間に合うだろう」と言った。


「ヤーニーに俺を傷つけさせようとするなんて、信じられない!」

「自分の歪んだ欲求で親を殺しているんだ、もはや普通の人間と思って考えてもしょうがない」

「呪術の研究をしている者も、これを機に監視が付くことになります。まっとうな好奇心で研究しているものからすれば、いい迷惑でしょう」

「今回は被害が、これだけで済んでよかったというべきかもしれん。男爵は亡くなったが、赤の他人が被害にあう痛ましさを思えばな」


 数日後、サテラ様の体調の良い日に、母様とリタも一緒に、話を聞くことになった。探知ゲートをくぐった後、ソファに座る。

 男爵が亡くなったところまで話が及ぶと三人とも息をのんだが、比較的冷静に見えた。

「フロウルは、自分以外の人間が優しくされると、いえ、幸せそうだと感じると、それを何としても踏みにじろうとする心根の持ち主だったわ。だからこのような事件を聞いてもあまり驚きはないの」とサテラ様が言うと、母様も、

「そうね。でも自分の悪意のせいで結界に入れないからって、他の人を洗脳して手をだそうとするなんて。男爵様が止めるのも当然なのに・・・なんてことを」

 二人は手を取り合って、お互いを励ましている。

 ワーニーは、威厳を込めて発する。

「フロウルは、男爵殺害、その後の隠蔽。洗脳および、それを使った王宮侵入と行使。その他にも実際は余罪がいくつかある。それらをもって死罪となる。今後、他人の精神に干渉するものは、魔道呪術問わずいかなるものも禁止となる。実行したものは、その身に術が返り、顔に文様が刻まれる。皆は安心して過ごしてくれ」


「今後はこのようなことが起きないなら良しとしましょう。ルグラン子爵夫人はしばらく静養してもらいますが、時期をみて復帰してもらいましょう。彼女に落ち度はありませんから。ヤーニーもそれでいいですね?」

 サテラ様にそう言われて、ヤーニーはコクコク頷いている。我慢しているけど笑顔がこぼれそうだ。

 しばらく静養、ということはマナーの授業もしばらくお休みだからかな。

 ダンジョン一緒に楽しもう!俺にヘビーな展開は向いていないよ。


「ねえねえ、リタ、伯爵令嬢なんだって?変な虫が寄ってこない様に俺が注意しててあげるからね!」と言うと、リタは真っ赤になって、

「大丈夫です。お、お、お気になさらず!」とアワアワしていた。

 これは、誰か既にいるな?ウチのスタッフか?リサーチが必要だ。

 母様と目が合った。キラーンと目が光った気がする。こういうの、嫌いじゃないほうですね。一緒です。後で作戦会議を!


 あ、そうだ!サテラ様にプレゼント。ポケットから、携帯コンソメの瓶を取り出す。

「これどうぞ。栄養タップリ、コンソメスープです。お湯に溶かして飲んでね。つわりで食欲なくてもスープなら大丈夫かなと思って。ダンジョン用に作ったやつのおすそ分けです」

「これね。とっても美味しいのよ。私はモーニングティーをこちらに変えることもあるくらいなの」と母様の太鼓判もいただいた。

「ありがとう。とっても楽しみだわ。それにしても驚いたわ。ウェルは収納が使えるようになったのね!」とサテラ様。

 ??収納??

「ワーニー、収納ってなんだっけ?」

「収納は俺が名付けた魔術で、手だけを瞬間移動させるイメージで、倉庫から物を取ってこられる。自分自身を瞬間移動させて取った方が早いので、めったに使わないが、サテラはよく覚えていたな」

「最初に見た時とっても驚いたもの!」

「お前は瞬間移動できるようになったのか?」とワーニー。

「あれ?ヤーニーから聞いてないの?神ポケって名付けたんだ。ウーちゃんの神域と繋がってる、この世界が入るくらいの規模、ミラクルポケットだよ!」

「・・・ウーちゃん!」

 ワーニーがウーちゃんを探してキョロキョロしているが、今日はどこかに行ってて見かけていない。

「僕も持ってるよ!」ヤーニーはジャジャーン!とポケットから結界ポーチを出して見せている。

 あ、なんか落ち込んでる。仲間外れにした訳じゃないよ。最近忙しそうだったしな。連絡不足かな。ヤーニー、責任とって!!




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