28.俺、遊園地気分です
【カチャ】宝箱が開く。
《われはダンジョンの番人、挑戦者に死か富を与えるものなり》
声がする!どこだ?天井?誰もいない!自動音声?
周囲を警戒しながら、後退する。ワーニーは、
「宝箱、空だぞ。富を与える気あるのか?」と話しかけている。
一緒の結界にいるシェフが絶望的な顔をしている。得体のしれないものに喧嘩売るような話し方は止めような。
【ガコン!】と音がして、左右の壁から尖った鉄の棒が伸びてきた。
串刺しになるやつだ!マジか、「撤退しよう!」と叫んだが、
ワーニーが壁ごと吹っ飛ばした。えげつない威力。
あんな粉微塵になるもんなの?
宝箱が光りながら消えていく。
「「「消えてく~~~~~!!」」」
うそ~~~~!宝箱自体が宝物ってパターンでもないの!?
少し経つと、宝箱があった場所に、丸められ括られた2つの絨毯?みたいな物が現れた。
「これが宝物?」
「とりあえずこの部屋から出ませんか?」
「また何か起きたら嫌ですし」
全員で扉から外へ出る。すると、
【シュン】と階段の一番上に移動していた。
「瞬間移動できたの?」とワーニーとヤーニーに聞くと、自分たちじゃないと首を振る。
「見てください!」とリチャード。
階段が徐々に消えていってる。
「宝箱イベントか?ランダムに現れて、クリア出来ればいいものが手に入るラッキーイベントだ!」と俺は言ったが、
「陛下や、ヤーニー様のような規格外の人が一緒じゃないと死んでましたよ」
「そうなりゃ、ラッキーとか言ってらんないです」とリチャードとシェフにたしなめられた。
「まあまあ、そこは考えんでもよかろう。罠があるような階段には自信のない者は近づかなければ良いだけじゃて」
「階段の罠ですらも結構えげつなかったですよ。結界があったから無事だっただけです」とオルトニー。かなり肝が冷えたのだろう。
「番人も言っておったろぉ。死か富かじゃのぉ。作った記憶はないが、あの番人は良い事を言いよった」
「まあ、そういわれると、そうなんだろうなぁ。肉の確保に地下一階に入る者も油断すると怪我をして帰ってくる。危険な場所だが、欲しい物を手に入れる為に入る。それがダンジョンと言いたいんだろうな」とシェフが肯定する。
「ずいぶん時間が経っていると思われます。一旦出ますか?」とリチャードがワーニーに尋ねる。
「そうだな。その宝物も気になるしな。腹ごしらえして、興味のあるやつは研究所に集合だ」
かなりのスピードの結界浮遊で移動。さすがワーニー、安定感もバッチリ。階段も一気に上った。地下一階に着くと瞬間移動でそれぞれの場所に送り届けてくれた。働きものの王様万歳。
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少し早いが夕飯を用意してもらって食べた。お腹が空いていたから掻き込むように食べた。瞬間移動で気軽に帰ってくればいいと思っていたから、おやつ程度しか携帯していなかった。ダンジョンに潜るのに軽率だったな。
ヤーニーがやってきた。早っ!もう食べ終わったの?まだ研究所に行くには早いと思うなぁ。
そうだ!いいことを思いついた。
「さっきヤーニー、俺を喜ばせたくて結界浮遊に挑戦してくれただろう?すごく嬉しかったんだ。お返しにドライブに誘っちゃうよ!」
「ドライブ??それなに?」目が期待でキラキラしている。今更無理だったら格好悪いな。
大丈夫。出来る!ティーカップが出来たんだから!
しっかりイメージして。えぃ!
出来た。格好いいオープンカーをイメージしたけど、なんか、遊園地のゴーカートっぽい。なんでだ?運転席が2個あるからかな?まあいいや。
「乗って!」乗り込んでハンドルを握る。
「前世の乗り物を真似して作ったんだ。本物はここを持って回すと進行方向が変わるんだけど、これは形だけ。雰囲気はでてると思う。それでは、今日2度目のアトラクション、出発~~!」
上手く飛べてる。敷地の中を、上下左右、ジェットコースターのように緩急を付けながら飛んでいく。一言で言って最高!ヤーニーもめっちゃ楽しそうだ!
でもこれは、皆が出来るようになったら追突事故とかおこるかな。法整備が必要か?要相談だな。
下を見ると、使用人に混ざって、ガイルと母様とシャルロッテも口をパカーンとして見ている。
「ヤーニー皆が見てるよ!手を振って!」「お~い!」
しっかりと堪能して、着陸。
「にいたま。お空すごい。すご~~い。シャルもお空!」とせがまれた。
1人で座らせるのは不安なので、ワンボックスカーサイズに変更。
ガイルに後部座席に座ってもらって、膝の上に。隣に母様も。
危ないから立ち上がらない。母様は床が透明だから立つとスカートの中が見えちゃうよ。と注意事項を伝えて、
「それではまたまた、出発~~~!」人数が増えたので安全運転を心掛けました。
「もっとビューーンちて!」と言うスピード狂?の妹の為に、仕方なくキッズ用ジェットコースターくらいのスピードで上下左右してみた。大好評。
これは、しばらくは俺の顔を見たら「ビューンちて」って言われるな。
研究所に集まろうとしていたメンバーも見上げて驚いている。今日の今日でこの使い方。ヨロヨロ運転から、アトラクションへ。ふり幅がすごいよな。
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研究所には一緒に冒険したメンバーとガイル、オラスル魔道開発局局長、11人が集まった。ワーニーがザっと今日の報告をした。
そして、お待ちかね。宝物の検証だ。
「凶悪な罠がある場所には、いい宝物がある!といいな」と俺が言うと。ヤーニーも
「楽しみだね!」と頷きながら言った。
「では、広げてみるぞ、危険があるかもしれん。各々結界を張るように」とワーニー。
2つあるうちの一つを広げる。絨毯というよりはヨガマットくらいの厚み、1mくらいの正方形の敷物?タペストリー?だった。黒地に白で大きく円が描かれていて、その中にドラゴンが右向きに描かれている。西洋竜の方のドラゴンだ。翼があるやつ。
もう一枚も広げるが、ドラゴンの向きが逆なだけで全く同じものだった。
「なにこれ?魔獣の絵?飾るの?」とヤーニーが聞いているが、誰も答えられなかった。どうやら、何か分からなし、何が描いてあるかも分からないようだ。
ドラゴンは見たことないんだな。いや、俺もないが。想像上の生き物として知ってはいる。この世界にはそれもないようだ。
ウーちゃんを見ると、「ハッ!」としている。これは、心当たりがあるな。
吐かせよう。