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15.俺、絶賛誘拐され中

 ヤーニーは超ご機嫌だ。俺をさらってきて一人占め。ニコニコしてて可愛い。

 けど、犯罪です。


 どうしたもんか。しばらくピクニックの予定など楽しい話をして、改めて帰ろうって切り出すと、

「うぇう、ウサギさんかしてあげる」とか、

「うぇう、積み木する?」

「うぇう、かくれんぼする?」と、

 ヤーニーが全力で接待してくれる。帰ろうって言って欲しくないんだなぁ。魔術の天才ってだけじゃなく、知能も天才なのでは?


 それにしても予想に反してワーニーが迎えに来ない。ワーニーは探知の魔術が使えるって言ってなかった?聞き違いかな?気配察知だったっけ?

 いずれにしてもヤーニーの行動範囲なんて限られている。その場所を総当たりしていけばここにたどり着くだろう。


 はぁ、お腹すいてきた。戸棚のクッキー食べたいなって手が届かないか。椅子を引っ張ってきても、無理だな。俺まだまだ小さいからな。

魔法はどうだ?テレポーテーション的なやつ出来ないかな?手のひらを向けて、「クッキーこい!」とか言ってみる。何も起こらない。くすん。

 ヤーニーと目が合う。

「クッキーいる?」って聞かれたので、うんって答えた。

 するとヤーニーは浮かび上がってクッキーを取ってくれた。

「どぞ」

「ありがとう」ってか、今の浮遊ってやつだよね。もうヤーニーって何でもありなんだな。遠い目。

 クッキーを引き寄せるんじゃなくて、自分が浮かぶって、将来脳筋になる気配を感じるよ。

まぁ、もうこの際だ、派手に魔術も魔法も使ったほうがワーニーに見つけてもらいやすいかもしれない。

 ドンドン使ってみよう!

 

まずは飲み物。「ヤーニー、グラスも取って」

 そして、お水をいれます。湧水の魔法、これは俺にも出来る。自分の指から飲料水が出るのシュールだ。でも楽しいから好き。

 そして、ヤーニーに氷結で凍らせてもらえれば冷たい飲み物が飲めるはず!

 さっき聞いたワーニー独自の魔術を考察するに、ほぼやりたいって思ったことが勝手に出来てる感じだ。天才恐るべし。とすれば、凡人みたいに、〇〇の魔術を使うぞ!と型に当てはめなくてもイメージ出来れば使えるはず。

 ん?イメージ。『魔法はイメージが大事』ってアニメの主人公が言ってたな。今の俺は魔法が使える、俺にもワンチャンあるのか!?


「ヤーニー、一緒に氷を作ってみよう!」

「こおり?」

「あ、氷が分からないか、じゃあ、目の前の、この辺に、ヤーニーの手に乗るくらいの水のボールを浮かせてくれる?」おぉ。すぐに出来るんだ。

「これの、温度を下げていくと氷になるんだけど、まず、俺がやってみるね」

「氷結!・・ダメか。凍れ!・・これもダメ。固まれ!あ!出来た?」

 ヤーニーが触ろうとする。

「ちょっと待って、危ないかもしれないから」恐る恐る触ってみる。冷たい。手にもって見ると氷だ。水って固まると氷になるのか?冷やす工程っていらないんだ?まあいい。出来た!グラスに入れて、次だ。


「ヤーニーもやってみて!今度は俺が水のボールを・・・浮かすってどうするの?」

 グラスのまま凍らせたら割れちゃうよ、きっと。いや、イメージだ。フワッてするイメージ。ブランコの内臓置いてけぼりの一瞬だ。

 手のひらから水を出して、浮く水のボールを作る。あれ?なんか浮く気がしない。

 ヤーニーなんで出来たんだ?

「もう一回水のボール浮かせてみて!」よく観察してみよう。

「これってどうやって浮かせてるの?」風魔術で飛ばしているようには見えない。

「んっとね。ぐーって引っ張られるのをナイナイするんだよ」無重力じゃなくて反発力のイメージかな?

「えっと、ちなみに戸棚の物を取るとき浮いたよね。あれもナイナイってした感じ?」ついでに聞いてみる。

「そうだよ。足の下のところ、たくさんナイナイってすると、ビューンってお空に行っちゃうよ。だから父様はひとりで浮くのダメって。うぇう、ふたりでやってみる?」キラキラした目で見てくる。

「それは楽しそうだけど、ワーニーがいるところでやろうね」

 さて、水のボール、もう一度やってみよう。


 ・・・引っ張られるのをナイナイ。って、そもそも引っ張られる感じがしないから。何度も失敗していると床がびちゃびちゃ。

ヤーニーが魔術で乾かしてくれた。俺のほうが面倒を見られてる。そして氷の入ったグラスを差し出される。休憩だ。ヤーニーのグラスにも入っている。自分でやっちゃったのね。トホホ。

 でも、魔力なしと諦めていた時より遥かに楽しい。どうせ迎えが来るまで暇なんだ練習しよう。

 俺の魔法は、俺の髪を使って行使する皆のと違って、木をなぎ倒すくらい大きい規模の魔法も使える。だから、出来るかなぁって思ったけど、甘くないな。


 何度も失敗。さっき言ってた仮定が頭をよぎる。魔法は上級までしか使えないのかもってやつ。でもなぁ。その区分だって仮定だし。

 そもそも分類でさえ怪しいしな。あんなこと言って研究室の二人、気を悪くしちゃったかな。

今回俺が氷を作れたのだって、二人からしたら徒労感を覚えるものかもしれない。


 よし!決めた、うだうだ考えない。出来ることはできる。出来ないことは出来ない。俺の頭で考えたって仕方ない。『あとはこいつらがやるだろう』ってワーニーが部下に丸投げしていたのを踏襲しよう。


 ドンドンドンッ!ドンドンドンッ!

「ヤーニー!開けなさい!」あ、ワーニーが来た!

何事?ヤーニーが結界張ってるの?しかもワーニーが開けられないような!?


「ヤーニーお迎えが来たよ。今日はもう帰ろう。楽しかったからまた来ようね!」と言ったが、ヤーニーは納得できなかったようだ。


 俺の手をつかむと【シュン】

 またかよ~~~~!!!さすがにそろそろ帰りたいよ~。

 しかもここ好きじゃない。地下の鍾乳洞。


「ヤーニー!ここはあんまり好きじゃないし、今日はもうお家に帰りたい!」ときっぱり言った。そして歩き出す。右か左かは分からないが、光の道を進めば王宮か自宅に着くはずだ。

「うぇぇっうぇぇぇぇぇぇん!」ヤーニーが泣き出した。でもここは心を鬼にするべき時だろう。

「泣いてもダメ!」と怒ったその時、


「懐かしい気配と、ワシの復活を阻んだものの気配がするのぅ」と不気味な声が響いてきた。

 絶対ダメなやつだ。逃げなきゃ!ヤーニーのところまで戻ろうと走り始める。ヤーニーはまだ泣いている、そして黒い靄に包まれ始める。

「ヤーニー!!!!」駆け寄って抱きしめる。

「結界!浄化!」靄が消えない!

 ヤーニーの体の中に靄が入っていっちゃう。

「浄化!浄化!浄化ッ!」

 ヤーニーの体から力が抜けて俺の腕の中で重くなる。

「ヤーニー!!!!!!」




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