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元転移者の俺が今度は転生してきました 改めましてよろしく  作者: グーグー


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116.俺、慈愛の天使を発見しました

 シャルのお披露目会前日。俺は家に帰ってきた。

 物語の世界に上手く、パーティー会場がはまっている。俺が思い付きでポンポンお気軽に出したアイデアも、採用されていて、皆の頑張りに目を見張った。


 エントランス付近は王城風。ミミーが生まれた時の王都の祝賀を表現している。ウキウキで、キラキラって感じ。会場までの通路には、物語を知らない人の為に、挿絵のパネルを置いて最低限の知識を提供している。これの為に作家先生に連絡を取って使用許可を取ったんだ。優しい人で良かったよ。因みにパーティーにも招待しておいた。来てくれるかな?


 そして、中庭のガゼボ付近は、苦労した子ども時代の厨房風だ。下働きで使うキッチンアイテムが、使いかけになって置かれていたりと、小技もきかせている。ここは子ども達用のエリアなので、たっぷりと遊び心をきかせている。


 大人が集うサンルームエリアは、父王が迎えに来て、王女と認められる感動のフィナーレ、その後のお披露目会の華やかさが表現されている。

 エントランスに置いてある飴の小瓶がピカピカだったのとは対照的に、ここに飾られている小瓶は、リボンがヨレヨレになっていて、小瓶も少し曇っている。

 いいね。狙い通りだ。時間経過とミミーの苦労がこれだけで表現できている。


 大絶賛すると、トムじいやマーガレットが、本番は明日だが、もうやり切った感をだしていた。

 シャルや母様は、招待客の最後の確認や、最新情報のすり合わせなどで、ピリピリしていた。俺も、今から参加だ。気が重いが仕方がない、ホスト側の宿命だ。


 名簿を見ながら、俺は自分の時のお披露目会を思い出した。

 あの時仲良くなって以来、ダンジョンに、冒険者登録、飛び級まで付き合ってくれている男子会メンバー。本当にありがたい。

 シャルもそんな大事な友達が出来るといいな。

 デイブの妹のルイーザが同じ年なので、当然招待リストにも入っている。時々俺達の中でも話題に上るけど、デイブは身内なので、結構辛口だ。

 温泉に招待した時にちょっと見かけたくらいだが、小動物っぽい雰囲気だった気がする。父親のトリアス伯爵はガイルの部下だし、シャルの為にも気が合うといいな。


「いい、シャル、女の世界は、笑顔の裏側にあるのよ。笑顔を絶やさず、状況を把握して、押すか引くか見極めるのよ」と母様が言っている。

 おいおい、5歳児になんてことを教えているんだ。と思ったが、これがこの世界の常識なら、仕方がない?のか?


 *******


 そして、当日。5歳の子ども達とその親と兄姉が続々とやってくる。

 シャルのお披露目会は、父ガイルの宰相というポジションと、ヤーニー王子殿下のいとこ、という生まれの為、かなりの規模だ。


「「「きゃーーーー!!」」」と言う歓声が聞こえる。今日何回聞いただろう。女の子は皆、マナーを徹底的に学んで参加しているだろうに。

 あ、女の子だけじゃないか、保護者の母親まで一緒になって大興奮しているからな。

 取り残された感のある父親たちのために、俺はパネルの前で、物語の解説を始めた。会場に散りばめられた隠しアイテムなんかもこっそり教えてあげたので、奥様や子どもに披露して、名誉挽回してもらおう。


 しばらくすると、家令のジョージが、作家先生の来訪を知らせてくれた。

 早速会場を案内して回る。

 笑顔がチャーミングな年配の女性で、

「まあまあ、こんなに素敵に!私の世界がここにあるわ!」と喜んでくれた。

 ホッとした。自分の作品だからか、作家という職業だからか、細かい所にも気づいてくれて、

「今にもミミーがどこかから飛び出してきそうね。本当に素敵なものを見せてくれてありがとう!」とお礼まで言ってくれた。


 食事もしていって欲しいと誘ったが、遠慮されてしまった。

 お見送りの玄関で、お土産の小瓶を渡すと、

「なんてこと、こんなに嬉しい事は初めてよ!」と涙しながら、小瓶を大事そうに胸に抱き、帰って行った。


 素敵な人だったなぁ。母様の怖~い、女の世界の話を聞いていたので、そのギャップでコロッとやられそうだ。ハッ、これが作戦か!?って、8歳相手に男女の駆け引きするおば様が居る訳ないな。被害妄想だ。


 シャルは、立派に、檀上での挨拶をやり遂げた。その後の挨拶周りも難なくこなし、今は子どもエリアでおしゃべりをしている。俺はもう一度、素敵な友達が出来ますようにと心の中で祈っておいた。


 お別れの前に、シャルと俺で、一家族に一つずつ飴の小瓶を手渡していく。代表して、今日のメインの招待客である5歳の子どもが受け取ってくれる。

「ありがとうございます!素敵過ぎて食べられそうにないわ!」という感想が大半だった。

「食べ物だからね。食べた後に綺麗に洗って、ガラスのビーズとか、綺麗な石とか貝柄とかを入れるといいかもしれないよ」とアドバイスしておいた。


 物語に興味のない男の子もいて、その子は当然、全てのものに無感動だったが、貰った小瓶を雑に扱った瞬間、母親に拉致されていった。その後、母親が大事そうに小瓶を抱えていたので、物語のファンだったのだろう。デリケートに扱わない息子に、割られる前に回収したこの母親は素晴らしい慧眼の持ち主だ。

 この後、別の男の子は振り回して割ってしまったのだが、その傍らには、がっくりと項垂れたその子の母親が佇んでいたのだから。


 慈愛の笑みで予備の小瓶を差し出したシャルが天使に見えた。

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