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元転移者の俺が今度は転生してきました 改めましてよろしく  作者: グーグー


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105/123

105.俺、ヒッコヨに入国しました

 港の屋台で竹輪を買って、近くの市場でキュウリもゲット。神ポケに入っていたチーズも出す。チーズはシャルの好物なので美味しそうなものを見かけたら速攻で入手してストックしているんだ。

 後は切って詰めるだけ。結界とかまいたちで、ササっとやっちゃう。きゅうり、チーズ、そして両方を詰めたものを作って振る舞った。

「俺の前世の好物だよ。食べてみて!」

「ウェルの世界にもすり身焼きがあったの?」とグレッグ。

「そうだよ。同じ味だよ。この形のものは竹輪って呼んでたけどね。俺のイチオシはきゅうり詰め。でも他にも色々詰める人が多くって、人によって推しが違うんだよ。グレッグは何が好き?」

「何かを詰めて食べるのは初めてなので、今、頂いてみます」と言って食べ始めた。


「美味しいね~俺はチーズ派だな」と言ってパクパク食べているのはデイブ。

「僕はきゅうり!」「私もです」とヤーニーとキリアル。きゅうり同盟へようこそ。キリアルは髪が緑色だからチームカラーっぽくていいかも。なんてアホな事を考えていた。

「これはいいな。他の物でも美味しいのか?」と聞いてくるのはワーニーだ。

「そうだね。色々試すのも面白いと思うよ。ビール飲みたくなっちゃうけどね」

「確かに!そうだな、買ってくるか」と市場をうろつく王様。自由だ。


 真剣な顔で食べ比べていたグレッグは、

「僕は両方入っているのが好きですね。これは名物にしてもいいですか?」と言っている。前世のどなたか、考えた人に心の中でお礼を言って使わせてもらって。

「きゅうりは、すぐに食べるならいいけど、生野菜だから扱いが難しいよ。売り方にもよるだろうけど、チーズだけが無難かなぁ」

「なるほど、いくつか課題がありそうですね。帰ったらシュウじいに相談してみよう」


 領地経営のことまでしっかり考えていて偉いね。まだ8歳だよ。

「男子会のメンバーは、ウェル様とヤーニー様を見て育っているので、基準がちょっとズレていますよね」

「そうですね。名物を考える8歳って」とリチャードとフランツは言っている。

 またシュウじいが、お小さいのに何て立派な、って泣いちゃうよねぇ。


「ウェル様の場合、今更『普通』を押し出していくのは無理でしょうねぇ」

「そうですね。ヤーニー様の場合はワンチャン、黙っていればいけるかもしれませんが」とコソコソ話している。

 おいそこ。聞こえているぞ。それに俺だって、黙っていればワンチャンどころじゃなく、普通だよ!


 そうこうしているうちに、ワーニーがビールを買って帰って来た。

 一口だけでいいからカモーン!ビール!と飲ませてもらったが、まずかった。

 この世界のビールがまずいのか?俺の舌が8歳なのが原因か?後、数年たたないと答えが出ない、棚上げの問題となった。

 ちなみにこの世界にはアルコールに年齢制限はない。パーティーで、子ども用のテーブルにはアルコールが置かれていないので、大人の飲み物という認識はあるだろう。

 俺の体と舌が、早く大人になりますように。


 *******


 バイナン侯爵家総出で歓待されて、優雅に一泊した後は国境に向けて出発だ。

 ワーニーは昨日のうちに帰っているので、団長だけをまずは王宮に送り届けた。

 国境は昨日来たばかりなので、出国はスムーズだ。


 ヒッコヨ王国入国も事前連絡が入っているようで、お役人さんに、

「国内を自由に移動してくださって構いませんが、出来ればまずは王宮にお越しくださいと、陛下より伝言を承っております」と、言われた。


 それじゃあ、まずは王宮だなとカモノハシ号でぶっ飛ばした。

 30分ちょっとくらいで到着だ。ワーニーに連絡を取って、一緒に挨拶に行こうとすると、昼過ぎまで時間が取れなくなったと言われた。

 仕方がないので、門番に昼過ぎに訪問することを告げる。王都をぶらぶらして時間をつぶすことにしよう。


「あれは何でしょうか?」とキリアルが指をさす。

 不思議なお面が入り口に並んでいる小さな天幕がある。いや不思議というより、不気味か。リチャードに尋ねると、

「あれは、恐らくハルハルというお面だと思います。呪術に使っていたものだと聞いたことがあります」

「この国独自なものなの?」

「私が知っている限りでは、トリトロ火山付近の少数民族の物だったと思いますが。『占い』と看板が出ています。入ってみますか?」

「面白そうだよ。入ってみようよ」とヤーニーが誘ってくる。


 この世界の少数民族というのは、違う言語を使う者の事だ。

 同じ言語で、同じ神様を崇める、という特殊なこの世界だけど、いくつかの例外が存在していて、少数民族と言われる人は、その例外だ。


 ウーちゃんに、何でそんな風に例外が存在するの?と聞くと、

「大昔から、ワシが創った世界じゃと言うても、そんな訳はないという者がおってのぉ。かといって、それならば排除するというものでも無かろうと思うて放置しておるのじゃ。まあ、じゃが、千年ほど前に、あまりにも目に余る振る舞いをするようになって粛清はしたがのぉ」

「目に余るとは、どのような事か聞いてもよろしいですか?」とリチャード。

「自分達こそが、この世界を創った者だから、人の生死も自分たちが操れると言って、密かに神官を殺して回っておってのぉ。そして、自分達に歯向かった為の天罰じゃと触れ回ったのじゃ」

 酷いことをするな。それで粛清されたのか。自業自得だな。


「言葉が違うのは、その時に独自路線を歩んだ名残というわけですか?」とグレッグ。

「そうじゃ。わざわざ、独自言語を開発しておった」

「凄い執念だな。天幕の中の人も、少数民族の人かな?」

「どうでしょうか?雰囲気を出すためのただの装飾という可能性もありますよ」


 俺達は、千年前の神官殺しの話を聞いた直後なので、かなりドキドキしながら、天幕に足を踏み入れた。

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