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アポカリプス ~ 神道界と魔法界の戦い ~  作者: 千代田 昌子
第2章 遼習院中等部編
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短話 音楽の時間 燈子視点

木曜日の4時間目は音楽の授業。私は利律子ちゃんと一緒に、音楽教室に行きました。


音楽教室は他の教室よりも広くて、普通に机が並んでいるスペースと、グランドピアノの前に、並んで歌うスペースがあります。今日は机が並んでいるスペースなので、私は利律子ちゃんのすぐ後ろでした。


森永先生がチャイムと同時に入って来て、教壇に着くと、


「皆さん、ごきげんよう。」と挨拶があり、みんなで「ごきげんよう。」と挨拶をします。


入学式の後の二度目の音楽なので、だいぶ雰囲気もわかるし、何気なく授業が始まったのだけど。


「では水織さん。歌を作る課題をお願いしていましたが、早速披露していただけますか。」そう言うと、自分の椅子に座って、今か今かと楽しみにしているように、胸の前で手を合わせていました。何この先生。少女か?


森永先生は最初の音楽の時間で、


「私は毎回音楽の時間に、皆さんに順番に歌を作ってもらいます。それを披露していただいてから、音楽の授業に入ります。」


って、確か言ってた。早速、利律子ちゃんかよ~。


「えっ。」そう言って、利律子ちゃんは口を小さくぽかんと開けて、固まっていました。


「利律子ちゃん、大丈夫?」と聞いてみると、


「私、聞いていないよ。」と私の方を向いて小さい声で利律子ちゃんが言います。


そうしたら、きなり衛子ちゃんが、


「私、伝えたわよね。」って言ってきました。


利律子ちゃんは、「あれ~?私、忘れてたのかな?」と言って、少し首を傾げて固まっていましたが、急に右手を上げて、


「先生、下手ですけど、歌います。ここでですか?」と尋ねました。


「では前に来てください。まぁ。楽しみですね。」そう言って、森永先生はにっこりとほほ笑みます。


利律子ちゃんは何だかぶつぶつと、


「典子さんのは発売されたから、歌うならイブのしかないなぁ。少し忘れちゃったなぁ。」と言いながら、さっと前に進んで行きました。


「歌は下手ですけど・・・。」と利律子ちゃんが言うと、先生が、


「うまい下手は気にしないでくださいね。心から溢れてくる気持ちを歌や曲に移し替えるという、音楽の基本となることを、是非皆さんに身に付けてほしいと思っています。」と言いました。


「題は、イブの囁きです。」


すぅーーっと息を吸うと、利律子ちゃんは少し困った表情で歌い出しました。




「美しい人よ、おいで。優しい人よ、おいで。全てを、あなたに与えよう。」

それは少し低い声でした。


次には普通に女の子の声で、


「何処からか 聞こえる 囁きが 全てを包み込み 安らぎを下さる

 慈しみの 波が 押し寄せて 目の前の全てに 幸せが溢れる。」 


私は、「慈しみの波が押し寄せる」というところで、少し鳥肌が立ちました。とても綺麗な表現だと思いました。


同じタイミングで何人かが、「何?このきれいな景色は。」と呟いていました。


また利律子ちゃんは少し低い声で、

「光あれ 世を照らせ 水よ命の 糧となれ 愛しい人を 形どり 

 産めよ増えよ 地に栄よ 幸せよ 永遠とわに。」 


「これは、聖書の一説かしら?」、「なんだか素敵ね。」と小さな声で言っている人がいました。


「何処からか 聞こえる 囁きが 髪を撫でるように 頬を包むように

 命を頂いて 生きている 私のそばに来て お姿を見させて。」


「見えもせぬ 触れもせぬ ただ生きよ 永遠とわに

 私のために 我が喜びよ 我が幸せよ。」



「以上です。」利律子ちゃんはペコリと頭を下げて、先生の方を見ていました。


森永先生は、さっと立ち上がると、ぱちぱちと拍手をして、


「素晴らしいですね!なんて素敵な歌なんでしょう!何とも言えないオレンジ色の空。大きな木から、まるで円が広がっていくように鮮やかな花が咲き乱れる様子が伝わってきましたよ。鳥肌が立ちました。」


「私も。」、「僕も。」


あ。そうだった。


このクラスは古神道のクラス。利律子ちゃんがが歌っている時に、神力の強い他の人達は、花が咲き広がる様子が見えて、その景色の美しさに鳥肌が立って、うっすら涙を浮かべてる人もいるみたい。


「私だけ、見えてないのよね。」私は心の中で呟きました。


森永先生は、「どういう経緯でその歌を作ったのですか?」と利律子ちゃんに質問していました。


利律子ちゃんは、「夢でイブが歌っている様子を見たので。」とだけ言いました。



だけど、ちょっとおかしいのよね。あの利律子ちゃんの驚き様は。聞いてなかったんじゃない?


確か衛子ちゃんて、小学校の時イジメしてるって噂なかったっけ。私は神道のクラスじゃなかったから、噂だけ聞いたんだよね。


音楽の授業が終わって教室に戻る時に、衛子ちゃんが近くに居たので、私は衛子ちゃんに、


「ねえ、衛子ちゃん、本当に利律子ちゃんにちゃんと伝えたの?」


と聞くと、衛子ちゃんは最初ぎょっとして、瞳だけ私の方を見て、その後ぱっとこっちを向いて、


「私ね、伝えたのよ。あ、でも、はっきり伝えてなかったかも。」


とか訳の分からない事を言い出した。何?今の目つき。これは伝えてないな。この子。


利律子ちゃんが遅れてやってきて、


「もう恥ずかしかったよー。」と言うと、衛子ちゃんは隙を見せずに、


「とっても上手だった!凄いね。」とにっこりと満面の笑顔で言ったの。利律子ちゃんはもう何もなかったかのように、嬉しそうに、


「ありがとう!うれしいよ。えへへへ。」って言ってる。利律子ちゃん、無頓着すぎ!


藤原衛子。将来の奥州藤原の女当主か。こいつ、マジ要注意だな。

 

でも私は、利律子ちゃんの歌を聞いて、「歌を作るって素敵かも。」そう思うようになりました。それから私は、作曲に興味を持つようになりました。


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