89. side リオネル
レティシアの様子がおかしい…。
抱き締めると腕の中で眠ってしまった。
馴れない剣術の試合の観戦で緊張して疲れているだけなら良いのだけど…。
レティシアは魔力が少ない為、魔障を受けると体力の消耗が激しい。
呪いをかけられている時も、ほとんど眠っていた。
レティシアのペンダントに触れてみるけど特に異常は感じない。
顔色も悪くはない。
気のせいなら良いのだけど……。
少し様子を見たいと母上に頼むとすぐにランベール家へ連絡を入れてくれた。
俺の腕の中で可愛く寝息をたてているレティシアは時折、幸せそうに頬を緩ませる。
何の夢を見ているのだろう…。
君の世界に俺は存在しているのかな…?
眠る彼女に魔力を込めて口付けを落とすと、ゆっくりと目蓋を開いた。
数回、瞬きをして辺りを見渡すと、ほんのりピンク色をしていた頬が、みるみる赤く染まっていく。
「あまりにも気持ち良さそうに寝ていたから起こすのが可哀想で……」
「も、申し訳ありません!!すぐに帰ります!!」
慌てて俺の腕の中から出ていこうとするレティシアを強く抱き締めた。
「レティシア大丈夫だよ。母上が今日は家に泊めると連絡を入れたから」
キョトンとした顔が可愛くて、もう一度抱き締めた。
疲れているレティシアをメイドに託すと少し探りを入れてみる。
何の痕跡も感じられない……。
やはり気のせいだろうか。
そっと息を吐くとレティシアの部屋から物音がした。
彼女の部屋とは続き部屋になっていて内ドアがある。
ノックをしても返事がない。
ゆっくりとドアを開けるとレティシアはバルコニーへ出ているようでレースのカーテンが風にそよいでる。
星空を見つめているレティシアの瞳をそっと塞ぐ。
「リオネル様……?」
「あまり星空を見ていると夜の王に魅入られてしまうよ?」
レティシアは何処か儚げで、この夜に溶けてしまいそうで腕の中に閉じ込めた。
「起こしてしまいましたか?」
「いや、眠れなくて起きてた」
「それなら一緒に星を見ませんか?リオネル様が一緒なら夜の王様が来ても怖くないです」
柔らかく微笑むレティシアが眩しくて胸が苦しくなる。
俺は、息もできないほど君に恋い焦がれているよ。




