78.side リアム
別に報告書なんていつでも良かった。
ただダイアナを連れ去る理由が欲しかった。
今回ほど会場警備をしている事を恨めしいと思った事はない。
ダイアナが一人で会場に現れた時はホッと胸を撫で下ろした。
まだ婚約はしていないと言っていたが美しい彼女をエスコートしたいと思う男は五万と居るだろう…。
黙々と報告書を書いているとダイアナが浮かない表情をしている事に気付いた。
「ダイアナは踊らなくて良いのか?」
こんな所に連れて来て聞く事では無いかもしれないが彼女はまだ一曲も踊ってはいない。
「踊る相手が居ませんので……」
ダイアナは目を伏せた。
「誘いを断っているように見えたが?」
実際ダイアナは何人もの誘いを断り続けていた。
「…ダンスが苦手なので、知らない人とは踊りたく無いのです…」
そっとダイアナの手を取ると驚きながらも黙って付いてきた。
「知っている人間となら踊れるだろう?」
フロアの片隅でダンスを申し込むとダイアナは小さく頷き手を握り返してきた。
ダンスが苦手だと言っていたがダイアナのステップは見事なものだった。
フロアの片隅でもダイアナに視線が集まるのが分かる。
「とても苦手には見えないが?」
「リアム様がお上手だから…」
そんな事はない。
俺はダンスを誉められた事など一度もない。
「リアム様と踊るの楽しいです」
頬を赤らめて微笑むダイアナは可愛くて誰にも見せたくない。
曲が終わるとすぐにダイアナを連れて会場を後にした。
「リ、リアム様…?」
他の男と踊る姿を見たくなくて咄嗟に会場から連れ出してしまった。
「すまない、ダイアナ…」
「リアム様?」
ダイアナは孤児院に居た時から可愛かったが貴族のマナーを身に付けて見違えるほど美しくなった。
「お前が困るのは分かっているのだが…言わせてほしい…」
ダイアナは困惑した様子で俺を見つめている。
「俺はお前の事が好きだ」
ダイアナの大きな瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「すまないダイアナ…泣かせるつもりは無かったんだ。ただ知っていて欲しくて…」
ポロポロ涙を溢すダイアナにどうして良いのか分からず困っていると…。
「…リアム様、私も…リアム様が、好きです…」
「ダイアナ?」
「孤児院に居た時から…ずっと…リアム様が好きです」
「本当に?」
頷くダイアナが可愛くて思わず抱き締めるとダイアナも抱き締め返してきた。
*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*ー*
「先輩、リアム先輩のアレ良いんですか?」
「気付かないふりしとけ」
「しかもあの子、この間の美少女ちゃんじゃないですか?」
「あの子はリアムが長年思い続けてきた子だから諦めろ」
「へー、リアム先輩って意外と一途なんですねー」




