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夜会会場に入ると皆の視線が集まる。
前回同様ビビってます。
一部の令嬢から鋭い視線が突き刺さる。
魔法科では、まだ私の良くない噂が消えていないらしい。
「大丈夫だよ」
リオネル様がぎゅっと手を握りしめてきたのでにっこり笑って返した。
「やぁリオネルにレティシア嬢」
王太子殿下が来るとリオネル様が私の腰を抱き寄せる。
「レティシア嬢、元気になったようで良かった」
「御心配をお掛け致しました」
「後で私とも一曲踊っていただけるかな?」
思わずリオネル様を見ると不機嫌そうに「一曲だけなら…」と溜め息混じりに答えた。
「ありがとう。では後で…」
音楽が流れ出すとリオネル様に手を引かれてフロアに出た。
皆の視線を感じたけど踊り出すと周りの事はすぐに気にならなくなった。
リオネル様と一緒に踊るのは楽しい。
幼い時から一緒に踊っているからお互いの呼吸もよく分かる。
自然と笑みも溢れてくる。
昔は同じくらいの高さだったのに、いつの間にか見上げるようになったリオネル様の瞳と視線が重なる。
「どうしたの?」
「昔は同じくらいの高さだったのにと思って…リオネル様は、どんどん素敵になっていきますね」
ちょうど曲が終わったタイミングでリオネル様が私の手を握りしめた。
「もう一曲続けて踊ってもかまわないかな?」
「もちろんですわ」
二曲続けて踊れるのは夫婦や婚約者など親しい間柄の相手だけ。
「うふふ」
「レティシア?」
「リオネル様と続けて踊れるのが嬉しくて」
リオネル様の頬が少し赤く染まった。
きっと私の頬も赤く染まってる。
このままずっとリオネル様と踊っていられたら良いのに…。
曲が終わると王太子殿下が私の元へ来た。
「リオネル、彼女をお借りするよ」
差し出された手に軽く手を重ねると急に緊張が走る。
「そんなに怯えなくても大丈夫だよ」
殿下が可笑しそうに笑う。
殿下と踊る曲は、わりと簡単なステップの物だった。
良かった。難しい曲なら緊張で足がもつれてしまう所だった。
「リオネルと踊っている時はとても楽しそうだったのに私とは楽しくない?」
「緊張してしまって…」
「そんなに緊張しないで」
それはムリです。
足を踏んでしまったらどうしようと考えるとガチガチになってしまう。
少しぎこちなかったかもしれないけど何とか踊り終えると殿下は私の瞳をじっと見つめてきた。
「レティシア嬢…また誘ってもかまわないかな?」
えっと、どうしよう?
王太子殿下の誘いを断るのは不敬になるのかしら?
小さく頷くと殿下がホッと息を吐いた。
「断られたらどうしようかと思った」
「殿下、そろそろ私の婚約者を返していただいてもかまわないでしょうか?」
誤字報告ありがとうございました。




