58. side リオネル 2
カリーナ嬢の自宅捜索の日は王太子殿下とクリスそれにダニエルも付いて来た。
めんどくさい事はすべて殿下にやらせた。
一悶着あったが何とか屋敷の中へは入れた。
「これは何の騒ぎですか?」
当主が青い顔で飛んで来る。
王太子殿下が騎士団を引き連れて屋敷に乗り込んできたのだから当然の反応だけど今はそれどころではない。
「カリーナ嬢に逢わせて下さい」
「娘は今、体調を崩しております…」
「では、カリーナ嬢にリオネル・ルグランが逢いに来たと伝えて下さい」
応接室で待たされていると青白い顔をしたカリーナ嬢が貴族令嬢らしい立ち振る舞いで表れた。
「お待たせ致しました」
彼女の手首に目をやると包帯が巻かれている。
うまく隠しているつもりでもレティシアを蝕んだ黒い靄が滲んでいる。
「カリーナ嬢、その包帯を外して頂けますか?」
彼女は、さっと手首を隠すと包帯を外すのを拒んだ。
「ダニエル」
「はいはーい、カリーナ嬢ちょっと失礼」
ダニエルは容赦無く彼女の手首に手を伸ばし何重にも巻かれている包帯を器用に外した。
「や、やめてください」
弱々しく抵抗する彼女を守るように彼女の父親である公爵がダニエルを止めようとするとそれをクリスが拒んだ。
「公爵…お話が」
クリスが公爵に耳打ちするとさっと青ざめその場に崩れ落ちた。
「これが禁術のアイテム……?」
包帯を外しきると彼女の手首にガッチリと嵌まるブレスレットが露になった。
「殿下、近付いてはいけません」
カリーナ嬢に近付こうとする殿下をクリスが止める。
ブレスレットからは黒い靄が溢れている。
「カリーナ嬢、貴女にはランベール家の令嬢を禁術を用いて呪った容疑がかけられている」
ダニエルがブレスレットを外そうと試みるが隙間すら無く外せそうにない。
「苦しいでしょう?貴女の呪いは何十倍にもなって貴女に返ってきている。術を解くなら早くした方が良い」
「外せないのです…」
やっと口を開いたカリーナ嬢は弱々しく告げた。
「そのブレスレットは今も貴女の魔力を吸っている。外せないのなら貴女の魔力を封じるしかない」
抵抗する彼女の指に無理矢理、魔力封じの指輪を装着させると黒い靄が見えなくなった。
ダニエルは少し落ち着いた彼女をソファに座らせ、ただ成り行きを見守っていた公爵も隣に座らせた。
「何故、レティシア・ランベールを呪った?」
「あの令嬢は…リオネル様に相応しくありません!!」
相応しくないだと?
「あんな、魔力も大したことない無能な…」
カリーナ嬢はブツブツと呟きながら叫んだ。
「あの女より私の方がリオネル様を支えられます!!」
別にルグラン家は魔力に秀でた家系では無い。
アレクシア嬢からレティシアに婚約が変更になっても問題無かったのは魔力に頼っていないからだ。
それにしてもこの女は都合が悪い事はキレイに忘れるようだな。
「あの時、あんなに嫌がったのに今はレティシアを呪い殺してでもルグラン家に嫁ぎたいと…?」
「あの時…?」
意味が分からないと困惑するカリーナ嬢に対して公爵は俺の言いたい事に気付きガタガタと震えだした。
「貴女とは以前、婚約の話があったと記憶していますが忘れてしまわれましたか?」
ランベール家との婚約が決まる前に歳も家格も釣り合うからと婚約の話が持ち上がったがカリーナ嬢は俺の目の前で泣いて嫌がった。
ここまで嫌がるなら上手くいかないだろうと両家は婚約を諦めた…それを、今になって……。
「カリーナ、リオネル殿とは一度…」
公爵に説明されても「覚えてない」「そんなの間違いだ」と彼女は認めない。
「貴女は私の何を好ましく思ってくれているのだろうか?」
「そんなの全てですわ!!魔力に頼らず剣術も学ばれてとてもお強い所も優雅に踊るダンスも全てリオネル様の全てを好ましく思っておりますわ!!」
他にも色々と俺の好きな所を並べてくれているが思わず笑ってしまった。
「な、何が可笑しいのですか?」
「貴女が好ましく思ってくれている物は全てレティシアの為の物だ」




