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思わず黙りこんでしまう。
「レティシア様?」
「私が話を変えてしまったのかしら?」
変な汗が出てくる。
「ただのモブなのに私のせいで…」
「レティシア様のせいなどではありません!!それぞれに感情はあるのですから思い通りに話が進むなんて事は無いのです」
ダイアナ様が冷たくなった私の手をそっと握りしめる。
「冷えてしまいましたね。教室へ戻りましょう」
ダイアナ様の優しい微笑みに心が軽くなる気がした。
それからの授業もあまり頭に入ってこなかった…。
記憶を思い出したのは8歳でアレクシアがリオネル様と婚約した頃だった。
思えばあの頃には、もう話が変わっていた。
本当ならレティシアとリオネル様の婚約は学園に入学してからでアレクシアが王太子殿下に恋をしてから…。
でも実際のアレクシアはロラン様に恋をした。
それは私が記憶を思い出したからなのかもしれない。
そして記憶を思い出した私が好き勝手に引っ掻き回した結果、話が変わってしまった。
「レティシア?」
気がつくと授業は終わりリオネル様が迎えに来てくれていた。
慌てて帰り支度をしているとリオネル様の手が頬を包んだ。
「顔色が良くないけど気分は悪くない?」
「ええ、大丈夫です」
リオネル様の優しさに泣きたくなる。
ゲームの中のリオネル様はレティシアの事をどう思ってたんだろう。
レティシアは姉から婚約者を押し付けられて何とも思わなかったのだろうか…。
モブの気持ちなんて描かれないのだから考えても一緒なのだけど……。
レティシアはリオネル様と無事に結婚できたのかな。ゲームの中のレティシアもリオネル様の事が好きだったら良いな…。




