193.side ダイアナ
孤児院出身者の就職率はとても厳しい。
親が居ないのは私達の責任では無いのに世間の目は厳しい。
レティシア様に相談すると…レティシア様は皆に働く場所を提供して下さった。
「そんな大層な事では無いのよ?おにぎりを手軽に食べたかっただけなのよ?」
私達に気を遣わせない為に、その様な事を仰るレティシア様を女神様だと皆で涙を流したのは、ここだけの話。
「ダイアナが他の貴族に虐められないか心配していたけどレティシア様を見て安心したよ」
『おにぎり屋』で接客を担当しているエリカが嬉しそうに微笑む。
「それに…大好きだったリアム様と婚約できて良かったね」
「あ、ありがとう」
恥ずかしくて小さな声になってしまう。
「ダイアナ、本当にありがとね」
「私は、何もしてないよ?」
「ううん、ダイアナは貴族のお嬢様だと分かって孤児院を出て行った後も私達の事を支援してくれて、働く場所も用意してくれた」
「それは…リアム様のお母様のお手伝いをしているだけだし…働く場所は、レティシア様が…」
リアム様のお母様は慈善事業に熱心で私が孤児院に居た時からとても良くして下さっていたし、『おにぎり屋』の資金は全てレティシア様が出してくれた。
エリカは首を横に振る。
「ダイアナが居たからレティシア様も協力してくれたんだよ」
エリカが泣きながら私に抱き付いてきた。
「私達の事いつも想ってくれてありがとう」
「だって…私達、家族でしょう?」
本当の両親に引き取られても孤児院の皆は私の家族。
エリカをぎゅっと抱き締めると細い肩を震わせてエリカは、さらに泣き出した。
まともな職に就けるか分からないまま孤児院を出ていかないといけないのは想像以上に恐怖なのかもしれない。
頭を撫でるとエリカは泣きながら可愛く微笑んだ。
*―*―*―*―*―*―*―*―*―!―*
「リオネル様、私『おにぎり屋』で女神様って呼ばれてるんですけど…?」
「レティシアは女神って言うより天使だよね」
あの…そういう事では無くて……。
「私、孤児院の皆を救ってあげようなんて大層な事は考えていなかったのに…」
「結果、救ってあげたのなら良いじゃない?」
「それは、そうですけど…おにぎりを手軽に食べたかっただけなのになぁ…」
「レティシアは実は、食いしん坊だからね」
リオネル様が笑い出す。
たしかに食いしん坊だけど、お米が美味しいのがいけないのです。
「食いしん坊でも可愛い」
もう…。




