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帰りももちろん馬です。
怖いので来た時と同じ様にリオネル様にしがみついてます。
桜の木が見られたのは嬉しかったけど馬でしか行けないのは辛い。
屋敷に着いてリオネル様が馬から下ろしてくれたけど…膝がガクガクしてて上手く立てない。
倒れる前にリオネル様が抱き上げてくれた。
「大丈夫?」
「ありがとうございます…」
恥ずかしい。
リオネル様が私を抱き上げて屋敷の中へ入るとお義母様が出迎えてくれた。
「まぁ、どうしたの?」
「馬が怖かったみたいで……」
馬が怖くて膝がガクガクしてるなんて恥ずかしくて顔が上げられない。
「もっと気遣ってあげなさい!!」
いえ、これ以上に無いくらい気遣ってもらってます!!
「レティシア、ごめんね」
思わず首を横に振る。
「お部屋で休ませてあげなさい」
お義母様、少し呆れてるかもしれない……。
「リオネル、そろそろ害虫駆除を始めるわよ」
リオネル様は無言で頷くと歩き出した。
害虫……。
私、虫も怖いです……。
部屋に戻るとリオネル様は私を抱えたままソファに腰を下ろす。
「リオネル様……」
「なぁに?」
リオネル様は分かってる癖に素知らぬ顔して微笑む。
私が膝から降りようとしてるの分かってて今、腕に力入れたよね?
「もう…」
「馬に乗ってる時みたいに抱き付いてきて良いんだよ?」
「あ、あれは怖かったからっっ!!」
恥ずかしくて両手で顔を隠すとリオネル様が優しく頭を撫でる。
「もう馬に乗るのは嫌かな?」
「リオネル様は嫌じゃ無いのですか?」
「俺が?どうして?」
「だって…私と一緒だとスピード出せないし…それに……リオネル様に抱き付いてないと怖いし……」
「そんな事を思ってたの?」
馬は怖いけどリオネル様が支えてくれたら大丈夫…怖いけど。
「来年も一緒に行こう」
頷くとリオネル様は私をぎゅっと抱き締めた。
来年も桜の木が見られるの嬉しい。
リオネル様と抱き合っていると、ふと部屋の隅で恥ずかしそうにしているメイドと目が合った。
い、いつから居たの?
たぶん、始めから居たよね?
そうだよね、リオネル様が下がって良いって言わないと居るよね。
「リオネル様、お茶を飲みたいです」
リオネル様もメイドの存在を忘れているのではと思ったら当然のようにお茶を頼んだ。
居るの知ってた…?
メイドが淹れてくれたお茶は緑茶だった。
「美味しい」
私が作った試作品より美味しくなってる。
「これは流行るかもね」
お茶を飲み終わると今度は、ちゃんとメイドを下がらせてくれた。
「リオネル様…あの…」
「どうしたの?」
「害虫駆除って…」
リオネル様とお義母様の会話で時々、出てくる言葉…。
虫が居るって事だよね?
種類によっては泣き叫ぶかもしれない。
「レティシアは何も心配しなくて良いよ」
リオネル様は優しく微笑むと頭を撫でてくれた。
「虫、苦手なんです…」
想像したら肌がぞわっとした。
「うん、絶対にレティシアには近付けさせないから」
誤字報告ありがとうございます。




