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173.side シンシア

皆が寝静まった後で修道院を脱走する。

そう決めたら苦痛でしか無かった祈りの時間でさえ穏やかに過ごせた。


やっと、やっとこの暮らしから逃げ出せる。

何でもっと早く思い付かなかったんだろう?





深夜、皆が寝静まった頃に、そっとベッドから脱け出す。


魔力など使わなくても簡単に外に出られた。


何だか拍子抜けしてしまう。


「こんなに簡単に出られるならさっさと脱走すれば良かった」


まったく、ヒロインの私に、こんな手間を取らせるのやめて欲しい。


とりあえず家に帰りたいのだけど道が分からない。

近くの街まで行けば何とかなるかしら?


そう思いながら修道院の門を越えると…突然、口を塞がれ手足を拘束された。


嘘?何?


少し離れた場所に停まっていた馬車に無理やり押し込まれると馬車はそのまま走り出して……。


「んー!!んー!!」


布で口を塞がれて喋れない。



「静かにお願いします」


一緒に馬車に乗り込んだ男が冷たく言うとすぐに私から目をそらした。


拘束された手でも魔力を使えるかと何度か試みるも全く使えない。


何で…?


「魔力は使えませんよ」


「!?」


「我が主は争い事を好みません。大人しくしていて下さい」


主って誰?何処に連れて行くの?

馬車は暗闇を走り続ける。

馬車の振動なのか私が震えているかさえ分からない。


夜が明ける頃、やっと馬車は停車した。


馬車から乱暴に下ろされると男の人の前に放り出された。


「おい、もう少し優しく扱ってやれ」


男の人は、困った様に眉を下げて私を見る。


「シンシア子爵令嬢で間違いないかな?」


名前を呼ばれて小さく頷く。


「貴女は、もう貴族では無くなった」


「!?」


は?何で?


男の人は私の前に一枚の紙を差し出して見せた。


「貴女が修道院から逃げ出したら縁を切ると書いてあるが分かるかな?」


正直、文章は難しくてよく分からない。

でも最後にお父様のサインが書かれているのは分かる。



頭の中が真っ白になった。

私と縁を切るってどういう事?私は家族に捨てられたの?


「少し休ませてやれ」


乱暴に立ち上がらせられると無理やり歩かされた。


「手錠は外せませんが、ゆっくりお休み下さい」


客室?

私の家より豪華な部屋に案内された。


手錠をしたままベッドに寝かされると身体は疲れていた様で気絶するように眠りに落ちた。






side.オスカー


「貴方様は何故いつも面倒事を引き受けてしまわれるのですか?」


「俺が引き受けなかったら酷い目に遭うかも知れないだろう?」


「この後、どうなさるのですか?」


「とりあえず屋敷に連れて行くよ。メイドが足りないと言っていたろう?」


「今や、あの屋敷は訳あり人間だらけですよ」


「みんな仲良く暮らしているのだから良いではないか」

オスカー実は良い人。


誤字報告ありがとうございました。



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