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チケットは貴族席ではなくて一般席だった為、お忍びデートをする事になりました。


リオネル様が用意してくれたワンピースは薄紫色で可愛い。


いつものお忍びデートの時は三つ編みにして目立たないように地味にするのだけど、今日は演劇観賞の為か髪はハーフアップで

少しだけお洒落な感じに仕上げてくれた。


姿見の前で何度も確認しているとエマがリオネル様の到着を知らせに来た。




玄関ホールで待っていたリオネル様は街の好青年って感じで、とてもカッコイイ。

私の旦那様は何を着ても良く似合う。


「リオネル様、カッコイイです」


見とれていると心の声が漏れてしまった…。

恥ずかしい。


「レティシアも凄く可愛いよ」


リオネル様が欲目で言っているのは分かっているのだけど嬉しい。



「そろそろ行こうか?」


「はい」


リオネル様とお出掛けするのは久しぶり。

嬉しすぎて馬車の中から手を繋いでリオネル様の腕にしがみついた。


「どうしたの?」


リオネル様が、笑いながら私の方を向く。


「リオネル様とお出掛けするの久しぶりだから嬉しくて」


「レティシアは、お出掛けするの好きだね」


「リオネル様と一緒だからですよ?」


お出掛けも好きだけどリオネル様と一緒だと何処に居ても嬉しい。


リオネル様が何かを言いかけたのと同時に馬車が到着した。


「分かってると思うけど手を離したらダメだよ?」


「もちろんです」


リオネル様の手を少しだけ力を込めて握る。


私だって少しは、しっかりしてきたと思うのだけどリオネル様は、まだ私の事が心配みたいで街を歩く時は手を繋いだまま。


私も別の意味で心配だから絶対に手を離さないけど…。


「リオネル様、さっき馬車の中で何を言いかけたのですか?」


「……」


「リオネル様?」


「内緒」


「えー?」


リオネル様は悪戯っ子みたいな顔で笑うと私の手をぎゅっと握り返した。



「ほら着いたよ」


大人気な劇団なだけあって大きな劇場。

中もとても広くて一般席でも充分な広さでとても見やすそう。


「今度は貴族席を取ろうか?」


リオネル様が小さな声で私に聞く。

実を言うと私は貴族席は、あまり好きでは無い。


「できれば一般席が良いです。正面から見るのが好きで……」


貴族席は遠いし横からだから私的には、とても見にくい。

防犯上の問題もあるかもしれないから、あまり我が儘は言えないのだけど…。


「俺が一緒の時なら一般席でも良いよ」


「ありがとうございます」


また一緒に来てくれるって事だよね?

嬉しい。




招待して貰った舞台の演目は学園で観た物と同じだった。


やっぱり地味ヒロインちゃんに自分を重ねてしまう。

頑張れヒロインちゃんっっ!!


同じ所で涙ぐむとすぐにリオネル様が肩を抱き寄せて涙を拭ってくれる。


周りに誰も居なかったらリオネル様の胸にすり寄るのになぁ…こういう時は貴族席の方が良いかも。


最後はハッピーエンドでなのでまたまた涙が溢れる。


良かったねヒロインちゃん!!





「レティシアは、感動しやすいね」


「この演目は特別なんです…」


まだ涙が完全に止まっていないので少し恥ずかしい。


「何処かに寄ろうかと思っていたけど真っ直ぐ帰ろうか?」


え?

デートが無くなっちゃう。

急いで涙を止めないと……あぁ、そんなのムリ。


ホールの中で、もたもたしていると係員の人に声をかけられた。

役者さんが私達を呼んでいるらしいので楽屋まで来て欲しいらしい。


思わずリオネル様と顔を見合わせる。


「せっかくだから行こうか?」


リオネル様、嫌じゃないの?


リオネル様と手を繋いだまま楽屋に案内されると、チケットをくれた役者さんが待っていた。



「来てくれたんですね!!」


「ご招待ありがとうございました」


「やっぱり魅力的だなぁ」


「え?」


リオネル様が私の腰に手を回して引き寄せた。


「あぁ、そう言う意味では無くて…何と言うか創作意欲を掻き立てられると言うか……」


リオネル様と顔を見合わせていると…。


「意味分からないでしょう?ごめんなさいね」


あぁ地味ヒロインちゃん。

地味メイクを落とすと素顔は美人さんだった。


「とんでもない美少女に逢ったって大騒ぎしてたら貴族学園に居たって興奮してたのよ」


ヒロインちゃん役の美人さんは可笑しそうに笑い出した。


「貴女をモデルに話を書きたいらしいのだけど…私に貴女の役がつとまるかしら?」


「え?」


「初めて逢った時の今にも泣き出しそうな表情も二度目に逢った時の幸せそうな表情も全てが魅力的だ!!ぜひ、貴女をモデルにしたい!!」


えっと、どうしたら良いの?

リオネル様の顔を見るとリオネル様も困惑している。


「あの…」


「貴女は何もしなくて良いのよ。彼が勝手に話を書くだけだから…あ、でも気持ち悪いなら断って良いわよ」


「気持ち悪いなんて…そんな…」


「書いても良いのかい?ありがとう!!完成したら是非とも観に来て下さいね」


え?

お、押しきられてしまった……。


何か気付いたら涙も止まってました。

リオネル様とデート続けられるなら良いか。









◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ねぇ、さっきの『そう言う意味』で言ったんでしょう?」


「……」


「恋人が居て残念だったわね」


「うるさいな」


「貴方の理想の美少女ちゃんを私が演じてあげるから我慢しなさいな」


「……」


「よしよし泣かないの」


「泣いてねぇーよ!!」

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