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最近、リオネル様の様子がおかしい。
私が話しかけても上の空の時があるし…間違いなく何かを隠してる。
ある日、ふとリオネル様から甘い香りがした。
私が選んだ香水とは違う香り……。
香水を変えた…?
同じ日に購入したのだからリオネル様の香水だけ早く無くなるのは考えにくい。
私の香水は、まだ残ってる……。
まだ残っているのに香水を変えたの?
胸の奥が、きゅっと痛くなる。
まさか浮気……?
リオネル様が、そんな事をするなんて考えられない…。
でも…それならどうして香水を変えたの?
考えすぎかもしれない…香水だって、ただの気分転換で何の意味もない事かもしれない。
リオネル様が浮気なんてするわけない。
何度も心の中で、そう呟いた。
それなのに…リオネル様から今週末は予定があるからとお泊まりを断られた。
「あら、珍しいわね。レティシアが週末に家に居るなんて」
お茶を飲んでいるとアレクシアが向かいの席に座った。
「……」
「どうしたの?」
我慢していた涙がポロポロと零れ落ちる。
「ちょっと、どうしたのよ?」
「リオネル様が……浮気…してる…かも…しれない……」
「それは、ありえないでしょう?」
「でも……」
アレクシアは私の涙をハンカチで拭うとキッパリとリオネル様が浮気をするなんて考えられないと言った。
「それなら確かめて来なさい。本当に浮気してたら相手の女に慰謝料を請求してリオネル様は社交界から抹殺してあげるわ」
ふふふ。
アレクシアが言うと冗談に聞こえない。
「レティシアは可愛いんだから笑ってなさい」
もう、同じ顔なのに…。
アレクシアには敵わないな。
アレクシアに背中を押されて馬車に乗るとルグラン邸へ向かった。
急に行ったら迷惑かもしれないけど私だって一応、ルグラン家の人間だもの。
馬車が到着するとルグラン邸の使用人達は私を見て明らかに動揺した。
きっと突然だったからよね……。
「レティシア様、本日はどうなさったのですか?」
「近くまで来たから……」
やっぱり私は歓迎されてない…?
「リオネル様には手が離せない用がございまして……」
「待たせて貰ってもかまわないかしら?」
使用人が返事をするより先に自室へ向かった。
リオネル様が隣の部屋に居る気配は感じない。
とりあえずソファに座るとメイドがすぐにお茶の準備をしてくれた。
初めて見る子だ。
私と同じくらいの歳かな?可愛い子だなって思って見ていたら…。
「!?」
私の前にカップを差し出した時に彼女からリオネル様と同じ甘い香りが微かにした。
「貴女、初めて見るわね」
声が震えるのを必死に押さえた。
「こ、今月からお世話になってますっっ!!」
リオネル様の様子がおかしくなった頃。
やっぱり、この子がリオネル様の……。
「もう帰るわ」
「え?あの…?」
困惑している彼女を無視してすぐに馬車に乗った。
「街へ行ってくれる?」
「お一人でですか?」
「香水を買いたいだけだから…」
私も新しい香水を買わなきゃ。
甘くない香水を……。




