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リオネル様に髪を切らせてほしいとお願いしたら少し驚いていたけど了承してくれた。
「私はリオネル様の瞳が大好きなので見えないと寂しいです」
エマが器用にリオネル様の髪を切るのを見ていると私の知ってるリオネル様が顔を出した。
リオネル様、素敵……。
思わず胸が熱くなる。
私の視線に気付いたリオネル様が優しく微笑んでくれると私は引き寄せられるようにリオネル様の胸にすり寄った。
「リオネル様、大好き」
「君の世界の俺が羨ましいな…」
リオネル様が私の背中を優しく包むとポツリと呟いた。
「君の世界の俺も君の事が好きで堪らないようだね」
「リオネル様も…?」
「君になら言っても良いかな?」
「……?」
「アレクシアと婚約していた時からずっとレティシアの事が好きだったんだ……」
私の瞳から大粒の涙がポロポロと零れ落ちて止まらなくなった。
これは、私の涙では無くてレティシアの涙だ。
ずっとリオネル様に想いを寄せていたレティシアの気持ちが流れ込んでくる。
「レティシア…?」
「私では無くてレティシアが泣いているのです」
リオネル様は私の涙をハンカチで拭うと少し困った顔をしてしまった。
「レティシアは俺と婚約して嫌なのかな?」
「レティシアもリオネル様の事が好きです!!ずっと前からリオネル様の事を想っておりました!!」
ごめんね、レティシア。
貴女の気持ちを勝手に伝えてしまって…。でもレティシアなら許してくれるよね?
胸がトクンと高鳴ってレティシアが「うん大丈夫だよ」って 言ってくれてる気がした。
「早くレティシアに身体を返してあげないと…」
やっと想いが通じあったのに私が邪魔をしてしまっては申し訳ない…。
「その事なんだけど…微かに君の胸の奥に黒い靄が見えるんだ…」
黒い靄……?
一気に体温が下がった。
「レティシア…?」
まだ呪いは続いているの…?
誤字報告ありがとうございました。




