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頭が痛くて気が遠くなる……。
ゆっくり目を閉じると私は、そのまま意識を手離した……。
目を覚ますとリオネル様の腕の中に居た。
「リオネル様…?」
前髪が長すぎるし雰囲気が違う……。
前髪を掻き分けると大好きな薄紫色の瞳が戸惑った様子で私を見ている。
このリオネル様には見覚えがある。
乙女ゲームのリオネル様……。
ここは乙女ゲームの世界?
「思い出したかな…?」
小さく頷くとリオネル様は私の魂が違う世界から来たのでは無いかと話し始めた……。
隣り合った世界。
平行線で決して交じり合うことがない世界。
「君の魂からは微かに俺の魔力を感じる」
リオネル様の魔力……。
そっと胸を押さえる。
私がここに居るって事は、もう一人の私は…?
「あの…もう一人の私は…何処に?」
「君に身体を貸して眠っているようだ…」
だからかな…この身体の記憶も流れてくる。
もう一人の私もリオネル様の事が好きで嬉しい。
「私は元の世界へ帰れるのでしょうか?」
「少し時間をくれないかな?必ず帰してあげるから…」
リオネル様が私の手をぎゅっと握りしめて約束してくれた。
やっぱりリオネル様はリオネル様だ。
好きで好きでたまらない私の婚約者。
リオネル様の胸にすり寄るとリオネル様の手が遠慮がちに私の背中に添えられる。
もっとぎゅっとして欲しくて思わず見上げるとリオネル様の頬が少し赤くなっている。
「君は俺と居て嫌では無いの?」
「……?」
「婚約は家が決めた事だから……」
「リオネル様はレティシアの事がお嫌いですか?」
視界が滲むとリオネル様が慌ててハンカチを取り出した。
「俺は、こんなだから綺麗な君とは不釣り合いで……」
「私はリオネル様の側に居たいです」
「本当に…?」
頷くとリオネル様は「夢みたいだ」と小さく呟いた。




