もう少し、ゆっくり歩こう
来来、来来、お前はどうしてそんなに
のんびり屋なんだよ・・・・・
「班長ー、またいないよー」
その言葉だけで誰のことかわかってしまう自分ってなんなんだろう。
1年生の元気な声に朝からため息をついてしまった。
いなくなったのは副班長の瀬田来来。
オレとはあいつが小学校入学前に引っ越して来た時からの長い付き合いで、同じ登校班で学校に通ってもう6年目。そんなオレですら来来がまともについてきていた記憶はない。
だからあー、またか、なんて思いつつも後ろを振り向くとあきれ顔の5年生が肩をすくめた。気が付いていたのに報告しなかったらしい。
慣れだな。うん。
たまにいなくなるならまだしも来来は毎日のようにいなくなるからな。
もう一度ため息をついてオレは学校へと顔を向けた。
放課後。
ちょーっと遊びすぎて先生に呼び出しを受けてしまったオレは、いつもなら家に帰りついている時間にやっと教室へランドセルを取りに行けるようになっていた。
「あれ?太一くんが珍しいね」
教室に入ると来来がゆったりとランドセルを背負っていた。時刻は午後4時。
遅くね?
「いつもこんな感じだよ」
来来はふにゃとかそんな感じの音が聞こえてきそうな笑顔でそう答えてじゃっ明日ー、とオレの横をすり抜けていった。急いで呼び止めて自分もランドセルを背負う。
「一緒に帰ろーぜ」
すると来来は少し驚いたような顔をしたけどすぐに笑顔に戻ってうなずいた。
「来来ホール?」
来来と帰り始めてしばらくしたころ、オレはポツリとつぶやいた。隣では来来が猫と小さな女の子を連れて、お爺さんと世間話をしている。
猫はいつの間にかついてきていた。
女の子は道の真ん中で泣いていた迷子。来来が声をかけたらすぐに泣きやんだ。本人曰く慣れているんだそうで。
お爺さんも来来のお友達なんだそうだ。
今はもういなくなったけどさっきなんてスズメを頭に載せていた。
そう、オレたちは、というか来来はまるでブラックホールみたくいろいろな物を呼び寄せながら帰っている。
おかげで普通の倍以上の時間がたってもまだ家には程遠いところにいた。
今まで一緒に帰ったことがなかったから知らなかったけどもしかして朝もこんなんなのか?
「朝、んーいつも?はもっと多いかな〜。多分太一くんがいるから遠慮してくれてるんだよ」
・・・・・。
明日の登校班は5年生に任そう・・・・。