自分だけのスローペース
今回振り回されるのは先生です。顧問です。
瀬田瀬田、君はなんでそこまで
のんびり屋さんなんだろうね
この学校はとても広くて自然もたくさんあるから授業ではよくそれを利用する。
その時は終わったら美術室に帰ってきて、終わらなくても鐘が鳴ったら帰ってくる、のが基本・・・・なんだけどねぇ。
あの子はいつも帰って来てくれないなあ・・・。
あの子の名前は瀬田来来。我が美術部の部長で、そして今日も一人だけ帰ってこない。
しょうがない、探しに行こうか。
岩のウラ、ウサギ小屋、花壇の中・・・・・
まるで小学生のかくれんぼだけどそんな所にいちゃうのが瀬田だから入念にチェックしていく。
前には鯉の池の中、なんて場所もあった。
凄いよねぇ。
まあ、そのあとが大変だったからもうないとは思うんだけど絶対、って言えないところが瀬田クオリティ。
と、元の場所に戻って来てしまった。
なんだかんだいってまじめな子だから勝手に帰るはずはないんだけど。でもそしたらいったいどこに行っちゃったんだろう?
軽く首をかしげると真上から声が降ってきた。
「センセー、出来たよ〜」
バッと見上げても当然ながら誰もいない。空耳かな?
とりあえずもう一度瀬田を探しに行こうと思い歩き出そうとするとグイッと後ろから襟を引っ張られた。
驚いてふりむこうとするとパッと手は外れて、そしてそこには先ほどから探していたあの子の姿が。
「せ「ハイっ!」
口を開こうとするとその前に授業用のスケッチブックを押し付けられる。そこには青が一面に描かれて、というか塗ってあった。
青・・・空かな。
「もう次の授業が始まっちゃてるから急がないとなんで」
その言葉に腕時計を見てみるとちょうど休憩時間は終わっているところ。
あとで瀬田の次の授業の先生に謝っておかないとなぁ。
「じゃあ、またね〜」
手を振って踵を返す瀬田は相変わらずゆっくりと歩いている。
おいおい、もうちょい急げ
それでも彼女は相変わらずのスローペース。
しょうがないなぁ。
そういえば、と思い出した。
今日はどこにいたの?
瀬田はクルッと回るように振り向いた。その顔にはちょっぴり意地の悪い笑顔が。
「上ー!」
それ以上は何も言わずに教室へ帰っていく。
上・・・・・?
結局どこにいたのかは永遠の謎。
ほんと、どこにいたんだろう?