(4)
これは『うちのドッペルゲンガーはなかなか俺を殺さない』の外伝です。そちらを読まれていない方は、ぜひそちらからお読みいただけると嬉しいです。
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夜通し笑い続けた少年は、次の日から三日間泣き続けました。
声をあげて、わんわんと。
こんなに泣いたのは初めてだ、と心のどこかで思いました。
泣きつかれたあとは、ずっと、空を見ていました。
日が昇り、月が出て、また日が昇る。
白い雲が空を覆い、大粒の涙を流す日もある。
白い雲が太陽とにらめっこして仲良く並んでいるのを見て、青い空が優しく微笑む日もある。
どんな日でも、青い空は変わらず広がっている。
自分もあの雲のように青い空に包まれたい。
あの、そこはかとなく優しい青に包まれたい。
そんなふうにぼんやりと夢を見ていました。
ある日、いつものように青い空を見ていると、おじいさんがやって来て声をかけてられました。
真っ白な髪と髭。不思議な形の杖としゃんと伸びた背中。真っ黒な瞳。
「どうして、そんなところにいるんだい?」
見た目に似合わない、若くはっきりとした声。
少年は空を見たまま答えます。
「疲れたんだ。疲れたから、ここにいるんだよ。」
「何に疲れたんだい?」
「わかんない」
クスッと笑う声が聞こえました。
「そうか、わからないか。」
おじいさんは少年の隣に腰を下ろしました。
少年はビックリして体をおこし、初めて、おじいさんの姿をちゃんと見ました。
真っ白な髪と髭。不思議な形の杖としゃんと伸びた背中。真っ黒な瞳。
どうみてもお年寄りなのに、生きる力を強く感じる。
「何もしない、独りぼっち。やりたいこともやらなければならないことも、わからない──君は死人みたいだね。」
温かく優しい声。
少年は何を言われているのか、よく理解できませんでした。
「人はね、死んでしまうと何もできないんだ。誰かに会うことも、話すことも、遊ぶこともね。だから死んだあとは、何もかもを諦めて、諦めるしかできなくて、新しく生まれ変わることをひたすらに待つのさ」
「──じゃあボクも一緒だ。誰かに会っても遠ざけられる。だから何もしちゃいけないんだって諦める。早く生まれ変わりたいよ」
死に方も知らないボクは、生まれ変わることすら出来ないのかな。
「なら、いっそ死んでみるかい?」
「え?」
涼しげな風が吹いた。
おじいさんはニヤリと笑っている。
「君、名前は?」
「無いよ。『やくさい』とか呼ばれるけど違うと思う」
「よし、ちょうどいい」
おじいさんはそう言って立ち上がり、持っていた変な形の杖を空に向かってグルングルングルンと三回まわした。
すると周りの風がゆったりと集まり、空に向かう道が出来た。
「さぁ、行こう。新しい場所で、新しい名前をやろう。古きは消え、新しい世界を夢見よう。」
大きな声で、きらきらと黒い目を耀かせ少年に手を伸ばす。
「君が紡ぐんだ、箱庭を。」
────────────
「──その後、少年はおじいさんと楽しく過ごしました。めでたしめでたし……なんて、ふざけた物語だよね。」
クスッと笑う。
「実際の終わりはこうさ……『そして少年は世界を消滅させ、無責任に──』」
「いいんですよ!おとぎ話なんですから。ハッピーエンドがちょうどいいんです。」
黒い髪、青い目の少女は少し怒り気味にそう言った。
「あっはは。ハッピーエンドだって?確かにそうだ!」
彼は腹を抱えて大笑い。
「──もう、決められましたか?」
静かな声。
彼は目を見開いて彼女の方を見て、直ぐに顔を反らした。
「……いいじゃないか、夢の中くらい。忘れさせてくれよ。」
「もうすぐ、タイムリミットです。こればかりは変えられない。決断のときが来たのです。」
今度は力強い声だった。
「……また、会える?夢を見れば、会える?」
彼女はふふ、と笑って、
『ま』
『た』
『こ』
『ん』
──────────────
『ど』
窓の外から軽快な行進曲が聴こえる。
まちまちに轟く花火の音。
日の光がギリギリ部屋に入らない。
ああ、行かないと。
彼は急いで部屋を出た。
こんにちは。ななるです。
この作品は『うちのドッペルゲンガーはなかなか俺を殺さない』の外伝です。そちらを読まれていない方は、ぜひそちらから!
更新、遅くなってごめんなさい!
最後のシーンの時系列的にもう少し遅らしたかったのですが、間が空きすぎても意味がわからないので、出荷しました❗
今回で『白色の少年』は完結です。
最後までお付き合い下さりありがとうございました!




