(3)
これは『うちのドッペルゲンガーはなかなか俺を殺さない』の外伝です。そちらを読まれていない方は、ぜひそちらからお読みいただけると嬉しいです。
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そらに浮かぶ三日月がこの部屋まで光を届ける。
窓から外を見ていた彼女は、機嫌がいいのか気持ちばかり微笑んでいるように見える。
不思議に思った少女は素直になぜ笑っているのか聞いてみた。
「ふふ、それはですね、懐かしいからです。」
「なにが?」
「ここでこうやって、あなたに昔話をすることが。」
「どうして?」
「昔、あなたくらいの男の子にも、夜に昔話を毎日のように聞かせていたことがありました。とても好奇心旺盛な良い子でしたよ。」
「その子は今どうしているの?」
外から少し冷たい風が入ってくる。
まるでその風はとても遠くからやって来たかのよう。
「──さぁ、わかりません。きっと冠を被って、立派な椅子に座って、震えながら過ごしているのでしょうね。」
彼女がうつむいて話したから、少女は彼女がどんな顔で話したか分からなかった。
「──さぁて!」
場の空気を無理に変えようと、彼女はパチンと手を合わせ、明るい声でこう言った。
「昨日の続きを聞かせましょう、リンナ。」
──────────────
少年は様々なところへ行っているうちに、いつの間にかもとの村に帰っていました。
村の人々は手厚く、温かく少年を迎えました。
そして、少年の望み通りのことをして喜ばせたい、と言いました。
少年は生まれて初めて人に優しくされ、何を望めばいいのか分からなかったので、美味しいものを食べたい、とだけ言いました。
村の人々はすぐにごちそうを作り始めました。
初めてみる料理しかなかったので、どうやって食べるのか、そもそも食べていいのか分からなかったので、少年は困っていましたが、自由に食べて良い、と優しく言われたので、遠慮なく全て平らげました。
夜は村一番の部屋を貸してもらいました。
ふかふかなベッドで遊んでいると村人が一人やって来て言いました。
「これは魔法の水。飲めばさらに幸せになれますよ。」
しかし、少年はすでにとてつもなく幸せだと感じていたので、いらない、と言いました。
「いいえ、飲んでください。」
その人は帰ろうとしません。
「ボクはもう十分だから、誰か他の人にも幸せになってほしい……」
「いいえ、飲んでください。」
「でも……」
「飲みなさい。」
少年は、その人がすごく恐い表情でこちらを見ていることに気がつきました。
「嫌だ!」
「飲めっ!」
その人は少年を押さえつけ、無理矢理それを飲ませました。
「んぅ……んあ……!」
喉が焼けるように熱い。呼吸が荒くなる。
少年は苦しくなって首を押さえ、のたうち回ります。
「……あっ……かはっ……!」
「はは──やった、やったぞ!」
「よくやった!これで安心だ。」
「呪いから免れるのね!」
見ると窓からたくさんの人が覗いていました。
……みんな見ていたのにどうして助けてくれなかったの……
みんな嬉しそうに笑っています。
……そうか、みんなボクを騙していたんだ……
薄れていく意識の中、少年の中で何かが弾けた、そんな気がしました。
やがて、少年は動かなくなりました。
「やった……死んだぞ!」
「よし、やった、やったんだ!」
外にいた人も、みんな部屋に入ってきて跳んで喜びました。
「ああ、素晴らしい……なんて素晴らしいの!」
「祝おう、呪いから解放されたこの時を!」
その時、確かに少年の体が光りました。
鈍く淡い光。
部屋が静かになりました。
「まさか、まだ生きているのか?」
「そんな馬鹿な!」
不安、焦り。人々が息を飲んで少年の様子を確認します。
不意に声がしました。
「……嬉しい?」
ぼんやりと、どこから聞こえているかよくわからない声。
「嬉しいでしょ?」
今度ははっきりと少年の方から聞こえました。
村人たちは声を失い、男は目を大きく開き首を横に振り、女は手で口を押さえました。
少年はふらりと立ち上がり、言いました。
「ねぇ、ボクがいなくなって嬉しかった?」
少年はそれから、クスッと笑い、
「ボクはみんながいない方が嬉しいな。」
次の瞬間、白い光が村全体を包みました。
遠くからそれを見た人は、きっと神様が降りてきたのだろう、と思ったそうです。
たった一夜にして最強の村が跡形もなく消えました。
残るのは少年と、その渇いた笑い声だけ。
こんにちは。ななるです。
正直、あまりこういう内容は好きじゃないです……書けないことが分かりやすく表れるので。ハッピーエンドが一番です!
次回で「白色の少年」は完結予定です!フラッタの剣士より重要かもしれない話なのでどうか最後までお付き合いして頂けると幸いです。
次回があれば、またお会いしましょう!




