(2)
これは『うちのドッペルゲンガーはなかなか俺を殺さない』の外伝です。そちらを読まれていない方は、ぜひそちらからお読みいただけると嬉しいです。
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「──しばらくたって、」
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しばらくたって、仕事先の大人たちがやってきました。
「お前が働かないから、その分の金をいただきにきたぜ。」
正直言って、少年に縁のある物なんて一つもなかったので何を奪われようが構いませんでしたが、何より、少年はその大人たちが嫌いでしたから、「早くいなくなってしまえ」と心底思いました。
すると、目の前が急に眩く光り、大人が一人消えました。
少年が「みんなみんな、いなくなってしまえ」と念じると、更に一人、また一人……と、消えていきます。
消えていくのは大人だけではありませんでした。
家の物も一つ、また一つ……と消えて、遂には辺り一帯、キレイサッパリ更地になりました。
家も、人も。全て。
少年は怖くなって逃げ出しました。
どこに行くという意思もアテもなく、ただただ走り、走って、走りつづけました。
それから数日がたって、町の方では消えた義母の家のことが噂になっていました。
中には走って逃げていく少年を見たという人もいたので、人々は少年が全てやったのだろうとすぐに結論付けました。
「終末の色、白を身にまとうあの子はやはり悪魔の子だ。」
「あの子に関わった者は皆死ぬ。」
「呪いだ、厄災だ。」
「早く手を考えないと。」
「殺すしかない。早くあいつを殺すんだ。」
こうして少年は『白き厄災の子』として、名が広まっていきました。
その名は村を越え、その地方では知らない者はいないくらい有名になりました。
そんなことを知らない少年は、行く先々で酷い目に遭わされました。
ある村では石を投げられ、他の村では矢を放たれ、また他の村では銃を撃たれました。
しかし、少年が死ぬことはありませんでした。
石も矢も銃弾も、体にかすりはしましたが、直撃する事は一度もなかったのです。
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「どうして?」
少年は彼女に聞きました。
「どうして当たらなかったんだ?」
「実は当たらなかったのではなく、当てれなかったのですよ。」
「どうして?」
「少年に当たる直前に、全て消えてしまうからです。」
「え?」
少年は頭を抱えて、うーん、と唸る。
「よくわかんないよ。」
「『彼は特別だった』てことだけ覚えていれば、いつか分かりますよ。」
ええー、今知りたいよー、と駄々をこねる少年に彼女は優しく声をかけた。
「あなたは本当に知りたがりですね。──でもダメです。今日はもう遅いからまた明日にしましょう。」
「絶対だよ?約束だからね?」
「ええ。約束です。」
静かな夜。
月は雲に隠れて見えないが、今日は確か満月のはずだ。
彼女は少年が完全に眠ったのを確認して、消え入る声でこう言った。
「おやすみなさい、グレイスピア。もう少しでサヨナラです。」
城の鐘の音と共に月が雲から現れる。
窓からその部屋に差す月光に紛れて、彼女は姿を消した。
こんにちは。ななるです。
この作品は『うちのドッペルゲンガーはなかなか俺を殺さない』の外伝です。そちらを読まれていない方は、ぜひそちらから!
さて、次回。「後どれくらい続くのか。」
次回があれば、またお会いしましょう!




