(1)
これは『うちのドッペルゲンガーはなかなか俺を殺さない』の外伝です。そちらを読まれていない方は、ぜひそちらからお読みいただけると嬉しいです。
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「ねぇ、ママ?」
少女は彼女の袖を引っ張った。
「遊ぼ?」
外は真っ暗。月すら今日は顔を出していない。
「ねぇ、遊ぼ遊ぼ?」
少女が動くたび、かかっている布団がずれていく。
「ダメですよ。もう夜ですから、おやすみなさいの時間です。」
彼女は出来るだけ小さな声を心掛けた。
「でも眠たくないもん。」
「目を閉じて、じぃっっとしていたら自然と眠たくなりますよ。」
「嫌々!眠たくないから眠たくないんだもん!」
ベッドの上で足をバタバタさせる。
うーん……遊ぶといっても……うーむ。
「なら、羊さんを──」
「それは無しで。」
うーん、仕方無いですね……
彼女は布団から少し腕を出して、空中に複雑な模様を書き出した。しばらくして、それがちゃんとした『陣』を描いたとき、空中に一つの絵が現れた。
「遊ぶことはできませんけど、これで我慢してくださいね。」
少女はすでに空の絵に夢中だ。
「じゃあ、始めますね──」
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『白色の少年』
昔々、ずうっと昔、まだ神様がいた時代、人々はお金や土地のために様々なところで戦争をしていました。
戦争、といっても村と村が戦う、とても小規模なもので、その後に起きる、いわゆる『世界戦争』とはかけ離れたものです。
そんなある日。当時一番強かった村で不思議な子供が生まれました。
髪も皮膚も瞳の色も、全て真っ白な男の子。
その子の母は、その子を生むと同時に死んでしまいました。次の日にその子の父も死にました。兄弟はいません。
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「何で死んじゃったの?」
「代償、です。」
「だいしょー?」
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産まれたばかりの一人ぼっちの男の子。誰か引き取ってくれる優しい人が現れそうなものですが、何しろ白い子供でしたから、誰も気味悪がって引き取ろうとはしませんでした。
当時、白色は世界の終わりを表す色として嫌われていたのです。
町の人々が話し合った結果、その子の母の妹のところに預けることになりました。
彼女は最初は嫌がっていましたが、その子の親のお金がたくさん貰えることを聞いて、すぐに引き受けることにしました。
彼女は貰ったお金で、毎日いろいろなことをして遊び、その子をほったらかしにしていましたが、その子はどういうわけかすくすくと育っていきました。
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「この子、この前の子に似てる。」
「ふふ、そうですね。」
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その子には名前がありませんでした。五歳ぐらいになって、やっと今まで呼ばれていた「おい」とか「お前」が自分の名前ではないことに気がつきました。
その子には友達がいませんでした。五歳くらいになって遊び盛りというときに、義母はお金を使いきり、働かせられることになったのです。
その子にはわかりませんでした。愛とは一体何なのか。
家では義母にいじめられ、仕事にいってもいじめられる。いつもひとりぼっち。話し相手は雲の上。
ある日、義母が少年を奴隷市場に出すと言いました。まだ五歳の少年には、それがなんなのかわかりませんでしたが、良くないところなのだろうということくらいは分かりました。
必死に抵抗しましたが、五歳の力ではどうすることも出来ません。
ついに義母に体を持ち上げられてしまいました。
少年は心の底から思いました。
『こんな人、いなくなってしまえばいいのに。』
すると目の前が急に眩しくなって目を閉じると、体がドサッと床に落ちました。
周りに義母の姿はありません。
ちょっとの間探してみましたがどこにもいませんでした。
少年は自分が何かとても恐ろしいことをした、ということに気がつきました。
怖くなって数日間、じっと自分の部屋の中にいました。
時々、お腹が空くと、急に目の前が光って、食べ物が出てくるのでそれを食べました。
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「──しばらくたって、ってあれ?」
少女はスースーと可愛らしい寝息をたてて寝ている。
「……続きは明日ですね。」
彼女は布団を少女にかけ直し、優しく撫でた。
「おやすみなさい、リンナ。」
こんにちは。ななるです。
この作品は『うちのドッペルゲンガーはなかなか俺を殺さない』の外伝です。そちらを読まれていない方は、ぜひそちらから!
今回は数回に分けて投稿です。
次回、「投稿はいつになるのか。」
次回があれば、またお会いしましょう!




