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酒の席と旅の道中は人生について語ってしまうものだ

 創造生命体 屍霊形種とは、死で、屍で模られた器に死霊や魂が一つから複数体分入ったものである。

 種族特性は、器の基となった屍の能力の一部引き継ぎと現世うつしよへの魂定着である。

 しかも、引き継がれる力は基になった者達の数に比例して強くなり加算されていく。

 この特性故に同属であっても個体差が激しいのだが、これもまた種族特性と言えるだろう。

 これは、創造生命体 合成獣属 キメラと似ている。

 合わさる数が多ければ多いほど魂の拒絶反応も強く出るのだが、ここもある意味キメラと似ている。

 勿論、違いの方が大きい。

 屍霊形種は、神聖属性に弱いのと肉体と魂が成長も回復もしないという大きな欠点を持っている。

 メインレベルと呼ばれることが多い種族強度レベルを上げることは可能だが、レベルを上げても肉体的に精神的に成長改善することがない。

 故に、キメラなどと比べられる際は脆弱種族として扱われ差別される。

 だが、彼らはそれに反論できない。

 安定した魂を保つことが難しいのでそれに言い返す意思を保つことも難しいからだ。


 嫌われ者。


 好んで造られることは少ない。

 だから、数が少なくイメージもしづらい。意見が偏り偏見を生む。


 厄災。


 彼らの代表格は、屍霊形種 屍霊龍属 ドラゴンゾンビ と 屍霊形種 屍霊龍属 スケルトンドラゴン だ。

 この二種の違いは、ドラゴンの屍を器にしたものがドラゴンゾンビであり、死骸からドラゴンの魂の器足りうるものを造りドラゴンの魂を定着させたものがスケルトンドラゴンだ。

 ドラゴンゾンビは生きたドラゴンよりも弱いうえに意志の力も弱いので、駆け出しのウォーカー達の腕試しの定番となっている。

 これが脆弱種族のイメージをより強くしている。

 更に言うならば、より強い生物を生み出そうとして造られたキメラや、物理攻撃不可の死霊に比べられることも多いため脆弱種族のイメージはさらに膨らんでいる。


 『スケルトンドラゴンは違う。油断するな』


 これは、ウォーカーの教訓となっている言葉だ。

 ドラゴンの魂の器足りうるものを造るには数多の死骸が必要だ。だから、スケルトンドラゴンは必然的に強くなる。

 ただ、拒絶反応も強くなるので、数はドラゴンゾンビに比べ圧倒的に少ない。が、被害は圧倒的に大きいので代表格としての地位を得ている。

 喜ぶべき椅子ではないかもしれないが。


 なんせ、どっちつかずの脆弱種族の代表の椅子だから。

 出来損ないの王と呼ばれるようなものだ。



 そんな、屍霊形種。


 ここにもそんな屍霊形種の一体が森の中を走っていた。


 その屍霊形種の名は霧曇うつろび 蓮華れんげ

 美しい女性の見た目をしているので一体を一人に訂正しておこう。

 一人の屍霊形種が森の中を走っていた。


・創造生命体 屍霊形種――【 Clown=Lord の怪物 】

・ステータス―――――― 屍霊形-0歳 体長-136㎝ 体重-38㎏ 性別-? 種族強度【 Lv.6 】 クラス【 無職 】 霊力【 930 】魔力【 1520 】肉体強度【 583 】出力/筋力【 634 】

・スキル―――――――― 【 人を呪えど穴一つ 】【 菌と死体はお友達 】【 魂ノ捕食者 】【 狩人ノ才 】【 ロンサム 】【 地点Fヲ超ユル者 】


 この世界に一人しかいない屍霊形種【 Clown=Lord の怪物 】

 見た目的には彼女と言いたいところだが、中身は男なので彼と呼ぼう。

 彼は森の中を驚くべき遅さで走っていた。



   *



「やっべぇ、凄い疲れるなこれ」短い距離なら凄い速く移動できたのに長距離を走ろうとしたら、長距離を走ろうと思ったら、まるで前に進まなくなった。

「なるほど、やはり Clown=Lord 様が仰っていた通りでござるな」

「壊れても治らないから制限として疲れを入れたんだっけか?」そう、これが長距離を走れない理由だ。Clown=Lord が白彦を用意したのもこのためだろう。長距離を移動できないんじゃ旅どころではないからだ。

「さようでござる。加減が分からずに動かして壊れたら大変でござるからな。でも、レベルを上げると馴染み慣れてより強い力が出せるでござるよ」そのレベルアップには、鍛錬と戦闘が大事だそうだ。

「何で、そんな大事な話を本人にしてくれなかったんだ」

「ハハハ、そうでござるな」

 まあ、でも。人間であった時も疲れる事はあったし、さほど問題でもない。この体は眠る事や呼吸を必要としないしお腹もあまり減らないから色々な所に行けそうだ。長旅にもってこいの体だ。

 喜ぶべきところの方が多い。



「あー、あと何だっけ? スキルがどうとかも言っていたんだよな」

「スキルのおかげで食事ができるでござるよ」

「おお、それだ!旅の醍醐味! Clown=Lord はさすがだぜ!お腹が減るのはそのおかげでもあるんだよな」元人間の感覚として、お腹が減る感覚が当たり前すぎてスキルのおかげだという事を忘れていた。

 屍霊形種は本来食事をとる必要性がないらしく、食事がとれるのは Clown=Lord が気を使ってくれたからだ。

(感謝だぜ。ありがとう!!)

「あとレベルアップで強くなれるでござるよ」

「何言っているんだ。レベルアップしたら強くなるだろう。レベルアップってそう言う事だろう?スキルとかじゃないだろう?」ゲームだとそうだ。

 白彦に先ほど教えてもらったのだが、この世界にはゲームの様にレベルの概念と仕組みがあるらしく、生きていく上では凄い重要なことだそうだ。

 確かにゲームと同じなら重要すぎる。

 だから、何で人間は知らなかったのでござるか? と、凄い聞かれた。

 人間は自分の階級が低いと不満を持つことが多いから、人間社会の上層部が握りつぶしたのだろう。

 そう思った。

 が、これは別の話だ。

 本題に戻ろう。

「レベルが上がれば、普通に強くなるだろう」

「普通はそうでござるが、屍霊形種はレベルアップしても強くならないでござるよ。

 屍霊形種にとってのレベルは熟練度や年齢みたいなものでござるからな。

 稀に、レベルアップで強くなる個体も居るでござるが基本的にはレベルアップで強くなることは無いのでござるよ」

 初めて知った。でもたしかに、傷ついても治らないんだし成長することもないか。

「なるほどな。俺はその稀な個体なわけだ」レベルアップで強くなる他の個体も俺と同じくスキルによる効果なのだろう。

「特別の特別でござるよ」

「白彦、オマエもその特別の特別な屍霊形種なのか?」


「拙者は屍霊形種ではないでござる。聖獣の神獣でござるよ」


「え、そうなの!?」屍霊形種だと思ってたら神獣だった。「神獣って何だっけ?」混乱した。

「この世界では、神様のペットや騎獣を示す言葉でござるよ」

「なるほどな… ???」

「変な顔してどうしたでござるか?」

「え!? オマエ、神獣って事は、神様の…   !?」受け入れられない。だって、白彦だぞ!?

「神様の騎獣でござるよ」

「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」

「驚き過ぎでござる」

「いやいやいや!!! ええ!?だって、何で??」

「神様がそう創ったからでござる」ヤバい、失礼なことを言ってしまった。


「そ、そう言う事じゃなくて、何で俺に???」ごまかした。

「 Clown=Lord 様が決めたからでござる。まあ、拙者も面白そうだからそうしているでござる」ごまかせた。

「いいのか?? 神獣なんだろう??」

「 Clown=Lord 様は神様が創った自らの愚像でござる。神様が死んだ今、次の神様が決まるまで Clown=Lord 様が神様の代わりを勤めているのでござる。その Clown=Lord 様が決めたのでござるから何も問題は無いのでござるよ」

(え!?)

「 Clown=Lord っ… さ、様ってそんなに偉かったのか… 」

あるじは気にしなくていいでござるよ」

「しかし…」神様の代理を呼び捨てにしたら不味い気がする。

「【 Clown=Lord の怪物 】は別に Clown=Lord 様の眷属という事ではござらぬし、神様も Clown=Lord 様も信仰心なんて気にしてござらぬよ」

「世界を、神さえも創りし神の余裕か… 」その程度でプライドが傷つく存在ではないか、懐がデカい。

「そんな感じでござる。もとより『好きに生きろ』が神様のお言葉でござるから、あるじも好きに自然体でいれば良いのでござるよ。無理に取り繕う必要は無いでござるよ。旅であろうとなかろうと」

「んー。神の馬に乗っていていいのか?」

「今は霧曇うつろび 蓮華れんげ殿があるじでござるよ」

「そうか… 分かった」あまり分かってはいなかったし、深く考えてもいなかった。が、全てを受け入れようって、自分で言っていたのを思い出した。


「ん?」そういえば「俺が小さいのって、馬を用意するから材料が足りないっていう理由じゃなかったのか」

(今の話しだと俺が生まれ変わってからどころか、俺が産まれる前から白彦って生きてる感じだから、白彦を造ったわけではなく、連れてきただけだよな。なら、材料とやらは要らないはずだ)

 それとも、考え違いだったのかな。

「ぬ? そうなのでござったか。 確かに拙者を蘇らすのには材料が多く必要だったでござろうからな」微妙に話がズレているが、俺が小さい理由はわかった。

「やっぱり材料が足りなかったのか」白彦は蘇って此処に居るという事実に驚いたが、自分の死については語りたくないだろうから触れないで置いた。

 自分もあまり触れられたくはないし、語りたくない。

 その理由は自分でも分からない。

 取敢えず話を変えよう。

 そもそもこの話自体が本筋からズレている。


「まあ、ともかく、Clown=Lord のおかげで強くなれるし旅が楽しめるってことだな。 よし!鍛錬の続きをしよう!」


「ぬぬぬ! いつの間にか足が止まっていたでござるな!」

「ハハハ、よし!行こう!!サポート宜しくな!」レベルアップで色々な所に行ける可能性も上がるんだ。なら、なおの事レベルを上げるしかない!!頭を切り替えよう!

「任せるでござるよ! 本当は実戦が積めれば一番なのでござるが、地道な努力も大事でござるから頑張るでござるよ!」

 努力するのは嫌いだ。

 でも、

「地道でいいよ。戦いはあまり好きじゃない」走りながら答えた。

「ぬ? あの見事な拳を持っていて何を言っているのでござるか?」俺の拳が見事かどうかは知らないが、思い切って殴ったので威力はあったと思う。

「瞬殺しないと可哀想だろ」苦しむのが一番辛い事なのだと思うから一撃で諦めをつかせた。

「姿が似ている者を手にかけるのは辛くかったのではござらぬか?」


「ん? いや全然」


 人間は神の死亡報告兼 代理戦争についてのお知らせがあったという日から、ストレス軽減のために人間以外の人型を殺す事に対して何も思わなくなったり、仲間割れを避けるために仲間意識が強くなったりしたらしい。

 結果として人間は人間以外が感覚的に同じ者に見える様になっていたそうだ。

 ある意味そこに差別はない。

 人間以外は皆、同じ命なのだ。

「そうでござるか」平坦な声だった。白彦は馬なので声を平坦にされると感情が読めない。

「悪い奴は誰かが裁かないと悲しい物語が増えるだろ。だから、悪い奴に会ったらなるべく懲らしめる事にしているんだ」殺した事への言い訳の様にも聞こえたかもしれないが、言い訳をする理由も必要性も無いので分かってもらえるだろう。

 因みに、善悪の判断は人間の法律を基に、俺が世界はそうあってほしいという願いを込めて決めている。

「そうでござるか」少し明るい感じはしたが、断言はできない。

「そういえば何で旅がしたいと思ったのでござるか?」話を変えようとしたのか、唐突だ。

 でも、運動中の無言は嫌いなので丁度いいと思った。

 まあ、別に話の内容は何でもいいのだが。

 しいて言うなら、話に夢中になり過ぎると足が止まるので適当なのがいい。

 その点から見ると、丁度いい会話の種だと思う。

「街の皆が旅をしたいって言っていたのを小さい頃から聞いていたからかな」職業も旅をしている気分が味わえるかもしれない、という理由で選んだ。

「他には無いのでござるか?」人が居ないからかな。いや、違う気がする。

(あ)

「あー、あったあった」たぶんこれだろう。自分の事だが、確証はない。

「何でござるか?」

「幸せを感じてみたいからかも」

「うつ病なのでござるか?」共通言語で翻訳されているって事は、うつ病ってこの世界にも有るんだなと思った。


「いや、違うけど」

「恥ずかしい事ではござらぬよ」本当にうつ病ではない。

「幸失症ってやつだよ」

「それは何でござるか?」

「脳機能的に幸せを感じなくなってしまう症状の事だ」50年くらい前から一般にも知られるようになった症状だ。幸失症って名前もその時についた俗称だ。正式名称は忘れた。だから通じなかったのかもしれない… 。

「その症状は何処かで聞いたことがあるでござるな」やはりそのようだ。

「しかし話を聞くに、幸せを感じるのは無理ではござらぬか?」

「ハッキリ言うな」思わず足を止めて振り返った。が、白彦の馬面を観たら足を止めるのが無駄に思えたので再び走り出した。

(はぁ、まあ、俺もそう思うよ)

「でも、生まれ変わっているから感じるかもしれないでござるな。しかも、法の穴を掻い潜るために別の種族になっているのでござろう。仕組みも変わっているかもしれぬでござるよ」

(法の穴を掻い潜るって、確かにそうだけど、言い方があるだろう)

 でも、確かに言う通りだ。幸せを感じることが出来るかもしれない。

「確かに…   あ、感覚は人間の時と同じだぞ」ぬか喜びした。

あるじはレベルアップで成長改善もできるでござるから。本気で願い、叶える為に努力すれば叶うかもしれぬでござるよ」

「おおおおおお!!!」なるほど!! Clown=Lord いや、Clown=Lord 様!! ありがとうございます!

「鍛錬あるのみでござるな」

「おお!!」俄然やる気が出て来た「あ、でも、幸せが何か分からないから知る事から始めないとな!!」

「そうでござるな」優しい声だ。断言できる。

「人間の時にしなかった事や出来なかった事もした方がいいかもな」

「確かにそうでござるな。でも取敢えずは、走る鍛錬を続ける事から始めるでござるよ」

「あ」いつの間にか足を止めていたようだ。

「行くでござるよ!」

「おお!」三度走り出した。


(そういや、人型を殺すことはあまりしてこなかったな。

 あの時、本当に何も感じなかったのだろうか?

 まあ、いいか。

 読んだ本に書いてあったけど、幸せとは考え込んだところで分かるようなことではないらしいから。

 いずれ分かるだろう。

 いずれ感じるのだろう。

 だといいな。

 もしそうじゃなかったらどうすればいいんだろう)





 冒険譚とは事実とは違う事を書かれることが多い。

 歴史も戦争もそうだ。

 他にも色々あるが、こういったものには大きな共通点が二つある。

 それは、強調することと、何かを隠すことだ。


『100万を超える同胞の灰を抱き、仇である魔物の皮を被る者。霧曇 蓮華よ、君の旅路に幸あれ!!』


 彼は、たとえ望まなくとも、望まれなくとも、幸せになれる。

 Clown=Lord の手によって。

 幸せになってしまう。




お読みいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いいたします。

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