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勇者男と愉快な仲間達

お楽しみいただけたら幸いです。


 弱音を吐けば楽園ユートピア

 なのに、何で?

 アナタは此処にいないのかな… ?


 嗚呼ぁ


 嗚呼ぁ


 嗚呼ぁ


 私が嘘をも叶えてあげるのにな…




   *




「霧曇さん!?ちと高くないですか!?!?!?」

「そんなことないですよー、上空 500M くらいですよー」

「いやいやいや!!!滅茶苦茶高いですよそれ!!!」

「白彦ーーー!アーロンさんがーーー!もっと高くしてだってさーーー!」

「分かったでござるよーーーー!!!」

「白彦様ッ!!! 俺は!!!!!そんな事言ってないですッ!!!   って!?わぁぁぁーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」


「 S F C《Sirohiko Flying Carriage》は、現在、上空 500M を時速 230㎞ で走行中でございまーーーす!」上空を走行中… フフフッ


「何語なんすかそれ!? いや!そんなことよりも!!! もうちょい常識的な場所を走りましょうよ!!! お願いしますから!!!」どうやら、アーロンさんは高所恐怖症のようだ。

(そういえば高層建築物も見ないし、飛行が出来る様な魔法が使えなければ高い所が怖くて当然と言えば当然かな)獣人の魔力の性質は『魔力を生命エネルギーに変換する』だったので、翼や膜の様なものが無ければこんな高さを経験することは少ないだろう。

(脚力だけでくうを蹴り上りそらを駆ける魔物とか居そうだな。人間の戦士の中には近い事をする奴が居たそうだし)


「お腹もすいたしそろそろ降りようかー」風に負けないように白彦に声を飛ばすのもそろそろ面倒になってきたし。

「了解でござるよーーー!!!」


「蓮華様、白彦様、少々よろしいでしょうか?」

「何?どうかしたの?」急に男前な顔が直ぐ隣に来ていたのでビックリした。

「あそこに何か居るわよー」

「王にたいしてお伺いを立てずに… お里が知れますね」

「ハハーン、私が魔王ちゃんにベタベタしてるのに嫉妬してるのかなぁー?」

「   …そ、そのような事は無い!王にたいしてその様な気持を… 不敬だとは思わないのか!」

「そんなこと言われてもなぁー、私の王様じゃないからなぁー」

「だいたい貴様は観光目的でこの旅にだな… はぁ、貴様にかまっている時間が惜しい。 蓮華様、申し訳ございません」

「いいよいいよー、大丈夫だよ」そんなに深々と頭を下げなくてもいいと何度も言っているのになかなかなおしてくれない「あの蟲達の事だよね」2000はいるのだろうか、人間代の蟲達が大進行をしている。

「ええ、ですがその先の5人組の方が面白いかと」

「ん?」裸眼では見えないので金剛石でレンズを造り幾重にも重ねて望遠レンズを造る。闇属性の黒色の魔力でしぼりを作り出して入光の加減を調節し、その5人組を見た。


「ウォーカーかな?」




   *




 俺は随分と長い時を暗く深い谷底で、途方もない意識が虚ろになってしまう程の長い時を奈落で過ごした。


「本当に大丈夫なんですか??? 凄い数の蟲人ですよ!?」


 自室でゲームをしていた俺は寝落ちし、目を覚ましたら奈落に居た。


「マスターなら問題ありません。 ですよね?マスター」


 最初は夜中に目が覚めたんだと思って二度寝したけどいつまで経っても明るくならないしベッドは獣臭いし、不安と焦りから必死になった俺はどうにかこうにか灯りを付けて異変に気が付いた。


「勇者様なら楽勝です!」


 大モグラの背に乗りメニューウィンドウの光を頼りに暗黒の中を生きた俺は様々な力を手にすることが出来た。


「勇者様!どうか、この谷の先に在る私共の国を蟲人達からお救いください!お救いくださればわたくしは貴方様の… 」


 何で俺がこの世界に来たのかは分からないけど、俺はこの世界で運よくここまで生きてこれた。


「任せてくださいよ」


 仲間達に下がっているように指示を出してメニューからマップを開く、映し出された敵の数は 2563 平均レベルは 25 この世界ではまあまあの強者達だ、が。


(奈落で鍛えられた俺の敵じゃないね)


 光の感覚魔法を発動させる。

 この世界の人々には扱い難い代物だという【 感覚魔法 】だが、奈落の底で光を求めた俺は死ぬ気で、自然と、生きる為に身につけていた。


 【 ライトニングスラッシュ 】


 剣に光を纏わせ光の斬撃を飛ばす。


「スゴイ…」

「流石ですマスター」

「スゴイですよー!」

「カッコイイ」


 200 近い敵を切り捨てたがまだまだ居る。


「先頭が死んでも止まらないか、それなら仕方がない」


 この谷の先に在る小さくも緑に囲まれた自然豊かなあの王国を護る為に、こいつら蟲人は此処で殺す。

 生きる為には殺す選択を取らなければならない事が有る事を俺は知っている。

 だから、手加減はしない。




   <ドッオンッ>




「え… 何が起こったの???」

「マ、マスター… ?」

「嘘… ですよね、勇者様!?」

「死んじゃイヤァーーーーーーッ!!!」




「うっわ、死んじゃったね。ごめんごめん」金剛魔弾の超遠距離型【 一式長筒金剛魔弾 】金剛石で作ったスコープを上部に取り付けた【 一式金剛魔弾 】の飛距離強化型だ。口径が小さいので威力は劣るが有効射程は 2~3㎞ と長いので挨拶代りに撃ってみた訳だが…


「全然弱いじゃん、魔物じゃないじゃん」


 アンリとスイニーンさん、それに白彦も含めて三人が『この世界とは違う魔力を感じる』と言ったので、魔物だと思い、力を見る為に挨拶代わりに一発撃った訳だが…


「グッチャグッチャじゃん、汚いなぁ」

「スイニーンさんも違う魔力を感じるって言っていたので、魔物かと思って撃っちゃったじゃないですかー」

「私のせいにしないでよ魔王ちゃん、それに魔力とかそんなことは言っていないわよ。私は『妙な力の流れを感じるわ』って言ったの、魔力と言ったのはアンリ君の方よ」

「なるほど、妖精種のエルフは見えているものが違うのですね」『妖精種』というだけあって魔力の流れや力の流れを感じられるのかもしれない、白彦もそうなのだろう。

「 ん~…、まぁ、そんなところね」

「ところで… 」スイニーンさんも私と同じ事を思っているはずだ。

「ちょっと五月蠅いわね… 」蟲の大群が迫って来ていた。慌てて白彦の曳く馬車から飛び降りて来たので蟲を別の場所へと誘導するのを忘れていた。

「興奮しているから殺すしかないんじゃないのぉ、これ」のん気に蟲を指さすスイニーンさんは欠伸をしている。


「ですかねー」


 スコープを無くし、筒を太く短くして三つに増やす。

 撃つ、魔弾形成、装填完了を流れ作業で繰り返し行い連射をし続ける【 技 】を発動させる。


「【 三筒式金剛魔弾 】」

「じゃあ、私も連射で行きますかねぇ、【 双拳銃乱舞 】」スイニーンさんは魔力を弾丸として飛ばす拳銃を二丁手に取った。


   <ドガガガガガッガガガッガガガッガガガッガガがッガガガガッガガガッガガガッ>


 金剛石の弾丸が蟲を木を岩石を貫き最後尾まで到達、目標を貫き役目を果たした金剛石は遺灰へと戻り霧曇うつろび 蓮華れんげへと帰還する。

 種族特性の【 ネガティブチャージ 】により穢れを吸収し己が力へと変換する霧曇うつろび 蓮華れんげは戦場においてこの【 技 】を殆ど、いや、殺した相手の魂を掌握するのだからお釣りがくる程のノーリスクで発動し続けられる。

 だが本来なら【 ネガティブチャージ 】をし続けると精神の崩壊、精神のアンデット化が進み亡者となるのだが、霧曇うつろび 蓮華れんげは【 人を呪えど穴一つ 】のスキルを保有しているので悪行による一切のリスクを受け付けない。


 稲刈りを、落穂を拾うも民の仕事。

 その王、魔王は、魂でさえも搾取するのみである。


 【 魔王 】霧曇うつろび 蓮華れんげは魂を捕食し回復した。

 人間やミル族などには実行の難しい行為である。

 ミル族や人間の魔力量がゴブリンや下級悪魔にも劣る理由はここにある。

 ミル族はたんにその機能が弱く、人間は輪廻という環境があったが為に魂を捕食するという事がほぼ無かった。

 野生動物達はより多くのエネルギーを得る為に、質や量は様々だが魂ごと捕食する。

 これが魔獣の発生する理由であり、人の社会に死霊が淀みやすい理由でもある。


「なんだか、お腹いっぱいになっちゃったなー」

「蟲の死骸を見て食欲が無くなっただけじゃないの?」

「そうかもしれないですね」




   「あんた達!!!いったい何なのよ!!!」




「ん?ああ… えっと… 」

「魔王とそのお友達」


「ふざけるな!」

「マスターを返してください!!!」

「勇者様を魔物と言ったり頭おかしいんじゃないのかッ!!!」

「ああああああああああああああああああッ!!!!!」


「五月蠅い、黙れ」


「「「「     」」」」


「蓮華様~!」私達が撃ち終わるのを待って降りてきた白彦が減速しつつ駆け寄って来た。

「白彦、アレ治せる?」頭の吹き飛んだ人の死体を指さす。

「肉体を治すのは容易でござるが、魂はお持ちでござるか?」

「うん、持ってるよ」

「なら、容易いでござるな」


 とりあえず、復活させた。


「起きなさい」


「うわああああああああああああああああッ!!!!!」


「「「「 !? 」」」」


「じゃあ、ご飯食べに行こうか」近くにある小国に寄ろうと思っている、

「よいのでござるか?   この者は神の代理者であったようでござるが」

「え!? この弱いのが!?」殲滅がルールの戦争、純粋な力だけが生物としての強さではないが、いくらなんでも弱すぎる。

「『あった』? ああ、魔王ちゃんが生き返らせたから別の種族による『生』で反則ってことねぇ」なるほど、ね。

「仮想系のシミュレーションでござるか? それを行う『ゲーム』とやらをしていた時にこの世界へ来たようでござるよ」

「何でそれを!?」白彦は相手の秘め事を見ることができる。そして、幻術などで本人が認識することなく認識ごと変えられていない限り白彦は嘘をつけない。

「ええ~、この弱いのが魔物かぁ…」ゲームというのもまた何とも言えない。

 こちらの世界と同じ世界観のゲームを造り、適性の有る者を送り込んできたのだろうか… ?

「同郷の者と思われる者達の痕跡を見たり知ったりしてる? 答えろ」

「ぅがッ、   …あります」なるほど、その他の人達に期待するとしよう。

「あえて、弱くし見分けをつけさせなくして蟻の子を散らす様に世界中にかぁ。なるほどねぇ」スイニーンさんは魔王や魔物に興味津々だ、色々面白がっている様子で、その立ち居振舞いは戦国史好きの女性を思わせる。

「蓮華様、弱いと言っても我々からしたらですよ。『双葉』は先程の蟲たちにでさえも脅えておりましたから」震える双葉をアンリの胸から預かり受ける。

「面倒見てくれていたんだね、ありがとう」と言っても5分くらいだが「怖かったねー、もう大丈夫だよー」

「感謝のお言葉など、勿体なきお言葉」

「子供じゃないもん!」

「あはははは、双葉ちゃ~ん!」上質な木棉わたと女の子の柔らかさを併せ持つ双葉を抱きしめると癒される。新しく住む場所を見つけるまで、と期限付きだが旅に同行してくれていて凄い癒され助かっている。ドラゴンを貫いた金剛魔弾が双葉の作っていた寝床ならぬ根床を壊してしまったので責任を取るという形ではあったが、預かって良かった。

「双葉ちゃ~ん!可愛いよ~!」癒される。せっかく作った根床の前にドラゴンが居座ったせいで途方に暮れ、旅人や商人の後をつけたりして暇を潰していた時の話を一生懸命に話してくれたりして、本当に可愛い。

 そして、愛おしい。

 何故か白彦が『双葉ちゃんばかりずるいでござるな~』と拗ねたりしているのが見ていて地味に面白い。


   「お前らいったい何なんだよッ!!!!!」


「あ… そういえば君達さ、【 ボリュート 】とか、その周辺地域に行った事ある?」

「「「「「 ?????????? 」」」」」どうやら行った事は無い様子だ。

「じゃあ、もう用は無いから、じゃあねー」


   「お前ら何なんだって言ってんだろうがよぉッ!!!!!」


「五月蠅いぞ、小僧」アンリがどすのきいた声で圧を掛ける。

「俺は勇者だぞッ!!!!!」それがどうしたというのだろうか?

「神獣様がこのような事をするはずがございません!!!!!きっと幻術の類か何かです!!!!!」白彦の光のオーラを感じ取れないとは、なんとも哀れだ。

「幻術か、納得だよ!勇者がやられるわけがないもんな!!!!!」勇者男ゆうしゃおとこと愉快な仲間達は辻褄の合わない幻術説を信じようとしている。

「哀れだなぁ」スイニーンさんは欠伸雑じりにそう言い残し馬車に乗り込んだ。


「霧曇さん、魔物が相手なら俺は目を瞑っていますぜ」そう、馬車から顔を出したアーロンさんが私に声を飛ばす。高所恐怖症がたたってか、高所酔い、馬車酔いをしている様子で顔色が悪そうだ。毛に覆われているので肌の色を窺い知る事は出来ないが、とりあえず目が虚ろなので体調が悪いのに間違いは無いだろう。わざわざ意見を聞かせてくれただけでもありがたいので笑みを浮かべて礼を言う。

「ありがとうございます」私の言葉にアーロンさんは笑顔で返してくれたが、顔色は悪いままなので、今はそっとしておこう。


 ウォーカーの責任ある立場であるアーロンさんがああ言うのにも訳がある。

 それは、魔物が外来生物だからだ。

 しかも、この世界の生態系を脅かす程の力を持った驚愕級の危険外来生物だ。

 だから、殺すのを黙認する『様な』事を発言したのだ。

 惚けた人だが色々と大変なものを背負っている人でもある、だからアーロンさんには馴れ馴れしくならないようなそれなりに砕けた敬語で話している。

 アーロンさんもそんな感じで接してきてくれているので、対応がとりやすくて助かっているし、少し嬉しい。

「無暗に他種族を手にかける様な輩は苦手でござるよ」白彦は食べている草に苦虫が付いていた時の様な顔をして言葉を続ける「勿論同種族を手にかける輩も苦手でござるが、他種族だからと命を無下に扱った罰は償うべきでござる」

「そんなこと言ったらそこの女達の方が殺しまくってたじゃないか!!!」

「マリーンの言う通りです!!!!!」


「え?」せっかく良い気分だったのに、少し不快にさせられた。

 元狩人であり、魔王として生み出され神から受けた教育を思い出しつつある私が命を無駄にするはずがないのに。

「いやいやいや、ちゃんとよく見なさいよ」


「「「「「 !? 」」」」」


 蟲が蠢く。




     奥技:【 金剛魔像 】




 死体に金剛石を纏わせ強化しつつ使役する奥技だ。


闘蟲火草とうちゅうかそうの胞子共よ、この苗床に感謝しその一生を【 魔王 】霧曇うつろび 蓮華れんげ様に捧げよ」本来は掌握した魂を入れるのだが、アンリの提案により死体に合わせた様々な【 邪菌 】を宿らせバージョンアップさせる事にしたこの【 金剛魔像 】は少し異様だが有能な部下を生み出せるので使い勝手が良い。


『『『『『『『 我らが王に全身全霊の忠誠を捧げます 』』』』』』』


「あ、悪魔ぁ…」角の様なものが生えた煌びやかな外殻を持つ燃える蟲、その表現は妥当なのかもしれない。

「女の子なのにおもらしさせちゃったなー… 何かごめんね」とりあえず謝っておいた。

「蓮華様がこのような者共に対して頭を下げる必要などございません! 蓮華様の御前にて失禁したこの者こそが頭を下げるべきなのです!」失禁した女の子はアンリの言葉に身を震わせて更に地面と己が衣服を湿らせる。

「貴様を生かしておくことは出来ないようだな」そう言いながら勇者男が私に剣を向けて来た。「これが幻術であったとしても、こんな事を考えているような奴らは生かしてはおけない」何をかっこつけているのだろうか?


   はぁ… 馬鹿の相手は疲れるなー…


「この世界への適性が有るって事は、元の世界ではそれが無かった可能性が高い訳だよねー。元の世界に戻ろうとしている様子は立ち居振舞いからは見受けられないし、お仲間からの勇者様発言に気分良さそうだし」

 元の世界に帰りたい者が別世界から来た事を知っている者に出会ったら、普通は、望みが薄くても帰り道についての探りを入れてくると思うのだが、この勇者男にはそれが見られなかった。いや、この世界への適性、帰ろうとしない者も選ばれてきているわけだからそれも正しい行動の一つなのかもしれないが…


   ん?


「アナタってけっこう歳いってますよね」白彦の話しからするとこの人本人が初代の代理者である事は確かだ。「少なくとも82歳以上ですよね?」それにしては中身も見た目も若い。

「俺は勇者だぞ、特別だからに決まっているだろうが! さっきから、幻術使いごときが俺様をおちょくりやがって!!! 苛つかせるのだけは一流のようだなぁッ!!!!!」

 なんだこいつ、話しにならないなー。

 アイデンティティとプライドを傷つけてしまったようだ、縄張りを荒らされていると勘違いして威嚇してきている。

(鬱陶しいなー)

 若さの秘訣が種族特性によるものなのか、スキルによるものなのかは分からないけど、まっいいか。

「【 勇者 】っていうのが縛りや運命、確率操作に耐性があるっていうのは知っていたけど」何というか、「哀れだなー… 」

「哀れなのは貴様の方だ、それが最後の言葉になるんだからな。他人の心配より自分の心配をするんだったなぁッッッ!!!!!死ねぇッ!!!!!」

 勇者男は素早い動きで霧曇うつろび 蓮華れんげに迫る。


「こんな見事なブーメラン、初めて見たよ。逆にありがとうだね、ある意味いいものが見れたよ」


 【 魔王 】霧曇うつろび 蓮華れんげは既に勇者男の魂を掌握している。

 この哀れな勇者男が【 魔王 】霧曇うつろび 蓮華れんげの掌の上でみっともないく暴れていただけに過ぎない。

 いや、【 魔王 】霧曇うつろび 蓮華れんげの器の、掌の大きさからすれば暴れている中にも入らないのかもしれない。


   【 金剛魔像 】


「魔王ちゃんがこの間の組み手でしていた鎧の劣化版みたいだね、あれは可愛いわよねぇ」スイニーンさんが馬車からひょっこりと顔を出し、感想を述べてくれた。

「あれはお気に入りのデザインですからね」少し嬉しい。「ちょっと似せて作ってみました~」虫には金剛石を貼り付けるだけでよかったが、外殻の無い生き物にはそうはいかないのでお気に入りのデザインで可愛く華美にまとめてみた。


「黒灰病共よ、この苗床に感謝しその一生を【 魔王 】霧曇うつろび 蓮華れんげ様に捧げよ」毎回の詠唱?、命令?、お疲れ様です。

 お疲れ様です、と言ったら面倒な事を言われたので、何か相当な事を私がお願いしない限り、もう『お疲れ様です』なんて言わないと決めている。

 だが勿論のことながら、心の中では毎回、感謝の言葉を囁いている。


「【 魔王 】霧曇うつろび 蓮華れんげ様の為に全身全霊で魔物の情報を収集し持ってまいれ!!!!!」

『『『『『『『 御意に!!!!! 』』』』』』』

「じゃあ、蟲ちゃん達も行ってらっしゃーい!」今現在、こうして造り出した1万近い眷属達を世界中に散らし魔物達に関する情報を収集している。

「この者達はいかがいたしましょうか」

「このまま放置じゃあ、あまりにも可哀想すぎるから…     あ!そうだ!記憶の改ざんを行って近くの村とか街まで送ってあげよう!」

「蟲達からこの者達を救った、というのはいかがでしょうか」

「それがいいかもね、採用!」

「既にお考えだったようですが、お褒めのお言葉ありがとうございます」


「わ、私達に何をする気なのよ!!!!!こっちに来ないでよ!!!!!」

「此処で見た事も聞いた事も何も言いません!!!!!だから殺さないでください!!!!!」

「お願いします!!!!!お助けください!!!!!お見逃しください!!!!!」

「ああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!!」


 この女の子達はこの女の子達で人の話を聞いていなかったようだ。

 まあいい、無視して進めよう。

 それが、この娘達こたちの為でもある。


「知らぬが仏、だからね」


 【 魔王 】のクラススキル【 独裁政権 】を発動させて記憶の改ざんを行った。


「じゃあ、この先にある小国でお昼にしましょうか~」

「もう御夕飯なの~」

「あ、本当だ… 」軽く皆に頭を下げつつ白彦の背中に腰を下ろす。白彦のスキル【 人馬一体 】のおかげで、双葉を抱えていてもバランスを崩すことは無い。

 アーロンさんとアンリが女の子達を馬車に乗せるのを待ってから、この先にある、緑豊かな小国【 バッジールーニャ 】へと空を駆けて向かった。


「美味しいご飯があるといいな~」

「あらぁ、食欲が戻ったみたいねぇー、魔王ちゃーん」


 やっぱ、ほっぺたフニフニには慣れそうにない。

お読みいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いいたします。

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