死んだ日
アドバイス等ありましたら、よろしくお願いいたします。
本編です。
<バコン><ドドッゴゴゴ>何かが弾ける様な、押し出され叩き響くような音が響く。その音が響き渡っているのは、上空10000㍍の極寒。そこは地上とは別世界。闇夜に紛れる様に、その世界を駆ける5つの人影。それがV字を成し空を駆けていた。
響き渡る音の発生源でもある彼らは、驚愕的な速度で空を駆けていた。そう、駆けていた。空を蹴り上がり空を裂き、力のみで空を駆け進んでいた。核融合を起こしそうな速度で進む彼らは、純機械生命体。第三ノ神の代理者。
生命を生み出す力を持ち、三番目に産まれたという事もあり、強大な力を持った神――遺産相続/集約点候補・第五位(参考:Clown=Lord )―― そんな神の代理者たる彼らの強さは常軌を逸していた。当たり前だ、種族として確立しているにも拘らず。形態や形状、複製も遠隔操作も自由自在。そして、そのうえ馬鹿げた力。まさに、魔物。
彼らが空を駆けていた理由はただ一つ、それは、任務―― 殲滅の為だ。
V字の先頭である者が声を、いや、メッセージを発した「人間の殲滅作戦決行まで、残り五分を切った」
「5677 了解。太陽のゼリー投下準備を始めます。右①投下準備完了」
「3877 了解。 〃 左①投下準備完了」
「1577 了解。 〃 右②投下準備完了」
「3677 了解。 〃 左②投下準備完了」
「投下準備完了を確認した。予定時刻 4分前よりカウントダウンを始め、高度を毎分2400㍍降下する。予定時刻ジャストに太陽のゼリーの投下、及び自爆を行う。自爆タイマーセット」
「5677 了解。自爆タイマーセット完了」
「3877 了解。自爆タイマーセット完了」
「1577 了解。自爆タイマーセット完了」
「3677 了解。自爆タイマーセット完了」
「よろしい。私は、良き部下を持った事を誇りに思う。 4分6秒前を切った。 3 2 1 降下開始」
「「「「降下開始」」」」
彼らが降下を始めた4分後、夜の大地に太陽が登った。
太陽のゼリー。それはその名に似合わず、そして、その名の通りの見た目と効果を持つ、光と熱の殲滅兵器。
人間の使う武器の中にナパーム剤と言う物があるが、この太陽のゼリーはその上位互換とも言える。
が、全くの別物だ。
この太陽のゼリーは、爆発するわけでも、燃えるわけでもない。圧倒的な高熱と全てを貫く光の矢で、熔解露散させるのだ。グランドゼロを中心とした半径250㎞が万物の霧に覆われ、光に包まれ夜が消えた。液体が、固体が、万物が、気体へと変わったことで大気が膨張していった。
そして、その霧が収縮し型を成し、真空と礫を生み出す。真空を埋める為に、グランドゼロへ向けて礫を抱いた大気が動き出す。大気と言う流れ込む横風、熱せられた事で出来た上昇気流、そして5つの爆発によりできた渦と言う大気の流れ。
直径123㎞、光と熱と礫の暴嵐。今回使用された太陽のゼリーは10ℓ、たったの10ℓで人間156万6723人の命は潰えた。
これにより、第三十ノ神の敗北が決定した。ひっくり返す、繰り返す、やり返すなどの力を持ち、自らの世界に輪廻と言う環を創り繰り返すことで、若いながらも短い中で経験を積み積ませ奮闘した神。その敗北が決定した。
この世界では初となる、太陽のゼリー実戦使用。これが引き金となり、ゲームはより過激さを増すことになる。
間違って環境破壊をしてしまわないかと、躊躇していた者達も動き出すことになったから。
全ての生命を刈り取らんばかりの暴風の中――
「本部へ、こちら5766」
「<ザザザッ>」
「核融合反応、及び人間の反応なし。任務の完了を確認した。繰り返す、任務の完了を確認した」
「<ザザザッ>」
「了解、詳細は後日報告する」
「<ザザザッ>」
「了解、帰還する」メッセージを切った5766は暴風の中、誰にも聞こえない様な声で呟いた「上位代理者以外に、この暴風の中で生きれる生物が居たとは驚いたなぁ。流石は亡き神の懐たる世界」驚いた、と言っているがその声は純機械生命体故にか、冷淡だ。「でも、代理者じゃないならどうでもいいなぁ」そう言い終わり、5766は帰路についた。
――この暴風を引き金に、生身じゃな生命体、彼ら《スイガネ》は、命を刈り取り命を賭けた暴嵐の目となった。
*
5766が暴風の中を後にする数秒前の事――
「ようやく3つ目か、ここからが本番だ」<パンッ>と、手を叩いた様な音が響く「私の名前は Clown=Lord 。さあ、君の名前を教えてくれよ」優しい声色だ。
「霧曇 蓮華――うつろび れんげ」俺は、この名前を気に入っている。
姓を定めるその日に、霧雲――きりぐも・山で霧の様に低く漂う雲、そんな雲のかかる虚ろな日だった事からついた霧曇と言う姓。そして曾祖母が好きだった花から取った蓮華と言う名。俺は、この名前を気に入っている。だから、名前を聞かれたらついつい答えてしまう。
「良い名前だな」 Clown=Lord を名乗る彼?彼女?が、そう言って来たのが少し嬉しかった。彼女?の方を見ようとしたが、身体が動かない、と言うよりも身体の感覚がない「ははは、無理だよ。霧曇 蓮華、君は今にでも死ぬのだから」そう言われた。
それで思い出した、森で先住獣の観察をしていたら、変な音がした後に街の方で何かが光って身体が動かなくなった事を。
「俺は、死ぬのか?」
「ああ、死ぬよ。私が時を止めているからまだ死んでいない、ってだけだよ」こんな味気のない死亡宣告?は初めて聞いた。でも、何故がそれを受け入れられた。
「そうか、俺は死ぬのか。皆は?」俺が死ぬ原因となったのは、街の方で光った何かだろう。だから、皆がどうなったのか知りたかった。
「君意外、皆死んでるよ。即死だよ。まあ、君も時間を止めていなかったら即死だけどね」サラッととんでもない事を言ってきた。でも、それも受け入れられた。こんな戦争をしているんだ、いつかは来るだろうと思っていた。なにより、即死で楽に死ねたのはむしろ良い事なのではないかと思えたから、思いたかったから、受け入れられた。
だって、俺の暮らす街は戦争をしない人間が集まって造った街だから戦わず楽に死ねたのなら本望だ、皆も同じだと思う。俺達を無償で護ってくれていた同じ人間の兵士達が全滅した報を受けた時から覚悟していた。
そんな中、日常の中で苦しむ時間さえ無く楽に死ねたのだ、良い事だろう。不幸中の幸だ。
「何で俺は、まだ死んでいないんだ?」ふと、疑問に思った。
「一番街から離れていた君が、一番遅く死ぬってだけだよ」確かに、俺は鹿モドキを追って街から離れていた。納得した。だが、聞きたいのはそう言うことではない。
「アンタは何故、俺の… 」何て言えばいいのか分からなかった。生かされてはいるが、この後すぐにでも俺は死ぬのだろうから、助けに来たわけではないだろう。なら、何故「 …何の為に?」曖昧な質問だと思うが、他に何と質問をすればいいのか分からなかった。
「ルールを護る為に、かな」
「ルール?」
「うん。《・殲滅認定条件―《文化と生命の死と消滅そして場外処分》※特定の慈悲ある処置などは例外とする。戦闘の意志無き最後の一人には温情を。》ってやつの《戦闘の意志無き最後の一人には温情を。》って所」
「?」何の事か分からなかった。おそらく、代理戦争のルールだろうけど、聞いた事が無い。それを察したのか、随分と噛み砕いた説明をしてくれた。
「要は、戦う気がない可哀想に生き残ってしまった者を癒してあげよう、ささやかな願いを叶えてあげよう、的なやつだよ」
「?」いまいちぴんとこなかったが「願いを叶えてくれるのか?」この部分は、少し魅力的だったから確認したかった。
「うん、叶えるよ」あまりにも簡単に叶えると言われた。Clown=Lord 、確か神様が創った自らの愚像、代理者。この人?は確か自分を Clown=Lord って言っていた。言っている事が本当なら、時を止めている様だし。願いを叶えると言うのも、本当かもしれない。叶えられると簡単に言ったのも、Clown=Lord にとっては簡単なことで、当たり前にできる事なのだから、だろうか?
(受け入れた。とか言いつつ、疑ってばかりだな。俺は… でも、叶うなら、願いたいものがある)
「あ、復活させてとか、生き返らせてとか、強くしてとかみたいな、殲滅認定条件を崩すようなのは駄目だよ。一人で、繁殖できずに、戦う気のない者を戦いから救ってあげようっていう神の慈悲だからね」因みにと、この前叶えた願いは美味しいものを食べたいだったよと教えてくれた。
「俺は、この世界を旅したい」俺は、願いを口にした。
「 …フッ」姿は見れないが笑いを堪えているのは分かった「旅がしたいって。今すぐにでも死ぬっていうのに。フフフッ」何が可笑しいのだろうか。
俺達は戦いを避ける為に、巻き込まない為に、人里離れた所に街を造り暮らし籠っていた。だから、旅に憧れを抱いている者は多かった、俺もその一人だだった。
死ぬけど、死ぬからこそ、叶うなら色々な世界から人が集まったこの果てしない世界を旅したいのだ。
「あ… 」俺は気付いた、何が可笑しかったのかを。俺の願いは、この世界を旅がしたいというものだ。旅とは、人を時間を文化を楽しむもの、旅がしたいっていうのは世界を見て回りたいとは違う、人生を旅に例える者も居るくらいだ。旅がしたいとは、つまり、間接的に生き返らせてくれと言っている様なもの、だから笑われたのだ。恥ずかしい… 。
「うん! 分かった。 いいよ、旅してくるといいよ」
「え?」まさかの OK だった。 急に罪悪感が芽生えた。皆死んだのに俺だけ願いを叶えてもらうという事に対する罪悪感などだ。急なことで混乱して、否定の言葉が溢れてくる「本当にいいのか?? だって。俺だけいいのか。あ!ルールを破る事になるし!」願いが叶うという事や、恥ずかしさ、今の状況が飲み込めない事への困惑も相まって、自分でも何を言っているのか分からなくなって来た。
<パンッ>と、手を叩いた様な音が響く「大丈夫だよ」先程までの困惑が霞の中に消えていった。
「あ… はい… 」心が落ち着いた気がする。
「まず、君に言っておくね。気負う必要はないよ。君は運良く、そして運悪く、生き残ってしまったのだから。君が何か責任を感じる事は無い。《カエ》も神だ、私と同じ事をするだろうさ。 それに、どんな形であれ、夢が叶うのは良い事だよ。笑顔でなら、自慢したっていいさ」
「ああ… 」本当にいいのだろうか。 でも、たとえ悩んだところで、それで誰かが救われるわけではない。だから、受け入れる事にした。受け入れれば少なくとも俺の夢は叶うから。それが、救いなのかは分からないけど、受け入れる事にした。
「で、次に君の生死に関する事だが、ルールを応用しようと思う。《・代理者条件――《知恵と文化ある者達》※最小・一人~最大・国家。ただし、一種類のみ。道具や住処は可、家畜や菌も可。家畜や奴隷、眷属でも一定以上の知恵ある者は不可。・開催期間―――《最後の一種類に至るまで》※繁殖して増えた者も代理者として認める。だが、他種族との混血者は上記のルールに反する為認められない。その為、会場に移ってからの他種族との繁殖行為やそれに準ずる行為で産まれた者は代理者としての資格は無いものとする。》の所だね」
何を言っているかは、正直言って分からなかったが。何をするかは、何となく分かった「要は、君が別の種族になればいいのさ」なかなか凄い事を簡単に言う人だなと、思った。人じゃないけど。
「その種族って?」
「んー、ゾンビ的なヤツ、かな」受け入れようと決めた心を、一瞬、閉ざしそうになった。「あ、君らの世界だと、フランケンシュタインの怪物ってのが一番近いかもね」フランケンシュタインの怪物って確か、フランケンシュタインが死体を繋ぎ合わせて造った人造人間だったっけ?
(だとしたら、少し嫌だな。だって、不気味な怪物になるって事だから。でも、全てを受け入れよう。何があっても)
「俺の体は?」 Clown=Lord の言っている事と俺の認識が確かなら、俺の体はこれから造られる事になる。だから、体の行方が少し気になった。
「パーツとして組み込むつもりだよ、と言ってもほんの少しだけどね」やはり、俺の体は造られるようだ。あと、少しだとしても元の体が自分の中に残るのは嬉しかった。
「旅に必要な馬とかも用意するつもりだけど、この有様だから材料は少しでも多い方がいいかなって。使ってもいいよね、君の体」疑問は有るけど、気にしなくてもいいだろう。
分からない事は分からないままでも気にしないのが長生きの秘訣らしいので実践しようと思う、まあ、死んでフランケンシュタインのゾンビ的なものになるらしいけど… 。
全てを受け入れよう、細かいことは気にしない!
「ああ、宜しく頼む」その瞬間、俺の意識は光に包まれ、次のような文面が頭に浮かんできた。
・創造生命体 屍霊形種――【 Clown=Lord の怪物 】個体名:霧曇 蓮華
・生前――――――――― 人間-28歳 身長-186㎝ 体重-87㎏ 性別-♂ 種族強度【 Lv.236 】 クラス【 狩人:☆☆☆ 】
・現在――――――――― 屍霊形-0歳 体長-136㎝ 体重-38㎏ 性別-? 種族強度【 Lv.1 】 クラス【 無職 】
・ステータス―――――― 霊力【 830 】魔力【 1320 】肉体強度【 563 】出力/筋力【 334 】 ※屍霊形種の為、以下二つは無い:生命力【 0 】 スタミナ【 0 】※2 屍霊形種の為、霊力が生命力の代わりとなる。
・スキル―――――――― 【 人を呪えど穴一つ 】【 菌と死体はお友達 】【 魂ノ捕食者 】【 狩人ノ才 】【 ロンサム 】【 地点Fヲ超ユル者 】
数値やレベルっていうのは正直言って何の事か分からなかったが、狩人の星は何の事か分かった。(狩の腕には自信があるから、その事だろう)と。
曾祖母が Clown=Lord が現れた時の事を話してくれた事があったが、今ようやく理解できた。こういうのは、自分の身に起きないと分からないものだ。
(由美おばあちゃんが言っていた事って本当だったんだな、ちゃんと聞いておけばよかった。あと、この人が Clown=Lord っていうのも完全に本当の事だったようだ、まあ、途中からは信じていたけどな!)
「フフッ」また笑われた気がする。もしかして、(心を読まれているのか?)「フフフッ」含み笑いだ。完全に心を読まれている。
(ん?そう言えば、体が動かないのに、というか体の感覚さえも無いのにどうやって口を動かして話しているんだ?どうやって話を聞いているんだ?それに時間も止まっている様だし… もしかして、会話しているのって… )
「そう、そういう事です」俺が勝手に話していると思い込んでいた様だ。恥ずかしい… 。
「まあ、とりあえず」 Clown=Lord はそう言うと一拍をおき、口調を変えて一言、言い放った。
『100万を超える同胞の灰を抱きし者、仇である魔物の皮を被る者、霧曇 蓮華よ、君の旅路に幸あれ!!』
Clown=Lord のこの言葉を最後に俺の意識は途絶えた。そして目覚めた時には生まれ変わっていた、造り替わっていた。
こうして俺の旅は始まった。
お読みいただきありがとうございました。次もよろしくお願いいたします。




