表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/25

この世界が求めるもの、この世界で求めるもの

お楽しみいただけたら幸いです。

「5766大佐はちゃんと休暇を楽しんでいるのかね… 」異質な金属が鼓動し建物を建築してゆく様子を見ながら一人の女性がそう呟く。

「001元帥様、5766大佐なら問題ないかと思われます」女性の後ろに並び立つ目つきの悪い女性が呟きにそう答える。

「008か」女性、001元帥は008と呼んだ目つきの悪い女性に顔を向ける。「あの子は環境適応能力を高く造ったからな、だが、別けすぎてしまうふしがあるから羽目を外し過ぎてしまわぬかと心配になってな」

「戻ってからが心配ですね」

「ああそうだ、あの子はやった後に後悔するタイプだからな」

「今後訪れるであろう戦後の日常の為のデータ収集も兼ねて5766に休暇期間は1~2年ほどと言い伝えておりますが、短縮いたしますか?」

「いや、それはしなくてよい」

「承知致しました」

「スイ様が以前『休暇減らすとか鬼か』と、人間共に仰られていたのでな」

「おお、それは、それならば、減らしてはなりませんね」

「だろう」

 2人が会話を重ねる度、異質な金属は鼓動し何かを建築していった。






   *






 記憶として残る人間達の思念の中に自動車学校と言うものがあるのだが、ウォーカーの学校はそれに似ている。

「・・・・・」怪物騒動で戦闘能力を認められた私は戦闘実技をパスしウォーカーの仮免許(?)、仮資格(?)を配付してもらえる事になったのだが、ステータス記入で少し面倒な事になってしまった。

「流石です!!!英雄様!!!」「当然でござるな」「スゲーステータスだぜ!」「体力と筋力は最下級だが… 差があり過ぎだろ」「英雄足りうる魔法使い… いや、【 冒険者 】か」

(私は注目されるのが苦手なのに)

 ウォーカーは時より冒険者と呼ばれる事があるのだが、何故、常にそう呼ばれないのかと言うと【 冒険者 】と言うちゃんとしたクラスが存在しているからだ。混同を避けるならそもそも一緒にしなければいいのだが、【 冒険者 】の大半がウォーカーである事とウォーカーの目指すところが【 冒険者 】であるという事が重なって時より混同して呼ばれるようになったらしい。

「既に【 冒険者 】でおいでとは…御姿からミル族ではないと存じ上げておりましたが…、凄いステータスですね」生命力と筋力筋柔軟性以外はオールプラチナですよ、と言われてもプラチナがどれくらい凄いのかが分からない。あと、死体人形だから生命力と筋力筋柔軟性が無くて当然だ。

 人間達の思念から知れた人間と言う魔物の強さから見ても私の強さはまあまあだ。人間の兵士と戦っても死にはしないが勝てもしないといったところであり、プラチナと言う評価がどれ程のものなのかが分からない。アダマンタイトやインゴットとかもあるのだろうか…。

(でも、種族や属性が出なくてよかった)ウォーカーの学校は依頼所兼ウォーカーウォルターボ支局事務所に隣接する形で建てられており、座学講義後その足で事務所に受け取りに来たのでステータス記入があると知った時は胃が痛くなった。しかも、なによりも、記入方法が筆記ではなかった事に胃の痛みを覚えた、ごまかしが効かないと知って。

「この街って本当に何でもあるんだね… 」プラスチック、人間達の思念が近しい材質を教えてくれる。そのプラスチックとやらに似た素材で出来ているゲートを潜るだけで体重や身体能力、果ては職業にいたるまで分かってしまう… 無職だったら死んでいた。人間達の思念が安堵の声を上げている気がする…。   ん?


   【 ニート 】


 急に頭に浮かんだそのクラスに【 無職 】以上の何か、いや、何も無い、恐ろしいほどの虚無を感じる…。

「どうかなされましたか?」受付のお姉さんが困った様な顔でカウンターから身を乗り出してこちらを覗き込んでいる、背が低くて申し訳ない気持ちになる。

「え?、あ、…えっと、旅人じゃなかったんだなって思いまして」嘘を言っているわけではなく、本当にそう思っている事だ。

「おそらくですが、怪物との戦いなどでレベルアップをなされて【 冒険者 】の条件を満たされたのではないでしょうか」なるほど、そうかもしれない。

(クラスに就いたあの時よりも少しだけ強くなっているから、たぶんだけどそうかも)

 この測定器では種族は調べないので種族レベルも出ない。一見不充なようにも思えるが、これは多種多様な種族が生活圏を共にするウォルターボならではの処置だ。種族により基本スペックが大きく異なるのでレベルが高いからと言って強いとは限らないからだ。レベルで人を決めつけないやり方には共感を覚える。


 だが、クラス差と言うものがある。


 ここまで、気を使えるのに何故クラスを調べるのか、白彦からその理由を聞いた私は答えを知っている。

 先輩ウォーカーの皆さんが集まっている理由もそこにある。

 それは、ウォーカーの目指すところが【 冒険者 】という事が深く関係している。

 この世界はある一つのクラスを求めているのだ。

 他人のプライバシーを犯してまでも調べなければならない程に、少し無理があっても理由をこじつけて調べなければならない程に。

 英雄なんて名声が霞むほどの、勇者を遥かに凌駕する力を持ち、世界を知り尽くし神さえも相手にしうる、全ての魔を統べる導きし者、その者、それは王。

 そのクラスの名は…




   【 魔王 】




 【 冒険者 】は秘められた世界の真理を開けし鍵を掴む事の出来るクラスの一つ、と言い伝えられている。

 【 冒険者 】はそのクラスそのものが魔王を見つける手掛かりなのだ。そして、それを探して世界を歩いている。

 【 冒険者 】の大半がウォーカーである理由はここにある。世界を歩き渡るのにウォーカーほど適した職業はないという事だ。


「この戦争を止められるのはまだ見ぬ【 魔王 】様以外に居りません、英雄様、どうかその御手で【 魔王 】様を」この世界の住人は人間よりも真っ直ぐで力有る者に従属的だ、世界からクラスと言う役割を与えられているが故に、他人任せと言うわけではないが、何とも言い難い。

(とりあえず、私を煽てるのはやめてほしい)今日初めて会ったのに、こんな態度を取られても困る。

 街に多大なる被害を与えるような戦いをしたのに私を責める事も無く、台風直撃で燥ぐ家の中の子供の様に崩れた街並みに胸を擽られ頬を緩めているウォルターボの人々を見ていると例え難い気持ちにさせられる。勿論のことながら、家や店を失った人々は悲しみに暮れている。だが、私を責めるような事はされていない、寄付金の事があるからかもしれないが、他の人々を見ていると違うように思えてならない。

(ああ…、 早くこの街から出たい)その為にはウォーカーにならなければならない、(早く仮免許くれないかな…)座学は残すところ後十数講義で宿を借りている期間中には終わるので時間的な余裕は有り、そして、実技はパスしているので今のうちにウォーカーとしての実績と経験を積んでおきたいところなのだ。何故なら、旅を始めたらウォーカーとして受ける依頼が唯一の収入源になるかもしれないと最近気付いたからだ。出入国以外でも役に立つとは、驚い… いや、当たり前か。ウォーカーはそもそも職業だ。職業と言うからには、大小様々だがお金を稼げて当然だ。もしそうでないなら職業とは言えないだろう。

(んー、現実逃避にも限界があるよね)先程よりも人が増えている気がする…、 気のせいであってほしいものだ。


「おい、霧曇さんが困っているじゃないか」ここ数日でよく聞いている声が後方から、事務所入り口から飛んできた。「あ!白彦様も、こんにちはでーす」


「あ、マカロフさん、こんにちは」「こんにちは、でござる」

「その呼び方だと兄者が来たと思われるから、アーロンでいいぜ」この人、マカロフ兄弟の弟で狸の獣人であるアーロンさんは私に気軽な口調で接してくれる数少ない人物の一人だ。「あー、仮免貰いに来てたのね。おお!【 冒険者 】なんてスゲーじゃん、やるねー」

「いえいえ、そんな事は無いです」

「あるよー。って、あれ?まだ仮免のカード貰ってないじゃん、早く貰いなよ」

「す、すみません!直ちにお持ちします!」

「ありゃ、まだ作ってなかった感じかな、なんか急かす様な事をしてしまってごめんね」

「とんでもございません。アーロン臨時支局長様、手を遅らせた私共が悪いので頭をお下げにならないでください」マカロフ兄弟、兄は連邦共和軍ウォルターボ駐屯兵団警備部門統括、弟はウォーカー協会ウォルターボ支局臨時支局長に就いているこの街で知らぬ者は居ない程に有名な兄弟だ。

「あれ?今出勤ですか?」アーロンさんは今通常入り口から入って来た、しかも、頭のてっぺんと耳の毛がうねっている、寝ぐせだ。もう昼過ぎなのに。

「英雄様、もっと言ってやってくださいまし」

「いや、こ、これはあれだ、そのなんだ。えっと、あ!そうそう、俺は夜勤だからさ」夜勤の臨時支局長って何だろう。「それに狸は夜行性だからさー、適材適所的なー、ね」

「ね、って言われましても受付のお姉さんの目は真実を語ってくれていますよ」受付のお姉さんは物凄いジト目でアーロンさんを見ている、しかし、アーロンさんは受付のお姉さんと目を合わそうともしていない。


「あ!カード来たぞ!」あからさまに話を逸らしてきた。「あ、そうそう、霧曇さんはパーティーとかバディーは決めたのか?」

「?」身を置く場所を決めなければならないのだろうか?

(でも、確かに、先日の怪物みたいなのに出くわしたらヤバいかも)だが、かといって、(ただ旅したいだけの私と一緒に来てくれる人なんて居るのかな?)しかも、白彦と一緒にだから女性の方がいい。なので、巡り合う難しさが単純に2倍だ。

「本免許持ってるなら一人でも大丈夫だけど、仮免は3年以上ウォーカーとしての実績がある奴と一緒にじゃなきゃクエスト受けられないぞ」

「え!?」アーロンさんの質問は私の考えとは別の所にあった。

「当たり前だろ、まだ本免許じゃないんだから一人で行かせられるわけないだろ」確かにその通りだ。

「んー」困った。

「あ!     俺が一緒に受けてやろうか?」サボる口実を思いついたとでも言わんばかりの『あ!』だった、それにまんまと話をすり替えられてしまっている、まさに狸だ。でも、ありがたい申し出だから受けたい。しかし…

「あの、アーロン臨時支局長… ニコッ♪」口で『ニコッ♪』って言っておられる… 恐ろしや…。そして『様』も無くなっている… 恐ろしや…。

「こ、これはぁ!英雄様をもてなす為であって!サボりじゃないからなぁ!」急に『英雄様』ときた、ここまでくるといっそ清々しい。

「仕事はどうなされるんですか?」   ニコッ♪

「仕事と言ってもクエストの消化じゃん!同じだよ!」この人は、この狸は子供か。

「違います! 高難易度であったり、不人気であったりする泥クエストの消化は後進育成と同じくらいに重要な戦闘職員の基本職務ですよ!クエスト一つ一つが人々の願いなんですよ!」もっともな意見だ。

「うっ… お、お前ら!今すぐにクエストを消化しろ!」流石に無茶苦茶だ。

「無茶苦茶な事を言わないでくださいよ!」

「俺達は泥クエストもちゃんとすすんでこなしています」

「今残っているのは難易度が高いやつばかりなので、失敗するとかえって依頼主に迷惑がかかるものばかりなんですよ」場合によって異なるが基本的に一つのクエストを複数の団体や個人が受ける事はできない仕組みになっている。なので、失敗すると分かっていて受けるのはクエストの達成を遅らせる愚行であり熟練者はそれをしない。

「鍛錬が足らんぞ!お前らちゃんと鍛えろよ!」

「後進育成」   ニコッ♪

「あ、ハイ、スミマセン。俺のせいでしたスミマセン」今にも泣きそうだ。

(支局長に『臨時』が付いている理由が分かった気がする)この人が少し頼りないからだ。かと言って、アーロンさんよりもその座に相応しい人が居ないのでいまだにこの『臨時』の状況なのだろう。(後輩達がすすんで面倒なクエストこなしているところを見るに慕われてはいるようだけど、子供っぽいと言うか何と言うか、本当に何と言えばいいのか分からない人だな…、 いや、狸か)

「なら行きますよ」仕方がないなー、と言っているがそれがアーロンさんの仕事だ。「なら行きましょうかね、どれにします?」サラッと私を巻き込んできた。

「英雄様、アーロン臨時支局長をどうかよろしくお願いいたします」

(よろしくお願いいたします、じゃないよ!)

「これなんてどうですか?」

(勝手に話を進めるな阿保狸!)

「良いでござるな!この地図を見るかぎりこのドラゴンの生息地は湖の近くでござろう?」

(白彦ぉ!オマエも乗るんかいぃ!   って、え?ええっ!?えええ???)


「ど、ど、ド、ドラゴン!?」何だろうこの胸の高鳴りは!『ドラゴン』その響きだけで胸が高鳴る!!!「何それ!何そのクエスト!!見てみたい!!! 行くぅっ!!!」結局、私はまんまと狸に乗せられる事となった。



「ドラゴンだぁーーーーーーっ!!!」

「湖でござるぅーーーーーーっ!!!」

「サボりだぜぇーーーーーーっ!!!」



「仕事ですからね」   ニコッ♪




 こうして、様々な思いの乗っかった私の初クエストはドラゴン退治となった。




「ドラゴンかぁ♪ 見るのが楽しみだ♪」







「いいなぁー、私も早く仮免取ろう。全然休暇を楽しめてないや」事の一部始終を見ていたスイニーンは静かにため息を漏らし次の講義場所、訓練場へ、トボトボと歩みを進めて行った。「はぁ、しんどっ、面倒くさっ」





お読みいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ