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醜悪な怪物

挿絵があります。苦手な方はお気をつけて。



 ウォーカーの専門学校入学まで残り5日を切っていたが霧曇うつろび 蓮華れんげは焦ることも不安になることも緊張することもなく、ただただお茶を楽しんでいた。

「緑茶は好きで飲んでたけど、この灰色の茶もなかなかだね」ティーカップに入った湯気たつ灰色の液体をすすりその見た目からは想像もつかない程に豊かな風味と爽やかで心地良い余韻を楽しみながら隣で木製のバケツに顔を突っ込んでいる白彦に目を向けた。

「さようでござるな!川の水は好きで飲んでいたでござるが、この川辺の石みたいな色のお湯も美味しいでござるな!」バケツから顔を上げた白彦は満面の笑みを浮かべていた。傍から見たら表情に変化など無いようなものだが彼からしてみれば眩しい笑顔だった。(昨日ツッコミ疲れたから今日はいいや)フフフ、と笑みを溢しお茶を口の中で転がすその姿は中身が20代後半の狩人だとは思えない程に可憐だ。

「そんなに気に入ったのか、ならもう少し買って来ればよかったな」明日も買うか、彼のその言葉に白彦は笑顔の輝きは増した。(そもそも白彦への御布施や御賽銭のような物なのだからこのお金は白彦のものだ。買うような物が無いから俺が使っていいと白彦は言っているけど、お金を渡してきた人たちも俺が使ってもいいと言っていたけど、やはり気が引けるな)白彦が喜びそうな物を買おう、そう思いながら無造作にテーブルに置かれた袋に手を伸ばした。「重い」袋の中身は金貨だ。文字通り金でできた通貨、金貨だ。だから見た目よりも重い。(二ヶ月を超える宿代やその他諸々に使ったけどかなり余裕がある)この街へ来る道中で出会った商人や旅人たちから白彦へ贈られた金額はかなりの額で少し怖くなるくらいだ。彼がこのお金についてあまり考えようとしなかった理由は受け取った金額の多さからくる不安と困惑と怖れによるものだ。

 つまり、彼は考えるのを放棄していた訳だ。

 だが、それで失敗して来たのでこのお金について考える事にしたのだ。

 その結果、白彦は彼の想像よりも凄い存在だという事がわかり彼は余計に困惑する事になった。

 先ず、道行く者達が白彦を神話に描かれる白彦だと認識し理解したのは、聖獣にとって名とは体を存在をそのものを示すものであり、偽ることが出来ないからだ。だから信じたわけであり、そして信じざるを得なかった。

(神様の騎乗馬やペット的な立ち位置で凄いなーとは思っていたけど、白彦を崇め建てられた神殿が大昔から存在しているほどだとは思わなかった)彼は白彦について調べようと変装して街の図書館に行ったのだが、聖獣に関するどの書物にも白彦の事が書かれており軽い目眩を起こしていた。

 神位の聖獣、人々を護りし聖獣、ユニコーンよりも勇ましき角を生やした六本足の雄々しき白馬『白彦』。数多の伝説を残し人々を護り散った白彦は人々から守り神として崇められていた。まさに神位だ。

(そんな白彦を殺した存在ってどんな奴だ? 危険すぎるだろ)神の配下の神位の聖獣に手を出し殺めたその危険な存在についての記述は何故かほぼ皆無で今も存在しているのかどうかも分からなかった。白彦は本当に死んでいたのか?何者に殺されたのか?それが気になった。が、(神を乗り物にして神を産み世界そのものが存在の一部、全ての元の神様。そんな存在にも死ってのが有るんだもんな白彦も死ぬよな)それに何より、(復活したてで、しかも飼い主が死んだ直後(おそらく白彦にとっては)の奴にそんな質問出来ないよな)と思い白彦に野暮な質問をする事はしなかった。


「考え込むのは嫌いだ。深く悩むは人の損だ」


 お茶を飲もう。




   *




「はぁ…」ため息をついたことで魔法で鰓に貼り付けた水の袋にボコボコと大きめの気泡が浮いた。

「どうしたんだ? 陸に上がったサンマみたいな顔して」隣に立つ同僚が俺の肩に手を掛け顔を覘きながらおちょくってきた。

「此処は陸だし、俺は元からサンマ顔だ」陸に上がったサンマなんて諺を作った奴を天日干しにしてやりたい気分だが、先ずはこの同僚に仕返しをするとしよう。「お前だって蟹に唇を鋏まれた鯛みたいな顔じゃないか」

「な!? このぶ厚い唇がセクシーだって言ってくれる人も居るんだぞ!」この同僚は、あきらかなお世辞の言葉を素直に受け取り喜ぶほど単純な奴なので煽り耐性が無い。(ちょろいな。形勢逆転だ)主導権を握った。

「お前だって知っているだろ。この門に怪物が現れたんだぞ、不安にならない方が変だろう」六日前にこの門の警備をしていた者がカルマ値-5203という化物が居る事を確認している。「まだ近くをうろついているかもしれんのだぞ」しかも今ウォルターボにはヘンテコで巨大な奴がいるらしい。(呪いがどうとか言っているのを聞いた住人が居るそうだが、呪いとかは本当にやめてほしい)カルマ値はプラスつまり善だったそうだがそれでも関わり合いたくはない。「呪いとか、怪物とか、もうすぐ昇格するっていうのに問題事は勘弁だ」問題が起これば俺の昇格が無くなるかもしれない。

「そりゃあ、ため息をつきたくなるわな」丸め込めた、やはりちょろいな。「しかも今日から一週間、魔法省の役員の一人が街に滞在することになっているからな。ちょっとしたことで大事になりかねないもんな」

「え…???」初めて聞いた。(魔法省の役員が何で俺の最後の持ち回りの週に来るんだよ!!!!!)

「お前知らなかったのか?」胃が痛くなってきた。「まさか、怪物の外見についても知らないなんて事は無いだろうな?」異国より伝わってきた身分階級の奪い合いを行うカードゲームで革命返しをくらった気分だ。

「それぐらいは知っているぞ!」(主導権を奪われたが、奪い返してやる)「えーとたしか… 」

「ザンネーン、時間切れでーす。正解は人型の小さい美少女でしたー」(この野郎!!)目で訴えかけるが口笛を吹いて誤魔化してきた。

「自慢しやがって」魚人で口笛を吹けるのはフグ目顔やスズキ目顔の中でも鯛やクエなどのぶ厚く柔らかな唇を持つ者だけだ。共通言語システムに縛られない唄や口笛は持つ者と持たざる者との間で小さな小競り合いが絶ず、持つ者はこうして自慢してくるのだ。(話をすり替えようとしているのは明白だ。俺がこの程度で頭に血が上るとでも思っているのか)フッフッフッ、と同僚をあざ笑う。(俺の様なサンマ顔やマグロ顔は頭の冴えが良いのだよ!)流線型で風の流れが良いので熱がこもる事が少ないのだ。たぶん。

「だが、俺はもっと詳しい情報を知っているぞ」勝ち誇った顔をして今度は俺が同僚の肩に手を掛けおちょくってやった。クッと顔を歪めた同僚を見て(勝った)と確信した。

「そうですかー、流石は小隊長候補生様は違いますねー」これ以上は話す気がありませんよー、とでも言いたげに遠い目をしている。それは俺も望むところだった。勝ったという事実だけで充分で自慢したいわけではない。

 と、言うよりも。

(正直言って俺も詳しくは知らないからな)現れたという怪物の外見についてなどの情報はハッキリ言って役に立たないものだった。

 怪物を見た同僚は気絶する程の衝撃を受け記憶が曖昧になっているらしく外見に関しては美しい少女という程度にしか覚えておらず。他の目撃者達は口を揃えて人形の様に美しく小さな女性又は少女だと言っているそうだが幻覚や精神支配の可能性がありそれが本当の姿だという保証がない状況だ。相手がカルマ値-5203を超える悪意の塊であり目撃者の種族がバラバラで細かな認識に差がある事も相手の存在の不確かさに拍車をかけていた。

(まぁ、俺ならそいつがどんな奴なのか一目で分かるから大丈夫だがな)その目がかわれて連邦共和軍ウォルターボ駐屯兵団警備部門の小隊長候補生になれている。だから、その怪物が現れれば一発で分かるという自信がある。何故ならそういうスキルを持っているから。


   スキル:『見識者の瞳』 効果:本人が鮮明に憶えていなくても今までに見てきたものを情報として蓄積し、瞳に写した対象を蓄積したその情報から判定しその答を直感として理解する。 補足:正解や真解を導き出すものではないため、見た情報に誤りがあったとしてもその情報に従い基づき判定をする。 使用例:毒のある食べ物か否かの判定、明日の天気の判定、良品不良品の判定、善悪有害無害の判定etc.


 『野性の感』を知識的に補強したスキルで判断と知識の習得に要する時間を掛けない為に重宝されるスキルの一つだ。正しい情報を正しい情報として認識し目を通すだけで正確な判定者を生み出すことができるので重宝されるのは当たり前だ。実のところ、カルマ値測定技術の大基になっているスキルであり、その他の様々な解析系の魔道具に役立っている魔道回路の情報を持つスキルでもある。

 そんなスキルを持つ彼だからこそ警備部の一小隊を任せられると彼の上司であり上官の獣人は考えていた。危険を直ぐに察知し判定できるのは、戦場において極めて優れた力であるからだ。

 人種を問わず誰でも雇い入れ、才有れば誰にでも昇格の機会を与えるその獣人を厄介者として嫌う者も居るのだが彼を人格者として支持する者も多い、そのためその獣人は連邦共和軍ウォルターボ駐屯兵団警備部門統括の地位に就いている。本来なら連邦共和軍ウォルターボ駐屯兵団総合統括の地位に付いていてもおかしくはないのだが、彼の父親が盗賊団の頭である事を彼を嫌悪する者達に突かれこの地位に止まっている。それに対して『已む無き事だ』と受け入れるその姿勢に惚れ込む者も多い。父親は父親であるが、すり替える事の出来ない存在でもあるために彼は父親がどのような存在であるかも公言しており場合によっては自らの手で殺めると付け加えていた。

 自らの膿みを曝け出し仁王立ちで『迎え撃つ』と据わった鋭い瞳で睨みを利かせるその獣人に面と向かって斬りかかる者は今となっては数を減らし、近々総合統括に昇格するのではと。彼を支持する者達は考えていた。

 このサンマ顔の魚人もその一人であり、自分を目に掛けてくれている恩人であり上官に泥を塗りたくはないという気持ちから何としても昇格してやると息巻いているのだ。タイ顔の魚人はその事を知っているので気張り過ぎなんじゃないのかと、いつもちょっかいを出している。そこに嫉妬が無いと言えば少し嘘になるが、基本は自分には無かった才能がある同僚を自分なりに応援しようという善意と好意からだ。サンマ顔の魚人もそんな事はスキルを使わずとも理解しているので彼のちょっかいに乗っているのだ。


 そんな二人の警備する門にそいつはやって来た。


 『全ては生き残るために』上官の口癖、元をただせば父親の口癖らしいのだが、その言葉が彼の脳裏に浮かんだ。

「逃げろ!マカロフさんに知らせるんだ!行け!!!」そう言ったのは何のスキルも持たないタイ顔の魚人だった。スキルを持たない彼でもヤバいと全身が感じたのだ。そんな彼が、全身を恐怖に支配されそうな彼が、最初に逃げろと言ったのは生き残る為だろうか、それともその同僚に自分の夢を託したからだろうか。

「お前を置いて――」サンマ顔の魚人が何かを言おうとしたが「バーカ、役割分担だよ… 。アイツと戦って倒す功績は俺のもんだ。行け」ぶ厚い唇の端をクイッと上げて走り出した。サンマ顔の魚人もその反対方向へと走ったひたすら走った。上官にこの情報を届ける為に通信の届く範囲へ行く為に走った。

「本部へ!!!こちら西門サチョフチョ!至急!応援を求む!!怪物が現れた!しかも一体ではない!!!二体だ!!!怪物が仲間を連れてやって来た!至急応援を求む!!!」通信先で応答した者が慌ただしく『至急応援を向かわせる』と返答したのを聞いて緊張の糸が切れた彼は膝から崩れ落ちた。長距離を死ぬ気で走ったために水の中の酸素濃度が急激に低下し魔道具の補助が追い付かず酸欠を起こしていたのだ。「馬鹿野郎…」通信を終えた彼の口から漏れたその言葉は同僚には届かない。いつもみたいにからんできてはくれない。彼はそのまま意識を失った。

 後日、彼に同僚の二階級特進の報が届けられた。その便りに『リチョフコ』とタイ顔の同僚の名前が刻まれた勲章が添えられていたのはその同僚に家族が居なかったからだ。


「馬鹿野郎…」




   *




「騒がしいな」そうでござるな、と白彦が窓の外を眺める。

〈コンコン〉と言うよりも〈ドンドン〉と、慌ただしく扉がノックされる。(うおっ!?誰だ??)

「私です!開けてもいいですか!?」(この声は宿屋の主人か、どうしたんだ!?)少し待ってくださいと、慌ただしく変装を済ませ杖を持ち扉を開る。宿屋の主人には呪いが解けたと言ってあるので白彦と合体せずに扉を開けた。事前にそう言ってあったので扉を開けたら宿屋の主人と目線があった。使用人ではなく宿屋の主人が来てくれたのは彼が大口の客であるためだ。

「どうしたんですか?」何事だろうと首を傾げる。

「せ、先日お話しした怪物が!その怪物が又しても街の西門に現れたそうなんですよ!!だからこの西地区に避難勧告が出されたんですよ!!!」宿屋の主人はミル族で殆ど人間と同じ見た目だ。なので表情から感情が読みやすい。(かなりヤバい事態みたいだな)だからこそ疑問がある。(その怪物って俺のはずなんだけどな??)宿屋の主人からその話しを聞いた時は心底肝が冷える思いをした。

「どういう事だ???」心の声が口から漏れた。

「私が聞きたいくらいです!」かなり脅えた顔をしている。そんな中でこうして主人自ら客に知らせに来るのは、宿屋主人としての責任とプライドからだろう。「さあ!避難所に案内するので付いてきてください!!!」そんな思いを肯定するように宿屋の主人は力強く手を引っ張てきた。

「え!?荷物が!!!」と言うよりも白彦が!

「大丈夫です!防犯対策は完璧ですから!命が一番ですよ霧曇様!」(そう言う事ではないのだが)だからといって何と言えばいいのか悩みながら引っ張られる彼の頭に直接声が届いてきた。『拙者なら大丈夫でござるよ』白彦だ。

(そんな事も出来んのかよ!?)返答を求めない心の声だが、白彦はその声にも答えて来た。

『言い忘れていたでござるが、色々出来るでござるよ』流石は神位の聖獣とでも言うべきか。(中身が残念でなければ…)

『どうしたでござるか?』自覚が無い辺り本当に残念な奴だ。

「何でもない」では急ぎましょう、と今度は宿屋の主人が答えた。面倒くさい状況に嫌気がさしそうだが、取敢えず「走る練習しといて良かった。これも良い練習だな」そう思う事で気持ちを切り替えた。




 避難所に着くと宿屋の主人は他の宿泊客の確認のためにいったんこの場を離れ避難所内を駆けまわり始めた。この騒がしい人ごみの中をあの脂ののった巨大で動き回れる事に軽い驚きを感じながら、なんとなくあたりを見まわした。「どうしようか」気になる事が多すぎて収集がつかない。「ん?」人ごみの中に見知った顔を見かけた。「スイニーンちゃんだったっけ?」その人物の名前を軽く呟いた。サマチョチョと言うお店以来ちょくちょく見かけていた。が、話し掛けたりはしていなかったので名前が合っているのかは微妙なところだ。でも、あのヘンテコな帽子をかぶっているので本人で間違いないだろう。なので話し掛けようとしたがそれよりも先に向こうから話し掛けられた。

「何で私の名前を知っているの???」名前は合っていたようだ。だが、(今のが聞こえたのか!?俺と同じくらい耳がいいのか)この人ごみの中で軽く呟いた声から自分の名前を拾えるのは卓越した聴力がなければ出来ない。転生前が魔物で尚且つ凄腕の狩人だった彼には容易な事だが、そうでない者には難しい芸当だ。(でも、エルフ族って狩人的なイメージあるからこんなものなのかもな)そう思う事にして、スイニーンの質問に答えた。

「俺だよ、ほら。馬だった霧曇うつろび 蓮華れんげだ」ウォーカーになるための専門学校への入学志願書である魔用紙を見せた。

「・・・・・・・・・・・・・・・」驚きすぎて言葉にならない、を顔で表現してくれている。

「ブハッ」笑いを堪える事が出来なかった。「美人が台無しすぎる」このスイニーンと言うお嬢ちゃんも白彦と同じく外見は良いが中身が残念なタイプだ。でも、二人(?)とも好意的な意味で残念だ。決して悪意はない。

「・・・・・・・・・・・・・・・」変装はしているが白彦と合体していた時から比べると幾分も人間味を帯びている。もう人間はどの世界にも居ないのでミル族味と言った方がいいのかもしれないが、その変化に脳が付いて行けていないようでフリーズしてしまっているようだ。「・・・呪いって怖い。」ようやく発したその言葉には生きていること自体が恐怖であるかのような感情がこもっていた。

(本当は呪いじゃ無いなんて口が裂けても言えないな)おそらくボコボコにされるだろうと思った。感情的な女性を怒らせるとヤバい、これは人間だった頃の彼の教訓だ。今の彼を殴れば殴った方が怪我をするのだが、何故かスイニーンに殴られるとタンコブができるイメージが浮かんだので直感的にヤバいなと察知した。(エルフ族の魔法的な打撃とかがあるかもしれない)そうじゃない気もしたが、取敢えず怒らせないようにしようと心に決めた。


「なるほど」先に避難所に着ていたスイニーンから色々聞き出すことが出来た。

「その少女の人形みたいな怪物が仲間の怪物を連れて来たらしいの。んで、その連れてこられた怪物も少女の様な見た目らしいけどこっちは傷付いた生身の少女みたいな姿らしいよ」まったく思い当たる節が無い。(俺とは無関係の奴なのか)ものすごく好都合なことが起きている。と、彼はほくそ笑んだ。(そのままそいつらがやられてくれれば、俺はこの姿のままで過せるではないか!)奇跡が起きた。と、笑みを深くした。

「この状況で笑えるとは、呪いが解けても変わり者じゃん」スイニーンが冷めた目でこちらを見ている。美人にそんな目で見られると多少傷つく。

「そんなことないよー」自分でも分かる、声のトーンが浮ついている。

「うっわーひくわー」冷たさと鋭さが増してより痛くなった。

「嬢ちゃん… 流石に傷つく… 」〈ゴツッ〉と頭を叩かれたような衝撃をくらった。精神的ダメージが肉体に表れたのかと思ったが、違った。


「「「「「「「 ギャァァァアアアアァァァッ――――――!!!!!!!!!!! 」」」」」」」避難所内に悲鳴がこだます。


『『ごめんね、あたっちゃった』』悲鳴の中でもその声をハッキリと聞き取れたのは耳がいいからだ。その声は二人の可愛らしい少女の声が重なり合っているかのような不可解さがあり、不気味であった。


「なんだこいつ」形容しがたい醜悪な怪物が避難所の分厚い壁をブチ破りその穴から顔を覗かせるように立っていた。「気持ち悪い」こんな奴は見たことがない。






挿絵(By みてみん)






『『友達にそんなこと言うなんて酷いよ!!!』』その醜悪な怪物は少女のような可愛らしい二重の泣き声を上げながら殴りかかって来た。


「あぶねっ!」ギリギリ回避できた。

「こんな奴と友達とか」スイニーンのこの一言でこの醜悪な怪物が誰を友達と言っているのかを理解した。心外だ。

「そんなわけないだろ!こんな気色の悪い奴知らねーよ!」本心だこんな奴知らない。俺の気持ちが通じたのか嘘を付いていないと分かってくれたようで「まあ、悪意の塊ならそういうことも言いかねないかぁ」と納得してくれた。


『『友達なのに、友達なのに、友達なのに、そんな事を言うんだ。そういう遊びなの? 酷い遊びだね、なら私もそういう遊びをしようかな』』醜悪な怪物が嗤いに顔を染め上げた。


「これは、やるしかねーな」戦うのはあまり好きじゃないが仕方がない。 Clown=Lord から貰った杖を槍を持つようにして構える。(槍術はかじっていたけど棍棒術は分かんないな)これでいいかと適当に構えているのが見ていられなかったのか「仕方ないなぁ」と、スイニーンが腰辺りからハンドガンのような物を取り出し構えた。

「一緒に戦ってくれるのか?」意外だ。もしかしたら本当は優しい子なのかもしれないな、と思った。

「失礼なこと考えてないかぁ?普通に危険だから私だって抵抗するさ」(もしかしたら、女だからってなめるなよって言いたいのかな)そう思えた。だから、「おう、なら頼む。一緒に戦ってくれ」笑顔で共闘を頼んだ。変装していて顔は見えないが声から雰囲気を察してくれたようで笑顔で答えてくれた。

「美人は笑顔が一番だな」

「勝手に言ってろ変人」

「ひでぇ… 傷つく… 」

「おーい、気を引き締めて行こうなぁ。変人」

「…あ、ああ」誰のせいだと思っていやがると言おうとしたが(美人って悪態ついても様になるな)と思ってしまい言葉を濁した。

「んじゃぁ… 」


「「 行くぞ(か)!!! 」」






お読みいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いいたします。

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