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変わり者達

お久しぶりです。

そして、超久しぶりの主人公です。更に久しぶりの子も出ます。ラクガキみたいな挿絵もあります。

あと、タイトルが長いので『地F』と書いて『ドヤエフ』と読むことにしました。土也Fドヤエフです。どうぞよろしくお願いいたします。


あともう一つ、『マトリョーシカ ~百旗の英雄物語~』という短編も書きましたのでよろしければそちらもよろしくお願いいたします。地Fに出てくるある方の物語です。



では、お楽しみください。





 広大な草原を分断するように流れる底深き大河『ウエーイニ』。その大河に張り付くように、いや、半分ほど沈んでいるような街が在る。その街は魚人を中心とした亜人種とミル族を中心とした人種の暮らす街『ウォルターボ』。水中での資源回収や実験が可能な魚人は高い技術力を持っており、ここはその技術の売買、貿易を行う拠点として栄えている街であり魚人が最も多い内陸の街としても有名な街である。

 魚人故に陸での生活は困難なので、陸でも快適に過ごすためにと生活面で活用する技術の水準は非常に高く、それを様々な種類に応用し対応して多くの生活魔動用品が造られ街で売られている。宿屋やホテルなどの宿泊施設はモデルケースとして様々な最新生活魔動用品が設置されており、ウォーターベッド(ガチ水)や超熱レンジ(岩石熔解機能付き)や『雪女からサラマンダーまで』と銘打ったシャワーを設定してある所まである。

 ありとあらゆる種族を受け入れる街、それがウォルターボだ。


 そんなウォルターボの街外れそこから更に離れた川縁に霞の様な白さの少女、いや、少女の様な大きさだが見た目は妖艶な美女だ美しいという言葉でさえ言葉足らずなほどの美麗さを持った霞の様な白麗の美女だ。そんな白麗の小さき美女の隣には一頭のユニコーンの様な勇ましき角を生やした六本足の雄々しき白馬がいる。それは物語に出て来る聖獣であり神の騎乗馬、見る者は度肝を抜かれる事間違いなしの気迫と威厳そして風格を漂わせている。

 伝説や物語の一ページの様な絵になる一人と一頭は、遠い目をして深い青空を眺めていた。


「街に入れなかった」

「そうでござったか」


 心を奪われてしまいそうな美しい声で白麗の小さき美女が呟くとユニコーンの様な勇ましき角を生やした六本足の雄々しき白馬が勇ましい声だが残念な口調で相槌を打った。

 ユニコーンの様な勇ましき角を生やした六本足の雄々しき白馬の名は白彦しろひこ。そして白麗の小さき美女、彼女の、いや、彼と言うべきだろうか、彼の名は霧曇うつろび 蓮華れんげ。元は人間の男だったが訳有って今は屍霊形種の女になっている。でも、彼はそれをあまり気にしてはいなかった。逆に色々な利点がある上に美人だから得したなと思っている程であった。が、しかし彼は今この体である事を後悔していた。


「カルマ値測定ってなんだよ」

「対象が善か悪かを調べる事でござるよ、あるじ


 そんな事は知っている、と言いたげなジト目で白彦を見るが大きさが違い過ぎて視線が合わないので意味を悟ってくれることは無いだろうと思い目線を落とした。

(白彦は良い奴だけど中身が残念なんだよなぁ)シャワーを求めてこの街まで来た道中での出来事を思い出して深いため息をついた。(白彦に御布施を置いていった人達はこれの何処に威厳やら風格やらを感じたのだろうか?)此処まで来る道中で出会った旅人や商人達が白彦を見た途端驚愕を顔に浮かべて祈る様にお布施を置いていった事を思い出す。自分も最初はカッコイイと思ったが、今では白彦の残念イケメンぶりにため息しか出ない。(お金は俺が使っていいって白彦と御布施を置いていった人達は言っていたけど… まぁ、いいか)彼は考えるのを放棄した、それよりも大きな問題があるから。


「街に入れなかったどうしよう」


 白彦を連れて行けば間違いなく大混乱になると思って白彦にはこの川縁でお留守番をしてもらって自分一人で行ったのだが、その結果入れなかった。

 ウォルターボは他種族が多く集まり暮らす街であるが故に問題が多く発生していたそうで治安維持のため防壁入口でカルマ値を測定し審査員達が入街の可否を決断しているのだが、彼のカルマ値を測定した瞬間に警報が鳴り響き測定をしていた魚人の男性門番は異種族でも分かる程に驚愕を顔に出して更に心配になる程異常に汗をかき干物の様になっていた。チラッと見たカルマ値は-5203、これがどの程度のものなのかは分からなかったが、警報と門番の反応そしてマイナスの数字を見て「ヤバい」とその場から逃げ出したのだ。魂の浸透率と耐久性の問題で力加減が出来ずに壊れるといけないからと Clown=Lord がサービスで付けてくれた『疲れ』という機能が逃げる事の邪魔をし多くの者に顔を視られてしまっていた。美人であるが為に元々目立っていたのがよりまずかった。制限が付き持続が出来ないというだけで、力が出せない訳ではない事を思い出して最終的にはロケットの様にぶっ飛び逃げおおせたが、もう街には入れないだろう。つまり、熱いシャワーを浴びれないという事だ。

(盗賊団の奴らが白彦を見てもなお俺に敵意を見せて来たのはあの中に俺のカルマ値か何かを調べられる奴が居たからかもしれないな)どちらにせよ犯罪者達を野放しにはしなかったが、カルマ値が低ければ話し合いで済んだかもしれないなと相手を殴りつけた手を見て彼はため息をついた。自分は悪人だったのか、と。いや種族のせいだろう、と。


 彼は少し悩んだ。


「他の所に行こうにも情報が無いし、そもそもこの国から出られない」カルマ値の測定をする前に軽い質疑応答があったのだがそのときに旅をしているという話しになりそこで身分を証明するものが無ければ国境などを超えられないということを知った。

 つまり、閉じ込められたという事だ。でも、可能性が無い訳ではない。身分を証明する物を得ればいいだけの話だ。

 様々な種族が集まるウォルターボならではなのか、門番が身分を証明する物の見本を見せてくれたのだが。それは出生届を出すと貰えるクリスタルや学歴証明書や商業協力組合の発行する組合員証などでどれも彼が取るには困難なうえに時間がかかるものばかりだった。そんな中で一つ彼にでもすぐに取れそうなものがあった。


「ウォーカー、かぁ…」時に冒険者とも呼ばれる専門職の名を口にする。それが彼の身分を証明する物を得る事ができる唯一の方法に思えた。「ウォーカーを目指すか」


 だが、それでも問題があった。ウォーカーになる為の訓練を行う施設がウォルターボ内に在るという事だ。

「カルマ値を減らすか隠す方法を知らないか?なるべく簡単で早い方法で」変装して街に入ろうとしても結果カルマ値のせいで入れないからカルマ値をどうにかできないか、と白彦にダメもとで質問を投げかけた。

「減らすには時間が掛かるでござるが、隠すだけならすぐに出来るでござるよ」まさかの答えがかえってきた。

「隠すだけならすぐにできるの!!?」久しぶりに、白彦が凄い奴なんだと再認識できた。

「拙者は神位の聖獣でござるよ、簡単でござる」自慢げに鼻息を鳴らしているのだが巨体から吐き出される鼻息は強力なうえに生温かくて気持ち悪い、そして何故かペパーミントの香がする。それはさておき、

「さっすがー!どんな方法か教えてくれ!いやください!」これでようやく熱いシャワーが浴びれるかと思うとウキウキして来た。三十路男の行動としては少々格好がつかないが見た目は美女だからいいだろう、可愛く映るはずだ。

 だからウキウキしながら白彦のカルマ値を隠す方法を聞いた。


「合体すればいいのでござるよ! 拙者の善と光のオーラでプラスになるはずでござる!」


「何を言っているんだ」白彦の言っていることが頭に入ってこなかった。


「合体でござるよ、合体。そしたらプラスになるでござる!」

「・・・」

「拙者のスキルの『人馬一体』は熟練度がマックスでござるから、合体できるのでござるよ」

「・・・・・え??。ケンタウロス的な???」

「そんな気持ち悪い事しないでござるよ!カッコイイ方の合体でござる!」

「よかった…」


 だが、彼は思い出す。白彦の残念さを…


「逆でござる!」

「   え…?   !!! 」

「行くでござるよ!!! 『人馬一体:フュージョン』!!!」

「ちょっ!!!まっ…   !?」


 彼の叫びは時すでに遅く、白彦のスキルは発動してしまった。










   *




 5766改めスイニーンは驚きのあまり叫んでいた。いや、気持ち悪いから叫んでいた。休みを楽しむために純機械生命体スイガネからエルフベースのホムンクルス体へと移り変わったばかりで感情の起伏が激しくなったうえに表に出やすくなっていたために叫んだ。その美貌を大きく崩して叫んでいた。

 スイニーンの見た目は霧曇うつろび 蓮華れんげ程ではないが美しいと言えるものであった。エルフがベースと言えどプライバシー保護の観点から顔やスタイルなどは元居た世界の者達をベースにしており、スイニーンが選んだのは『カレン型』と呼ばれているもので見た目が可愛いからと人気の型である。因みに、選べる見た目は全て犯罪者のものであり『カレン型』の素になった人物は国家転覆罪及び有害情報放送禁止法違反の罪で捕まった者だ。この可憐な見た目からは想像できない程の凶悪犯だという事だが、だからこそ気兼ねなく使用できるとスイニーンや同胞たちは考えていた。

 取敢えずそれはさておき、スイニーンはその美貌を歪めてまで叫んでいた。


「え、何アレ???」先程まではミスをしてしまった恥かしさから顔を隠していたのだが、どうでもよくなった。「ナ二!!!アレ????」叫んでしまった。


 そして、それがスイニーンが叫ぶ要因となった存在に聞かれてしまった。叫んだのだから聞こえて当然と言えば当然である。

「ん、俺が聞きたいくらいだ。てか、アンタも変だと思うぞ。その帽子とかが特に」渋く威厳のある声色だが、気の抜けたやる気のない声で返答して来た。

「 …喋った! しかも流暢に喋った?!」スイニーンは、この日初めて共通言語が適応されている謎の生物(?)に出会った。


「でけぇ」その謎の生物はまず大きかった。<ギシィイ>と店の床が軋むほどの巨体で。

「キモイ」二足歩行のカナブンを思わせる丸みを帯びた胴体と体の前面部分に生えた二本の脚と四本の腕はまさに蟲と言う表現が相応しく。

「なんなんだその頭は」頭が蟲ならかえってまともに見えたかもしれないが、この生物の頭は馬だ。しかもユニコーンの様に勇ましい角を生やした阿保面の馬だ。

(馬鹿みてぇな面してやがる)流石にこれは口に出さなかった。


 だが、総じて気持ちが悪い。



挿絵(By みてみん)



 言いたいことは山ほどある。まだまだ気持ち悪さを伝えられるが、明日になってしまいそうなので止めておこう。

 取敢えず「キモイ」。


「嬢ちゃん… 流石に傷つく… 」キモイ生物は何故か落ち込んでいる。(そういう種族なんじゃないの??)

「さっき、俺が聞きたいくらいだって言っていたけど、もしかして呪いか何かかい?」サマチョチョさんが落ち着いた態度でキモイ生物に話しかけた。(サマチョチョさんスゲェ)落ち着いていることもそうだがちゃんと話を聞いていたのかと素直に驚いた。私も含め店に居る殆どが驚愕の声を上げている。この異種族が数多集まるウォルターボにおいても異形な存在を前に落ち着いていられるのはサマチョチョさんが長い人生を歩んできたからだろう。

「そんなところだ。何か美味しいものを頼む」そう言うと金貨を一枚カウンターに置いて床に座った。床に座ってなおカウンターが低く感じる程にデカイ。


「なんなんだこの空間」


「嬢ちゃんも座りなよ」立っていたら疲れるだろう、と。キモイ生物は座る様に促してきた。私はいつの間にか立っていたようだ。それよりも、(案外優しいんだな)。

「あ、ああ。ありがとうございます。あと、キモイっていってごめんなさいすみませんでした」謝るときはちゃんと謝らなければいけない、呪われた姿とは知らなかったとしてもキモイと言ってしまったのはいけない事だ。思ったことがすぐに口に出てしまうのは早くどうにかしないといけないなと本気で思った。(アナタは肉体とのシンクロ率が高いって言われたけどこういう事か)

「別にいいよ、俺もこの姿は流石にナイワーと思っているから。あと、お礼を言われる事はして…   んん?」急に言葉が詰ってどうしたのだろうとキモ… 彼の視線を辿ると私がカウンターに置きっぱなしにしていた魔用紙を見ていた。それはウォーカーになる訓練などを受ける為に書いた履歴書であり、その訓練を受ける為の専門学校への入学志願書だ。

 と言っても、専門学校には2ヶ月程しか通わないし履歴書も名前と年齢と種族と性別だけ書いていれば大丈夫なもので志願書もなりたい理由を書いてさえいれば OK という誰でも書ける誰でも出せる誰でも成れる、そんな感じのゆるーいもので堅苦しいものではない。名前がないからと時間をかけていた私が変なだけだ。書くのは3分もあれば問題ない内容だ。

 そんな魔用紙を彼はジーっと見ていた。

「どうかしましたか?」そんなにジーっと見るものではないので、何か変な所でもあったのだろうかと不安になった。(スイニーンって名前、変だったのかな?)そんな私の予想を彼は大きく超えて来た。


「同級生になるようだ。よろしく」


「えーーーーーーーーーっ!!!!!」彼は私の書いていた魔用紙と同じ魔用紙を腰に下げていた袋から取り出し見せて来た。

「そんなに驚くなよ」

「えーーーーーーーーーっ!!!!!」楽しみにしていたウォーカーへの道が可笑しな方向へと曲がりだしてしまった。

「はい、どうぞ。ニンジンステーキとニンジンパンとニンジンコンニャクの擦り下ろしニンジン詰めです」

「 …俺、ニンジンそんなに食えないよ???」

「え?」

「コレ、本当のスガタジャナイヨ」

「あ、そうでしたね…」そんな二人のやり取りも私には聞こえず、ただただ叫び続けた。

「えーーーーーーーーーっ!!!!!」




「この嬢ちゃん大丈夫かな」




お読みいただきありがとうございます。

アドバイスや感想等ございましたらよろしくお願いいたします。

次話もよろしくお願いいたします。

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