地点F内伝 ~ニトロハート②~
投稿が遅れました。
SF回です。
挿絵があります、苦手な方はお気を付けください。
シリアルキラー クラッカージョン
まことしやかに囁かれる猟奇的殺人鬼
彼に会ったら逃げる事をお薦め致します
と言っても、彼の見た目について分かっていることは何一つありません
彼に会ってしまった場合に逃げる事をお勧めした理由は
彼が殺人鬼でありながら卑劣なレイパーでもあるからです
故に屈辱と恥辱と絶望の中に沈むことになります
底はありません
俺は男だから大丈夫、とお思いの男性に悲報です
被害者の八割が男性であると言われております
女性も犯していることから、バイセクシャルとも言われておりますが
ホモセクシュアルであることを隠すために女性を犯している可能性があることを専門家が指摘しています
彼が噂でとどまっている理由は簡単です
証拠が見つかっていないからです
死体も見つかっていないからです
噂では
彼はネクロフェリアで死姦趣味があり死体を持ち帰っているそうです
更にカニバリズムの習慣があるようで死体を食べているようです
証拠が残らないのはこのためと言われています
では何故
クラッカージョンの噂がたったのかというと
その答えのヒントはクラッカージョンと言う名前にあります
美しい虹色の瞳をした女性がある日突然居なくなってしまいました
その女性の家族も友達も必死になってその女性を探しました
女性が居なくなって数週間後のある日
女性の父親が街中であるものを目にしました
それは、紐の先に眼球を模した玉の付いた振り子の玩具 スーパークラッカーボールで遊ぶ男性の様な人影です
悪趣味だとは思った行方不明女性の父親は目を逸らそうとしましたが目を逸らすことができませんでした
そのスーパークラッカーボールの玉が本物の眼球の様であり、美しい虹色の瞳だったからです
声をかけようとしましたが、その男性は人ごみの中に消えてしまいました
その後、現在に至るまで女性は発見されておらず
これまでに起きていた失踪事件と、その噂と、あわせて語られるようになり
いつしかある人物像が形作られていきました
目に執着するネクロフィリアのカニバリズムレイパー殺人鬼
このいかれた人物像に、この異常な男性像に、名無し男の代名詞である【 ジョン 】と唯一の目撃証言でもある目玉のスーパークラッカーボールの【 クラッカー 】が合わさり付いた名が
【 クラッカージョン 】
もし本当に彼が実在するなら、大変危険な人物である
幾度となく卑劣な犯行を繰り返しておきながら証拠を残さず長い間身を隠し通せる知能
異常性を悟られることも怪しまれることもない社会性と社交性
社会の常識と自分の異常性を理解し、裏と表の自分を作り使い分けられる状況把握力と演技力
完璧主義者であり社会的地位を気にしているため人の目を常に意識しており警戒心が強く
ナルシストであるが故に、自身の外見と性的趣向と家庭環境にコンプレックスを抱いている閉鎖的考え方の持ち主でもあり
知人や友達は多いが親友と呼べる人物はいない
家族にも本音を話せない、家族だからこそ偽っている
もし彼に、親友や心の拠り所となる人物がいるなら
その人物は、彼と直接の面識がない人物か、歴史上の人物、又は架空の人物、そして死者である可能性が高い
彼は自分と共感が出来る人物はいないと思い込んでいる
だが、シンデレラの様にいつの日か運命の相手が来てくれることを願っている
そんな人は居ないとも思っている
彼の言葉を借りるなら、思っているは知っているに変わるだろう
彼は諦めている
だが、心の中で小さくではあるが本気で運命の相手が現れることを願っている
諦めているからこそ願っている
そうしないとやっていけないと彼は言うだろう、そう思っているのだろう
自意識過剰では無いと、自分を客観視できていると思い込んでいる
が、思い込みであるとは言い切れない
彼が現在に至るまで隠れられているのがその証明になってしまっている
彼は成功体験を油断することなく繰り返している
性的欲求を満たして得られる快感に溺れ
死者にであり、かりそめではあるが誰かに対して本当の自分をさらけ出せている喜びに小さな幸せを幻想し
自身の二重性にストレスを抱え
願いと欲求を強めている
膨張させている
感情が高ぶり一線を超える
濁流の様でありダムの放水の様でもある爆発を行い
水位を上げたまま平坦へと戻る
それを繰り返す
水位を増す底なし沼が何処までも、何処までも彼を連れて行く
欲望のままに連れて行く
何も考えなくていいようにするために連れて行くのだ
でも、心の童貞クラッカージョンは玩具が無いと寝る事も出来ないから遠くへは行けない
だから、彼はこの街の何処かに居る
そして彼は自分勝手にアナタを連れて行く
『以上が 【 噂頭巾 】【 クラッカージョン 】【 詳細 】 の検索結果のまとめになります』
*
「胸糞悪い」気持ちが悪い。
「噂って想像したものがそのまま形になっちゃうからな、極端になりがちなんだよな」
「それに最後、怪談になってんじゃん… 」怖いのは苦手だ。カレンさんの前なのに言葉遣いが汚くなってしまった。
「怪談風にすることでー、検閲をまぎれれるしー、緩和剤にもなるんだよー」
「ラウンドは保管されている通信ログの文字を繋ぎ合わせて文章を作るだろ。だから単語でありつつストーリー性を持たせてやると選んでくれやすいんだよ」噂頭巾以外での検索にも引っかかるための技だそうだ。
「この内容、文章だと網の視覚規制が入りそうですね」私の年代から視神経に『網』と呼ばれる情報規制極小端末が埋め込まれており、目に映ったモノの形や色の割合を基に文面や状況を判断し、精神に悪影響を与えるモノがあった場合は視界がブラックアウトするようになっている。
「ああ、だからこその噂なんだよ」カレンさんは不敵な笑みを浮かべた、視覚情報が規制されているからこその噂なのだ。
「実際にー、人は居なくなってるんだよねー」
「え…」
「だから、注意喚起の意味で噂を流しているんだ」
暫く女三人で飲んでいたら「か、カレンさん…! ハッ… 」レンが椅子から飛び上がった、ビックリしたが、私よりも飛び上がったレン本人の方がビックリしている。と、いうよりも落ち込んでいる。察しがついた、取敢えず酔いからは覚めたようだ。
「どんな夢見てたの?ー」マリーがニヤニヤしながらレンを肘で突いておちょくりだした。
「いや、いやいやいや!何でもないって!」そう言いつつも顔は真っ赤だ。
「はぁ、元気だなお前ら」ジャックも復活したようだ。
「ハハハ、よし!全員大丈夫になったな、なら本題に移ろうか」カレンさんは、パンっと手を叩き場に区切りをつけた。
いよいよアノ、ニトロハートの噂についての打ち合わせだ。
< DoooooN >通り側の店の壁が爆発した。
ようやく本題に移ろうとしていたのに邪魔が入った。
戦争中なので時より何かが飛んでくる事がある、仕事中にもよくある事だ。今日修理した機械が壊れた原因も戦場から飛んできたモノだ。
今のもソレだろうと思ったが、よくよく考えたら此処は地下第二階層で、店の壁だけが壊れる様な小さな規模で済むわけがない。
「なんだなんだなんだ!?」「どうした!?」店に居た他の客たちも騒ぎ出した。
壊れた壁に皆の視線が集中した時、土煙の中から白髪で細身のやつれたオジサンが転がり出て来た。
そのオジサンは何かを探しているのか辺りを見渡し、四つん這いになりながらもこちらへ駆け寄ってきた。
何故こちらに来るのかは分かった。
窓があるからだ。
「はっうぅ」やつれたオジサンの足は止まった、目線まで止まっている。その止まった目線を追うように窓の方を見るとそこには人影があった。
顔までは見えなかったが何者なのかは、服装で分かった。
「軍の警備部門の奴らだ。おっさんあんた犯罪者か?!」誰が言ったのかは分からないが同意見だ。
「違う!ワシは… !」やつれたオジサンだけではなく私を含め、この店に居た全員が土煙が立ち込めるにもかかわらず瞬きを忘れ目を見開いた。
壊れてできた壁の穴から店に入って来た人物に目を奪われたから。
無理もない、
「何で、008さんが此処に…」「嘘だろ」「本物だ…」アンドロイドの生みの親 天才【 黒金 翠 】の創り出したオリジナルの一体シングルナンバー 008 が現れたのだ。無理もない。
008は切れ長の瞳でやつれたオジサンを睨みつけていた。
「よう、袋の鼠だぜ犯罪者さん」
「違う!犯罪者は貴様らじゃ!!」
「私は警備部門の統括で正義を象徴して創られたんだぞ、犯罪者なわけがないだろう」
「貴様らアンドロイドは犯罪者だ!!」
「戦犯とか言うんじゃないよな? 私達は君達を護る為に戦っているというのに、悲しいな」
「そう言う事ではない!!! 話を逸らすな!」やつれたオジサンは、これを見よとガラクタの入った透明な袋を取り出した。
そのガラクタの中に目を疑うようなものがあった、それは目玉のスーパークラッカーボールだ。
「クラッカージョン…」
「これで、犯罪者確定だな」
「何を言っておる… そう言う事ではないだろう!しらばっくれるな!!!」やつれたオジサン、クラッカージョン?は焦りだした。
「バイバイ」008は中指を立てた、品のない行動にも思えるがそうではないと分かった。
中指から凄まじい電撃が流れ出した。
その電撃にあてられて店の照明は落ちてしまったが、電撃による青白い光が008のしかめっ面を映し出していた。
「死刑執行だ」
008が持つ権限の一つに裁判省略実刑がある。
それの行使をするのだろう。
「 ……… 」
<パンッ>何かが弾ける音と共に青白い光が移動した。
一瞬何かが視界を横切った。
直後、私の視界はブラックアウトした。
照明が落ちただけではない暗さ、そしてこの髪が焼けたような臭いから何が起きたか想像がついた。
死刑が執行されたのだ。
これのせいで今回の飲み会はお開きとなった。
結局アノ噂について話し合う事は無かったのだが、数日後カレンさんからアノ噂について進展があったと連絡があった。
どさくさに紛れて拾ったガラクタの入った袋の中から信じられないものを見つけたと。
だが、それからカレンさんと連絡が取れなくなった。
お読みいただきありがとうございます。
次話もよろしくお願いします。




