153話
ドガン!
何の音!?
庭にいるであろうユミルのところに行こうとして、お屋敷の玄関までたどり着いたら、物凄い音が聞こえた。
慌てて、外に出る。
ユミルは……いた!
一本の樹の元で、刺さった矢を抜こうとしている。
オレが駆けつける足音が聞こえたのか、ピタリと動きを止め、恐る恐るというふうに振り向いた。
やっちゃった、みたいな顔をしているけど、本当に何をしたの?
樹に近付いてみると、矢がかなり深く刺さっている。
なんだ、これ……。抜けるのかな?
矢を掴んで思い切り引いてみる。
あ、これ、ダメなやつだ。
そもそも、鏃に返しがついているので、そう簡単に抜けないな……。
仕方ないので、掴んだまま【錬金術】を使う。
鏃を小さくして、抜いた。
ユミルにその矢を渡す。
殊勝な顔をしているユミルだけど、これは注意しなきゃダメかな。
いや、てへぺろ、みたいな顔をしてもダメ。
カワイイけど、反省しなさい。
全く……。
射撃練習場が必要かな?
【地魔法】で何とかしよう。
風の影響とかあった方が良いから、屋外じゃないとダメか。
庭の端に作らなければ。
早くしないと、庭の樹が穴だらけになりかねないな。
クレー射撃みたいに、的が飛んでくると便利そうだけど、誰かの協力がいるな。
オレかディーネなら魔法を使えば良いけど……的を作ってジュリアかヴィヴィに投げさせるか?
それなら、ディーネの魔法の練習にも利用出来るか。
的は、土を適当に焼き固めれば、簡単に作れるし、それでいくか。
考え事をしながら、射撃場を作る。
いやー、魔法って、本当に便利だな!
横でユミルがワクワクした顔で弓を構える。
待ちなさい。
まだ、早い。
頬を膨らますな。
なんだかな……。
どうもユミルはディーネたちと違って、感情の抑制が出来ていない気がする。
生まれたて、だからか?
んー?
わからん。
こういうときは、先達に任せよう。
カモン! ディーネ、ジュリア、ヴィヴィ!
弓の練習をさせつつ、指導してあげなさい。
オレは、的を放り投げる役割をするから。
頼んだよ。
的を放り投げること、数時間。
現在、午前2時ちょうど。
休憩がてら、真夜中のティータイムとしました。
最初のうちは、ユミルは勝手気儘な態度を取っていたけど、ディーネの教育的指導により、かなり落ち着いてきた。
まずは、お手本というわけではないが、ディーネが的に魔法を放つ。
数回やった後、促されてから、ユミルの番となる。
初めは、ディーネを押し退けてユミルが弓を射とうとしたけど、ディーネのニコニコした笑顔と共に放たれる魔法(繰り返す度に威力が増していった)によって、序列を学んだようだ。
何かをするときは、ディーネから。次にジュリア、ヴィヴィと続いて、最後にユミルとなる。
その甲斐あって、今も、お茶を飲むのにも、ユミルは最後に口を付けるようにまでなった。
怖いよ! ディーネ先生、顔が微笑っているのに、目が全然微笑ってないですよ!
ジュリアはともかく、ヴィヴィがガクブルしてますよ!
もちろん、オレもガクブルしていますよ!
それにしても……。
ユミルの弓の技術は、かなりのものだ。
ほぼ、的から外さなかった。
それも、自身が歩きながら矢を射ったり、翼を生やして飛びながら射っても、ほぼ的中していた。
オレみたいに、【必中】のスキルがあるのだろうか?
それとも……精霊になる前からあった技術なんだろうか。
彼女は何者だったのか?
洞穴にいた際、ダンジョンの発生に巻き込まれて、命を落とした。
たまたまダンジョンコアに取り込まれ、その遺体は精霊になる。
では、そこに宿っている意識は何なんだ?
それに、彼女の翼は何だ?
どこから出てきた要素だ?
そうは見えなかったけど、元から持っていた──鳥人族だったのか?
ヴィヴィの場合、魔物から精霊になっても、肉体的には変化はなかったそうだ。
本人はあまり覚えていないようだけど、クライネ師匠やジーク師匠は、姿形に変化は無さそうだ、と言っていた。
ヴィヴィとユミルでは精霊としてのなり方に違いがあるから、一概には言えないけど、それでもおかしい気がする。
……。
わからん。
オレの頭では、これ以上考えてもムダだな。
止めよう。下手の考え休むに似たり、と言うし。
まぁ、良い。
訓練を続けよう。
オレが投げる的と一緒に、ヴィヴィにも飛んでもらうか。
間違えて射たないように。
ついでに、ジュリアにもウロウロしてもらう。
盾役だから、基本的に前にいることになる。後ろからのフレンドリーファイアはあってはならないからね。
ユミルにも、それに慣れてもらおう。
では、やりますか。
二時間が経ちました。
午前4時。
そろそろ時間だし、このくらいかな?
何度か、ジュリアとヴィヴィに、当たるギリギリに矢を放ってしまうユミル。
まだ、先輩に対する敬意が足りなかったようだけど、ディーネに折檻されて、改めた様子だ。
自分だけを優先するのではなく、周囲に配慮しながら攻撃するというのは難しいけど、遠距離攻撃役としては必須の能力だ。
出来るようになってくれて、とても嬉しいです。
一晩中、矢を放って眠そうにしているユミル。
彼女の頭をポンポンと撫でてあげた。
気持ち良さげに喉を鳴らしているし、嬉しそうで何よりだ。
ちょっと!?
ヴィヴィ、頭をグリグリと擦り付けるな!
痛いぞ、それ!
あー、はいはい。
キミの頭も撫でれば良いのね。
よしよし。
……。
ディーネ、ジュリア。
並ばなくても、ちゃんとやりますから……。
……。
これで良い?
じゃ、最後に、一番頑張ったユミルをもう一度。
これからも、ヨロシク……?
ん?
変だな……。
何だ、この違和感?
魔力が蠢いている……?
精神力が……吸収されていく!?
うおっ!?
一瞬で、オレの精神力が無くなったぞ!?
すぐに回復するけど……また減った!?
何だ、これ?
ユミルの頭から手が離れないし……。
そこから、延々と精神力が吸われていく。
幸い……なのかどうかわからないけど、オレの精神力が枯渇することはない。
ただ、逆に言うと、だからずっとこのまま吸われ続けることになってしまう。
オレは平気だけど、ユミルに悪影響はないのか?
そのユミルの表情は、どこかぼんやりとしている。
自分に何が起きているのか、わかっていないようだ。
どうしよう?
強引なことをしてでも、この状況を変えた方が良いのか?
……って、モタモタしているうちに、精神力の吸収が止まって、ユミルの身体が光り輝き出す。
ヤバイ。
何が起きているんだ!?
スキル
不死 状態異常無効 超回復
杖の才能 魔法の才能 高速思考
夜目 魔闘撃 魔力制御 魔力操作
魔法並列起動 バランス 身軽
空間把握 空間機動 空歩
杖LV.12 剣LV.9 体術LV.10 盾LV.10
投擲LV.10(+1) 必中LV.11 回避LV.11 ジャンプLV.9
ダッシュLV.10 耐久走LV.9 解体LV.9
危険察知LV.10 錬金術LV.11 結界術LV.11
召喚魔法LV.12 時空魔法LV.7
火魔法LV.9 水魔法LV.9 風魔法LV.10
地魔法LV.10 氷魔法LV.10 雷魔法LV.10
光魔法LV.10 闇魔法LV.10 無魔法LV.11




