123話
ちょっと短いです。
もしかしたら、と思うことは何度かあった。
女神に召喚されたことによって、今までに培ってきた常識や倫理観が弄られたのではないか、と。
もっと言うなら、チートスキルを与えられたことによって、だ。
日本という平和な国で育った者が、異世界に来て武器を手にして戦えるだろうか?
もちろん、様々な状況があり一概には言えないが、基本的には無理だと思う。
ましてや、女性がそんな血腥いことを率先してやりたい、とはちょっと考えにくい。
しかし、実際に今、オレの目の前でアヤノさんは魔物と戦った。
いくらアヤノさんが、武術を嗜んでいたとはいえ、だ。
いや、むしろ、武術というものを身に付けているなら、なおさらその腕を振るうことを抑えるのではないだろうか?
少なくとも、自らが持つ力の危険性というものを、次第に学んでいくと思う。
まぁ、武術家が全てそうだ、とは言えないけど、アヤノさんの場合は、話していてそうなんじゃないかな、と思った。
そんなに、短絡的な性格だとは思えないからこそ、先程の戦闘には驚いたのだし、だから、女神の関与を疑うのだけど。
それに、アヤノさんに、オレのことを話しているうちに、その疑問はさらに強くなっていった。
自分のことながら、客観的に話していると、どうにも不自然なのだ。
特に、女神に二度目に邂逅して、スキルを与えられた前後で。
違和感を覚えるけど、それもすぐになくなってしまう。
それが気持ち悪い。
変だとは思うが、しかし、だからといって、何もできない。
ただただ、飲み込むしかないのだ。
理不尽なのは、いつでもどこでも──異世界だろうと、変わらないことなのだな、と思う。
「──というわけです。
今はとりあえず、お金を稼ぐために、魔物を狩っていますね
そのために稽古して、なるべく死なないよう強くなろうと思っています」
オレは、この世界に来てからのオレのことについて、アヤノさんに話した。
一点だけ、【不死】についてのみ除いたわけだが、【超回復】のことは話したので、怪我をしてもすぐに直り、死ににくいことは説明した。
「私はこんな状況なので、日本に戻れないですし、戻ろうとも思ってないです。この世界で、生きていくしかありません。
でも、貴女は違います。
私は貴女に協力して、日本に帰る手段を探すことはできますが、どうしても自分を優先して、貴女のことを後回しにしてしまうでしょう」
オレはアヤノさんの目をじっと見て言った。
「奴隷となってしまったわけですから、しばらくは面倒をみたいと思います。
でも、冷たいかもしれませんけど、いつまでもというわけにはいきません。
それはさっきも言いましたが、私と貴女の状況の違いからです。
それを踏まえて、今後の自分の身の振り方は、しっかり考えていてください」
「……はい、わかりました。少し考えさせてください」
アヤノさんはそう言うと、目を瞑った。
オレは立ち上がって、その場を離れる。
周囲はディーネたちが警戒しているし、【結界術】で周辺を覆っているので、魔物が近付いて来ることは、恐らくないだろう。
一応、オレもアヤノさんの今後のことについて考えておこう。
アヤノさんが日本に帰る手段があると仮定して。
それを探すのを人任せにはできないので、アヤノさん自身がしなくてはならない。
そのためには、アヤノさんが旅をして、各地を巡らなければならず、そうなると必然的に、魔物との戦闘は不可避となるし、最悪、魔物だけでは済まない可能性もあるのだ。
幸い、アヤノさんは武術を学んでいたということだし、チートスキルもある。
経験さえ積めば、どうにかなるだろうと思う。
さらに、信頼できる仲間がいるとなお良いけど、まぁ、それは、どうにでもなるだろう。
お金で傭兵か、冒険者を雇っても良いし、なんならオレが手伝っても良い。
とにかく、アヤノさんが問題なく旅ができるようになれば良いわけだ。
手っ取り早いのは、オレたちと一緒に魔物を狩ることかな。
大袈裟に言うと、パワーレベリングだ。
そうしてレベルを上げていけば、そのうち旅に出られるだろう。
さて、アヤノさんはどういう考えがあるかな?
あまり、突拍子のないのは、勘弁して欲しいのだけど……。




