115話
オレは階段を登る。
そのオレを追い越し、階段を駆け上がる彼女。
彼女は軽快に走り、階上に到達した。
その瞬間、光が溢れて、爆発する。
周囲に光が満ちて、それに驚いた彼女は、足を滑らした。
階段から落ちる彼女を、オレは慌てて駆け寄り、身体を支える。
しかし、バランスを崩して、やはり落ちてしまう。
全身に衝撃が走り、呼吸ができなくなった。
意識が薄れていく。
そして、オレは──
◆◆◆◆◆
あれからもう、何ヵ月も経ったような気がするけど、実際は、一月も経っていないということに、ビックリです。
いろいろあったもんな……。
思い返すと長くなりそうなので、回想篇はやめておこう。
それよりも、今は目の前にいる彼女のことだ。
長いストレートの黒髪に、黒縁の眼鏡をかけているので、いかにも真面目な委員長といった印象の少女だ。
そのわりに、簡素な服に包まれた身体は、豊かな双丘と細い腰付きとあって、清楚さと淫靡さが両立していた。
奴隷になっているけど、貞操的なアレは、無事だったのかな?
見たところ、そんな悲壮な感じはないけど。
そんなオレの疑問に気付いたのか奴隷商さんは、
「どういうわけか、男性が彼女に触れようとすると、電撃と衝撃が走り、触れないようなのです」
と、言った。
ふむ。わからん。
まぁ、触らなければ良いのだろう。
「ええと……もし可能なら、彼女だけと話したいのですが……?」
「わかりました。話が済みましたら、お呼びください」
「申し訳ない。感謝します」
部屋から、奴隷商さんが出ていく。
まぁ、外には誰か立たせておくだろうから、あまり大声は出さない方が良いな。
念のために、【結界術】と【風魔法】を併用して、防音をしておこう。
すると、外の喧騒も聞こえなくなった。
外の様子がわからなくなるのが欠点だな。簡易マップには気を付けておかねば。
さて……どういう聞き方をするかな?
「あの……?」
おっと、彼女からのターン。
「もしかして……日本人の方ですか?」
「……どうして、そう思いましたか?」
「えっと、顔とか、あとは物腰というか、態度というか……。この世界の方は、あまり、その……丁寧でない、というか……」
なるほど。
まぁ、わからなくはない。
結構高圧的な態度でいる人は多い。舐められないようにするため、なんだろうけど、そうでないと生きられない、という事情もあったりする。
弱いと見なされると、すぐに喰われるわけで、弱肉強食って、大変なんだよね。
「君は、日本人なんですか?」
質問に質問で返すという、あまり誉められないやり方をする。
「はい。アーガスト聖王国というところで、召喚されました」
うーん。
そんなに簡単に答えたら、ダメですよ。
こっちはまだ、日本人だと認めていないのに。
まぁ、そう勘違いするような受け答えはしたから、仕方ないかもしれないけど。
汚い大人で、ごめんなさい。
でも、今のうちに、いろいろ聞こう。
「召喚。一人で、ですか?」
違うと知っているけど、確認のため。
「いいえ。私を含めて、九人です。男性が六人、女性が三人。
年齢は、最年少が十四歳の男の子、最年長がその男の子のお母様です。年齢までは聞いていないですけど。他は、高校生や大学生ばかりでした」
ワオ。斬新。
主婦が召喚されてチートでTUEE、って誰得なんだろう?
っていうか、よくこんなところに来る気になったな。断ろうよ。
「よくわからない場所にいつの間にいたかと思うと、目の前にすごく綺麗な女性がいて。
その方が、女神様でした。
世界を救ってほしい、と言われて……」
オレもそうだったな。すぐに断ったけど。そうしたらエライ目にあったな。
「悩んだのですけど、困っている人がいるなら……って。
女神様も援助する、と言ってくださったので。
それで、支度が済んだと思ったら、気付いたときには、広くて白い殺風景なお部屋にいました」
ちゃんと、チート能力はもらえたようだ。
断らなかったら、オレもそこにいたんだろうか?
「私一人かと思っていたので、皆さんがいたときは、ビックリしました。
その後は、皆で話し合っているうちに、お城の人が来て、王様のところに連れていかれて、って感じです」
ふむ。
なんともテンプレな展開。
それで勇者扱いされて、ちやほやされて、増長する奴が出てきて……ってなると思うのだけど。
あれ?
勇者というか、本当に必要で呼び出されたのは、目の前の彼女のはずだ。その他は、近くにいたから巻き込まれただけ、と聞いている。
その彼女が何故、奴隷になって売られているの?
ちやほやされて増長して追放された……ようには見えない。
何があった?
「何でも、アーガスト聖王国のお隣に、魔族の国があるそうです。
そこで、魔王が誕生して、聖王国を襲撃しているそうで、魔王を倒して欲しい、とお願いされました」
なんか……イヤな予感がする。
「でも、それって、ただの侵略戦争ですよね? もちろん、戦争は良くないとは思いますけど。
女神様のお話と少し違うと思って。
他の皆は訓練とか始めたのですけど、私はちょっと調べてみようと、図書室に入り浸っていたんです。
そしたら、いつの間にか、奴隷にされちゃいました」
……。
いやいや。
にこやかに、やっちゃった、テヘペロ。みたいに言っても意味わからないから!




